焼酎に新時代到来!
バー需要を見込んだ新ブランド「SS.L」。
<前編>

PICK UPピックアップ

焼酎に新時代到来!
バー需要を見込んだ新ブランド「SS.L」。
<前編>

#Pick up

Hombo Naoya/本坊直也 by「SS.L(薩摩酒造)」

世界に誇るジャパニーズ・スピリッツといえば、焼酎だ。そんな焼酎界に現れた新星、「SS.L」からは、バーユースと海外市場を見据えたユニークなモノづくりがうかがえる。

文:Ryoko Kuraishi

ブランドディレクターの本坊直也さん。

内容もパッケージも斬新な、新時代のスピリッツ

薩摩酒造といえば、本格芋焼酎の「さつま白波」で知られる老舗の焼酎蔵。

南九州の伝統的な焼酎文化を継承する一方で、従来の焼酎のイメージを覆すような酒造りを始めたいと考えていた。

そこで「モノづくりの可能性に挑戦する」というコンセプトを掲げ、まったく新しい焼酎ブランド、「SS.L(Satsuma Shuzo.Labo)」を創設した。今年5月のことだ。

「SS.L」を牽引するのは、ブランドディレクターを務める本坊直也さん。

東京の広告代理店に勤めた後、2017年に薩摩酒造に入社。以来、代理店時代に培った人脈を駆使してブランディングや商品開発を行なってきた。

「SS.L」には、そんな本坊さんの思いが詰まっている。

琥珀色が美しい「SS.L_01」。味わいを追求するために、スピリッツではなく、あえてリキュールのスペックを選択。

ブランドの原点には、社内の開発セクションに眠っていた、伝統ある酒蔵の歴史を代弁するかのような魅力的なサンプルの存在があった。

たとえば、さまざまな樽貯蔵によってアロマが引き出された原酒など、世の中には出なかったけれど、眠らせておくには惜しいサンプルたち。

それを前に、これまで市場のどこにもなかった、全く新しい酒を造ってみようという思いが芽生えたそう。

さらには、日本のトップバーテンダーたちとの交流も、「SS.L」ローンチのきっかけの一つになった。

「2020年、薩摩酒造は『The SG Shochuプロジェクト』に関わり、『IMO』を手掛けました。

そのときに後閑さんやSGグループのみなさんとやりとりしたことが、今回のモノづくりに生きていると思います。

というのも、『The SG Club』でいただいたカクテルが、僕たちが造ったプロダクトの可能性を圧倒的に広げてくれていると感じたから。

製造の現場から先にある世界を、その世界のプロフェッショナルに広げてもらう面白さを実感し、そのように使ってもらえるプロダクトを手掛けてみたいと思ったのです」

「SS.L_01」の製造工程から。茶葉を燻す(左)という発想は、枕崎の鰹節店、「金七商店」4代目の瀨﨑さんのアイデア。右は茶葉を樽貯蔵した麦焼酎に浸漬しているところ。最低限の濾過だけを行い、複雑な香りや味わいをそのままボトルに閉じ込めた。

追求するのは「まだ見ぬ酒」と「地域性」

「SS.L」では、酒としてうまいのは当たり前として、「いままでどこにもなかった」という基準と「地域性」を大切にしている。

今年5月に発売された第1弾「SS.L _01」と「SS.L _02」は、地元の鰹節店、金七商店に協力を仰いで開発された。

「01は枕崎産の高級茶葉の一番茶を燻し、樽貯蔵した麦焼酎に浸漬。

スモーキーさのなかに、お茶の甘みや旨味、薫香が加わり、さらに樽香が複雑に重なりあうリキュールです。スイーツとの相性もいいんですよ。

リキュールとしたのは、スピリッツの着色度の規定を超えてしまうことと、アルコール度数が高いと辛味が出てしまうから」

こちらは「SS.L_02」の製造において、原料のサツマイモ(黄金千貫)を鰹節の急造庫(鰹節を燻す部屋)に入れて加熱しているところ。水分が抜け切らないよう、何度も状態を確かめながら加熱を行った。

「02」はより枕崎らしさを表現しようと、鰹節に注目したプロダクトだ。

「枕崎は鰹節の生産量が日本一という一大産地。地元の特産品と手を組んでなにか新しい提案を、と考え、焼酎の出汁割りを研究してみましたが、うまくいきませんでした。

ならば製造工程で入れたらどうだろう、そんな発想の転換から生まれた商品です。

原料のサツマイモ(黄金千貫)を、鰹節を燻す急造庫に入れて加熱。水分をある程度抜いた状態で発酵、蒸留すると、まるでメスカルのようなスモーキーさが生まれたのです。

いずれも、いままでやったことがないモノづくりで、かつ地元のものとコラボするというシンプルな発想を、各プロセスで試行錯誤しながら形にしました」

「SS.L_03」のために造られたロシアンオークの樽。専門の職人が新たに樽を手造りしてくれるという、老舗のリソースに脱帽!

「SS.L _03」はサツマイモ(エイムラサキ)を使った醸造酒という、薩摩酒造初の試みを形にしたもの。

エイムラサキのもろみを舐めてみたところ、黄金千貫とは全く違う華やかなアロマに可能性を感じ、そのアロマを生かすため、蒸留するのではなく搾ることにしのだとか。

こちらの製造にあたっては、専属の樽職人が「03」のためのオリジナル樽(!)を、ロシアンオークでわざわざ手作り(!!)したという。

その樽で約1年間熟成させた「03」は、赤いベリーの香り、熟したプラムのニュアンス、スミレを思わせるフローラルの余韻、さわやかな酸味が印象的。よく冷やしてワイングラスに注ぎ、ストレートでいただくのがおすすめだ。

「ショコラティエ パレ ド オール」とコラボしたカカオ焼酎、「SS.L _04」は、サツマイモとカカオの出合いがユニークな一本。

芋焼酎のもろみにカカオの粉末を加え、単式蒸留器で蒸留。ステンレスタンクで数ヶ月熟成させた後、加水をせずに仕上げたものだ。

どこか親和性のあるサツマイモとカカオを一緒に醸すことで、新しい味わい、香りを得られた。

カカオ由来の風味やアロマを感じさせるロックスタイルがおすすめというが、カクテルにも応用できそうだ。


そしてこの8月に満を持して発売したのが、薩摩酒造初のジンである。
果たしてそのジンの味わいは……?

後編に続く。

SHOP INFORMATION

SS.L(薩摩酒造)
鹿児島県枕崎市立神本町26番地
TEL:0120-4673-17
URL:https://shop.satsuma.co.jp

SPECIAL FEATURE特別取材