食前酒には「アペロール」が定番!!
北イタリア・アペリティーヴォ事情。

SPECIAL FEATURE特別取材

食前酒には「アペロール」が定番!!
北イタリア・アペリティーヴォ事情。
[vol.02] - 中編 from MILANO

#Special Feature

文:Miki Tanaka(ミラノ在住)

大いなる例外、ミラノのアペリティーヴォ事情。

前編の冒頭で「イタリアにはアペリティーヴォ(食前酒)の習慣があり、そのスタイルは食事の前に軽く一杯飲んでちょっとしたものをつまむのが日常的」云々というような話をしたばかりだが、いきなりそれを撤回せねばならない。

というより、実は大いなる例外が存在しており、アペリティーヴォの伝統的スタイルがほぼ崩壊してしまっている街がある。

そう、それがミラノ。

食前酒には「アペロール」が定番!!北イタリア・アペリティーヴォ事情。<中編 from MILANO>

今やミラノで“アペリティーヴォ”といえば、世間でいうところの“ハッピーアワー”なるものを意味する。

これは18:30~21:00頃までの間、ドリンク(こちらも通常よりやや安めの価格設定)を1杯頼むと、ブッフェ形式になっているおつまみバーからフード取り放題というシステムだ。

さすがはイタリアだけに、パスタあり、米料理あり、プロシュート(生ハム)あり、ピッツァあり……。

品揃えもリッチなら味のほうもなかなかで、これを夕食代わりにしてしまう人も多い。

食前酒には「アペロール」が定番!!北イタリア・アペリティーヴォ事情。<中編 from MILANO>ビジネスマンの多いミラノでは、この時間帯は仕事が終わったあとにそのまま行ける時間でもあり、ウィークデイは翌日の仕事を気にして早めに帰宅する働き者のミラネーゼたちのライフスタイルにもあっている模様。

このブームが始まったのは十数年ほど前。

当時このサービスを行っているバーは数件だったのが、今や“アペリティーヴォ”をやらない店はないほどだ。

食前酒には「アペロール」が定番!!北イタリア・アペリティーヴォ事情。<中編 from MILANO>

ミラネーゼのお気に入りは、アペロールスプリッツ!!

ファッション関係者を中心に大人気のバー「ブランコ」のオーナー、アンドレ氏はこう語る。

「アペリティーヴォがあまりにもすごいブームになりすぎて、そろそろ皆飽きてきた頃かと思うんですが、結局このアペリティーヴォスタイルをやめると人が入らなくなってしまうんですよ(苦笑)。多分それはミラネーゼがフードよりもドリンクに重きを置いているからでしょうね。ミラノではおいしいカクテルを作る店は必ず繁盛します」

人気バーを経営する敏腕オーナーの言葉だけに説得力がある。

「イタリアでは基本的にカクテルは夜に飲みに出かけた時に飲むものというイメージがありますが、ミラノに限ってはみんなアペリティーヴォでもさまざまな種類のカクテルをオーダーします」

「一番の人気はアペロールスプリッツ。同店では1日で500~600杯でますよ。2位がアメリカーノ、3位がネグローニ・ズバリアート(通称“間違いネグローニ”と呼ばれ、ネグローニ本来のレシピのジンの代わりにスプマンテを使ったカクテル)。私も個人的にはアペリティーヴォにはアペロールスプリッツをよく飲みます。アルコール度が低く、消化を促し、飲みやすいのがいいですね」

食前酒には「アペロール」が定番!!北イタリア・アペリティーヴォ事情。<中編 from MILANO>

“アペロール=ファッション”がミラノのキーワード。

そんなアンドレ氏の言葉を後押ししてくれたのが、カンパリ社アペロール担当のアンドレア・ネリ氏。

アペロールのオフィシャル・バー「メトロポリス」にてお話を伺った。

「ミラノには元々スプリッツの文化はありませんでした。ミラノに本社を置くカンパリのほうが有名だったため、ネグローニ・ズバリアートをはじめとするカンパリベースのカクテルがメインでした。そのカンパリ社のラインナップにアペロールが加わってから、その人気はミラノでもブレイクしました。ゆえにミラノにおいてアペロールは、食前酒というよりはカクテルの一つというふうに受け止められているようです」

