PICK UPピックアップ
ニセコ初のウイスキー蒸溜所が
グランドオープン! <前編>
#Pick up
Suzuki Takahiro/鈴木隆広 by「ニセコ蒸溜所」
ニセコの自然林に囲まれた蒸溜所。
日本酒の造り手がなぜ、ウイスキーを?
豪雪地帯のニセコはアンヌプリの伏流水が湧水として噴出する、屈指の名水エリア。上質な軟水は「甘露水」と呼ばれるほど。
また、夏場は農業が盛んで高品質な酒米の栽培も行われている。
ところが、ニセコ町内にはビールのブリュワリーはあるけれど、酒の造り手はいなかった。
そこで、自然に恵まれた地域特性を活かすグリーンシーズンの新たな産業としてニセコらしい酒造りを、というプランが持ち上がる。
蒸留所・醸造所ツアーはいまや鉄板の観光コンテンツだからだ。
ニセコ蒸溜所の鈴木所長。 大学で微生物を研究し、日本酒を造りたくて蔵人になったという、根っからの発酵好き。
一方、新潟県に拠点を構える八海醸造の南雲二郎社長がニセコを訪れるようになったのは、新潟のスキーリゾートの地域活性化のための視察がきっかけだった。
何度も訪れるうちにニセコの人々との関係性も深まり、そんな縁から「ニセコで酒造りを」という声がけがあったそう。
こうしたオファーに対し、八海醸造はウイスキーでのチャレンジに未来を感じたのである。
「というのも、北海道、とくにニセコは年間を通して気候が冷涼で、昼夜および四季の寒暖差が大きく、熟成にぴったり。
アンヌプリの伏流水という名水にも恵まれています。
ニセコ町でなら私たちらしいウイスキーが造れるのでは、そんな可能性を感じたのです」(南雲真仁副社長)
フォーサイス社のポットスチルを採用。左はジン用のスチル。
ニセコの気候風土を活かすのは、ウイスキーだ!
八海醸造では日本酒のほかにビールや米焼酎も製造している。
ウイスキーの製造免許も取得しており、米焼酎の原酒をオーク樽で熟成させた商品をきっかけに、5年前からは米を主原料としたウイスキー造りにも着手している。
いわば、“焼酎の設備を使ったウイスキー”といえるが、5年の試行錯誤の中で、香りと味わいの調和、まろやかさと芳醇さのバランスといった、目指したい酒質が明確になってきたところだった。
入り口では玉川堂による、鎚起銅器の看板が目を引く。
すべてのアルコール飲料に共通する、「発酵」が鍵
「上品で繊細な、バランスのとれたジャパニーズウイスキー」を目指して、2019年ニセコ蒸溜所設立。
2020年には、蒸留棟と貯蔵庫からなる施設が完成した。周囲の保護林に溶け込むような佇まいは、自然との共生というニセコ町の精神に敬意を表したものだとか。
「日本酒、焼酎、ウイスキー、ジン。まったく違う酒ですが、共通する部分もあります。それが発酵です」というのは、蒸留責任者である鈴木隆広所長。
南魚沼での米を使ったウイスキー造りでも中心となった造り手だ。
「蒸留酒と醸造酒では造るプロセスは異なりますが、微生物が作用する発酵についてはすべてのアルコール飲料に共通します。
特に日本酒は、酵母を用いたアルコール発酵について長い歴史があります。
もちろん、ウイスキーにおける発酵と日本酒における発酵を同じように捉えるべきではないのかもしれませんが、わたしたちはこのノウハウをウイスキー造りにも活かすことができるのでがないかと考えています」
だから発酵に用いるのは木製のタンクだ。乳酸菌が棲みやすく、深い味わいをもたらしてくれる、と鈴木所長。
発酵に好ましい微生物以外も繁殖しやすいというデメリットはあるが、そこは日本酒造りで磨いた知恵と経験でコントロールできる。
「ウイスキーは時間が育んでくれるスピリッツですが、木の樽に入れる透明の原酒は、私たちディスティラーが手をかけて磨きあげなくてはいけません。
蒸留は、発酵で得られた成分をぎゅっと凝縮するプロセスなので大切なのはもちろんですが、蒸留後の液中の成分が豊かであるように発酵にもウェイトをおいて作業しています」
後編では目指すウイスキーについて、そして第一弾商品であるジンについて、さらに鈴木所長に伺います。
後編に続く。
SHOP INFORMATION
ニセコ蒸溜所 | |
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北海道虻田郡ニセコ町ニセコ478-15 TEL:0136-55-7477 URL:https://niseko-distillery.com |