お茶と発酵のイイ関係<前編>
注目のZ世代による、お茶の醸造酒って?

PICK UPピックアップ

お茶と発酵のイイ関係<前編>
注目のZ世代による、お茶の醸造酒って?

01.03.2021 #Pick up

戸田京介さん by「WAKAZE」

今月紐解くのは、お茶と酒が織りなす可能性のお話。前編では日本酒ベンチャーの「WAKAZE」と、話題のお茶のスタートアップ「TeaRoom」とのコラボから生まれた醸造酒を取り上げます。

文:Ryoko Kuraishi

”「WAKAZE」のラボ”とも言える三軒茶屋醸造所。どぶろく醸造所と飲食店を併設する。

革新的な酒造りを志すマイクロブリュワリー。

“新時代のSAKE”の開発と発信を行う注目の日本酒ベンチャーが「WAKAZE」だ。
醸造規模は小さいながら、革新性や多様性に重きをおいたものづくりをしており、まったく新しい商品を生み出すことで注目を集めている。


そんな「WAKAZE」が酒造りを初めて以来、積極的に取り入れてきた素材が茶葉である。


お茶に注目する理由は、日本人に親しみやすいフレーバーであり、かつ多様性に富んだ素材だから。
お茶も酒も、ともに長い歴史と文化を持つ飲料であることから、二つを融合させることが新しいチャレンジになるのではと考えたのだ。
現在、お茶を使ったレシピは10種以上。「WAKAZE」が三軒茶屋醸造所で醸すラインナップの1/10は茶葉を使ったものだとか。

今月取り上げるのは、「WAKAZE」が新たに開発した「FONIA tea 〜Whisky Black Tea〜 recipe no.055(以下、「FONIA tea 〜Whisky Black Tea〜 」)。
いまもっとも勢いのあるお茶のスタートアップ、「TeaRoom」が開発した国産ウィスキー樽に長期熟成させた和紅茶を、発酵過程の酒に投入して醸造したものだという。


開発の経緯を三軒茶屋醸造所の若き杜氏、戸田京介さんに伺おう。

三軒茶屋醸造所の杜氏を務める戸田さん。大学在学中にアルバイトとして「WAKAZE」と関わるようになり、2020年の年明けより杜氏に。いま気になるのはずばり、「農業」。「Farm to Brew」の酒造りを目指す。

「WAKAZEの代名詞の1つでもある『FONIA』シリーズは、コメとともにボタニカル素材を発酵させて新しい香味を追求する醸造酒で、お茶を中心にさまざまなボタニカル素材を合わせることで日本酒の香り、味わいを引き出しています。


たとえば、人気の『FONIA tea ORIENTAL』 はジャスミン茶の香りと渋みに、ハイビスカス、ローズレッドペタル、オレンジピールやコリアンダーシードといった副材料を合わせ、華やかな香りとバランスのいい渋み・苦味を両立させています。

このシリーズの特徴は、酒の発酵過程で茶葉を投入している点。
醪(もろみ)の発酵中にボタニカル素材を浸漬させるのですが、これが最後に副原料を添加するリキュールとの違いです」


茶葉を使った醸造酒に興味をもった「TeaRoom」の岩本涼さんが「WAKAZE」を訪ねてきてくれたことがコラボレーションの始まりだった、と戸田さん。


戸田さんたち「WAKAZE」チームも静岡にある「TeaRoom」の工場を視察するなど交流を深める中、岩本さんからウイスキー紅茶を紹介されたのである。

左は酒の発酵過程で茶葉を投入するところ。その後、醪のなかで発酵が促される(右)。

和紅茶の甘み、ウイスキー香、白麹由来の酸味。

「和紅茶は日本茶に由来する甘みが特徴ですが、ウイスキー紅茶はこの甘味をベースとしたフレーバーティーです。

岩本さんたちはジャパニーズウイスキーの熟成に使った樽のなかで寝かせることで、和紅茶ならではの甘みと、樽に染み込んだウイスキー香、そしてバニラのような樽香を纏ったウイスキー紅茶を完成させたんです。


頭では紅茶とウイスキーがマッチングすることは理解していましたが、実際にテイスティングしたその味わいは想像以上。
ウイスキーの香りは芳潤で、なのに樽香が強すぎず、和紅茶の柔らかい香りのあとにほんのり香り立つ。

これは面白いと思って『FONIA tea 〜Whisky Black Tea〜』の開発を始めたんです」


戸田さんが目指したのは、口あたりのやわらかさとリラックスできる香味だった。


そこでコメの旨みはそのまま香りがゆっくりと広がるバランスを探った。
ポイントは白麹だ。
クエン酸を生成する白麹は通常、清酒の醸造には用いられないのだが、あえてこれを使うことでレモンティーのような軽快で爽やかな酸味を加えている。

「FONIA tea Whisky Black Tea」¥2,600。ウイスキー紅茶の茶葉100gとのセットもあり、こちらは¥5,000。

香気成分に注目して。

「温度帯を変えても優しい飲み心地なのでゆっくり味わっていただけます。
液温を上げて香気成分を揮発させるとより多くの香りを感じていただけるはずだから、常温がおすすめ」


香気成分の可能性に魅せられている戸田さんによれば、「お茶の面白さは、茶葉の酵素により変化する香りにある」とか。そこを司るのが白麹だ。


「芋焼酎がライチや花のような華やかな香りをまとうことがありますが、これは白麹に含まれる酵素のおかげ。

さつまいもの中では香気成分と糖が結合した状態で保存されています。
通常はこの香りは糖から遊離しないため感じられませんが、白麹が生成する酵素がその結合を分解することで、華やかな香りを感じられるようになるのです」


「FONIA tea 〜Whisky Black Tea〜」でも同様の反応による発酵過程を経ることで、香りがさらに華やかになった可能性もあるとのこと。
茶葉に由来するクリアな渋みは日本酒との相性もよく、あたらしい可能性を感じさせる。
ドラスティックな香りの変化を楽しめる醸造酒はカクテルの副材料としてもポテンシャルがありそうだ。


「今後は茶葉以外にもさまざまな植物の香りを引き出せるようになるかもしれませんね」


「WAKAZE」ではさまざまなものづくりの視点を酒造りに生かすべく、今後も全国のクラフト技術を担う作り手と力を合わせていく。


後編では、お茶とスピリッツの無限の組み合わせに挑戦する「茶割」をご紹介しよう。


後編に続く。

SHOP INFORMATION

WAKAZE
山形県鶴岡市末広町5-22 マリカ西館2階201号室
URL:https://www.wakaze.jp