「90年代以降のファッション性の高いCM展開もミラネーゼにウケましたし、最近のオールドファッション的な流行回顧のブームにも乗りました。また、ミラノの名物ともいえるアペリティーヴォが流行してからは、飲みやすくてアルコール度も低いアペロールは、料理とのコンビネーションという点でも評価されているようです」

食前酒には「アペロール」が定番!!北イタリア・アペリティーヴォ事情。<中編 from MILANO>ちなみにこの「メトロポリス」は、最近スタイリッシュなバーが続々オープンし新しいINなゾーンとして注目されているピサーニ通りにある。

ビサーニ通りに並ぶ各バーでは、食事とともにオシャレにアペロールを楽しむミラネーゼたちの姿が多く見られる。

アペロールが生活に溶け込んでいる前出のパドヴァとは対照的に、どうやらミラノでは“アペロール=ファッション”というイメージができあがっているらしい。

ビジネスの街、ミラノでのアペリティーヴォの役割とは?

この傾向は、今ミラノで最も話題のバー「カンパリティーヴォ」でも感じることができた。

同店はデザインや建築関連の複合ギャラリー「トリエンナーレ」とカンパリ社のコラボレーションによってできたバー。

店舗設計をカンパリのボトルをデザインしたマルコ・ランニが手掛けたことでも注目を集めている。

食前酒には「アペロール」が定番!!北イタリア・アペリティーヴォ事情。<中編 from MILANO>ここでも夕方はハッピーアワーを採用し、ファッション関係者やクリエイターたちが夜な夜な集まっているが、そのなかでもオレンジカラーの液体の入ったグラスを手にする人が目立っている。

それもそのはず、メニューにはアペロールスプリッツ以外にも、アペロール・オン・ザ・ロックやアペロール・シェケラート(アペロールをシェイクしたもの)、アペロール・サワー(アペロールのソーダ割り)、アペロール・オレンジといった、アペロールをベースにしたカクテルがずらりと並んでいるのだ。

食前酒には「アペロール」が定番!!北イタリア・アペリティーヴォ事情。<中編 from MILANO>

先に登場したアンドレア氏曰く「ミラノにおいてアペリティーヴォは、もちろん気の置けない友達と過ごす貴重な時間でもあるのですが、他の都市に比べてよりソーシャライズな役割を持っていると思うのです。やはりビジネスの街だけに、新しい知り合い(=コネクション)をつくるとか、昔の同僚と仕事関係の情報交換をするとか……。仕事のミーティングというほどシリアスではないけれど、アペリティーヴォがなにかしら仕事へのメリットをもたらすような役目を果たすこともあるのです」。

ゆえにアペリティーヴォもエレガントに……。というわけで、ここミラノではファッショナブルなアペロールが活躍するという訳らしい。

食前酒には「アペロール」が定番!!北イタリア・アペリティーヴォ事情。<中編 from MILANO>

食前酒には「アペロール」が定番!!北イタリア・アペリティーヴォ事情。<中編 from MILANO>BLANCO ブランコ
Piazzale Lavater ang Via Morgagni 2 Milano
02-29405284
http://www.blancomilano.com
食前酒には「アペロール」が定番!!北イタリア・アペリティーヴォ事情。<中編 from MILANO>METROPOLIS メトロポリス
Via Vittor Pisani 5 Milano
02-67171746
http://www.cafemetropolis.it
食前酒には「アペロール」が定番!!北イタリア・アペリティーヴォ事情。<中編 from MILANO>CAMPARITIVO カンパリティーヴォ
Viale Alemagna 6 Milano
02-9468487

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