
PICK UPピックアップ
広島初のクラフト、「SAKURAO GIN」は
ローカル&エコフレンドリー!
<前編>
#Pick up
ディスティラー山本泰平さん from「株式会社サクラオブルワリーアンドディスティラリー」
文:Ryoko Kuraishi
左から「ORIGINAL」、「LIMITED」、限定発売の「HAMAGOU」。バーテンダーにヒアリングを行い、バーで使い勝手のいいサイズやボトル形状に仕立てた。
世界遺産・宮島の近くで産声をあげた。
2018年、ユネスコ世界自然遺産に指定されている宮島にほど近い廿日市市桜尾に、クラフトジン蒸留所の「SAKURAO DISTILLERY」が誕生した。
現在は、広島産の柑橘類とヒノキ、ショウガやシソ、緑茶、外国産のジュニパーベリーやコリアンダーシードなど14種の素材を使った「SAKURAO GIN ORIGINAL」と、広島産にこだわった17種のボタニカルを原料とする「SAKURAO GIN LIMITED」の2つのジンを展開している。
母体となるのは、1918年にこの地で創業した中国醸造。
もともと進取の気性に富んだ企業だったらしく、日本で初めて紙パック入りの清酒を発売している。1967年のことだ。
蒸留機はドイツのアーノルドホルスタイン社製。 導入にあたってドイツにまで視察に赴いたそうだが、惚れ惚れするような造形美と、「新入社員は3年間、ひたすら銅を叩く」という実直な社風に感銘を受けたとか。
長く地元向けに清酒や蒸留酒を造ってきた中国醸造が、未来を見据えて洋酒製造に舵を切ったのは2000年代に入ってからのこと。
清酒や蒸留酒の国内市場の縮小を見越して、洋酒、それも当時、ブームの兆しが見えていたジンをベースにした商品開発に取り組むことになった。
「リキュールやその原料となるスピリッツは造っていましたがジンを造るのは初めてですから、ロンドンドライジンをはじめとするさまざまなジンの香味成分を徹底的に分析することから始めました」というのは、開発主任の山本泰平さん。
長く焼酎、清酒の現場に身を置き、リキュール開発にも携わったディスティラーだ。
開発責任者の山本さん。
「“ジン”とひと口に言っても、その香りは実にさまざま。
どういう香りを強調するのか、どのゾーニングの香りに狙いを定めるのか、まずはそこを明確にしてレシピ開発を進めました」
ご存知の通り、広島は日本一のレモンの生産地だ。メインのボタニカルは柑橘でいきたい。
そういうわけで、柑橘系の要素の強いロンドンドライジンを開発のベンチマークとした。
本場の伝統的な製法を学ぶべく、スコットランドやロンドンの蒸留所を中心とする海外の蒸留所視察も積極的に行った。
特に印象的だったのはスコットランド。
地元に自生するボタニカルを手摘みして使用するディスティラリーのものづくりの姿勢に、山本さんは強いシンパシーを感じたそうだ。
「SAKURAO GIN」に使われている素材がこちら。手前が広島県内産のジュニパーベリーだ。
地元産ジュニパーベリーが見つかった!
同時に、原材料であるボタニカルのリサーチにも取り組んだ。
「広島県の酒造メーカーが手がけるジンですから、まずは地元のボタニカルを探ってみようと、県内産の素材を探し始めました」
初めに当たりをつけたのが柑橘類。「SAKURAO GIN」のベースとなる原料だ。
幸い、レモンやハッサクのリキュールを造っていたことから地元の生産者とのパイプがあった。
「柑橘の農家さんの紹介で、ショウガ、シソ、ヒノキ、黒文字といった、日本らしいボタニカルの作り手も続々と見つかりました」
すでに開発を進めている中、偶然にも広島県立食品産業技術センターの研究者から県内産ジュニパーベリーを紹介された。
広島県内でもごく限られた山間部に一部、自生する、大変希少なボタニカルだという。
なんと牡蠣殻も使われている。爽やかな柑橘の香りの奥に、潮のアクセントを感じられるはず。
「県内の素材を探していたものの、ジンの根幹となるジュニパーベリーは輸入ものしかないなと諦めていたんです。
それがジュニパーベリーも広島で取れるとわかり、全て県内産の素材で造れるかもしれないと色めき立ちました」
広島産ジュニパーベリーの存在で、オール「メイド・イン・広島」のクラフトジンを実現させようとする「SAKURAO DISTILLERY」。
その後、さらに広島らしい、宮島に自生するボタニカルまで見つかって……。
「SAKURAO GIN」誕生のバックストーリーは後編に続く。
SHOP INFORMATION
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株式会社サクラオブルワリーアンドディスティラリー | |
広島県廿日市市桜尾1-12-1 TEL: 0829-32-2111 URL:https://www.sakuraodistillery.com |