クラフトジンを造った羽田麦酒に学ぶ、
賢いクラファン活用術。
<前編>

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クラフトジンを造った羽田麦酒に学ぶ、
賢いクラファン活用術。
<前編>

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野呂駿佑さん by「羽田麦酒」

クラファンを活用してクラフトドリンクをリリースする、そんな流れが生まれている。今月はクラフトドリンクのための賢いクラファンの使い方をレポート。前編では羽田麦酒の事例をご紹介しよう。

文:Ryoko Kuraishi

中央が野呂さん、右は取締役の鈴木祐一郎さん、左は小林俊太郎さん。

クラフトビールのブリュワリーが、クラフトジンを造ったワケ。

「おらが町のビールを造る」という思いで2014年にスタートした「羽田麦酒」は、OEMを中心としたクラフトビール造りを専業としてきた。


ブリュワリー初となるクラフトジン「BathLabGin」が生まれたのは2019年のこと。
そもそもクラフトジンに注目したのは、ジンにクラフトビールと同じような多様性、自由さを感じたからだという。


「ジュニパーベリーを使うこと以外はボタニカル素材も抽出方法も実にさまざま、ちょっとしたレシピの違いで味わいが変わっていく。それが面白いと思いました」と、開発担当の野呂駿佑さんが当時を振り返る。


初めてのクラフトジンは思っていた以上に良いものができたけれど、もっとストーリー性を備えたジンを造りたい。
原料も造り方も自由度の高いジンは、プロダクトが体現する物語も魅力の一つだからだ。

例えば、「東京発」を打ち出してきた「羽田麦酒」だからこその、東京生まれのボタニカルは使えないだろか。
そうして辿り着いたのが、奥多摩のスギ、ヒノキだった。


「東京の造り手が東京の素材を使うというだけではありません。
弊社の代表が学生時代に水質研究を専攻していた経緯もあり、『水はどこから来るのか』、『奥多摩の森林と多摩川、東京の街の飲み水との関わり』という物語を奥多摩のスギとヒノキを使ったクラフトジンで表現できるのではないか、そう思いました」


プロダクトはできた。けれどこれまで製造を業務の中心としてきた羽田麦酒では、自社のオリジナルプロダクトをPRする術がなかった。
「そんなとき、クラフトドリンク専門のクラファンプラットフォーム、『ふぁんどり』からお声がけいただいたんです」

クラファンでは奥多摩の森づくりに関わる人々からの支援も受けることができた。

クラファンの存在自体は知っていたけれど、「芸能人やインフルエンサーが使うものであり、自分たちと近しい存在ではなかった」と野呂さん。


けれど、視点を変えてプロジェクトを見てみると、プロダクトへの共感から造り手のファンになるという流れがあることが見て取れた。


「特にお酒は嗜好性の高いプロダクトですから、ファンになる、支援するという気持ちを不特定多数の方に持っていただけることが心強いと思いました。
それでクラファンに挑戦してみようということになったんです」

クラファンのメリットは、ファン作り。

実際にチャレンジしてみて、果たしてその感想は?


「実際にチャレンジしてみてクラファンは資金を調達する手段というより、ファンを作るための活動ということがよくわかりました。
また、プロジェクトが市場マーケティングを兼ねているので、実際の販売前に消費者の動向を探ることが可能です。


これは予想外だったのですが、奥多摩の魅力を発信する活動をされている方々から支援をいただくことが多くて、あらためてストーリーの大切さを実感しましたね。


それから、製造の流れができた段階で商品を販売(=プロジェクトたちあげ)できることもクラファンのメリット。
リターンの配布まで時間の猶予がありますから、プロジェクトスタート時点では商品が不要なんですね。これは大きいと思います」


一方で自分たちの課題とも向き合えた。

PR力とインパクトのある写真がマスト。

「まず感じたのが、PR力と営業力の大切さ。
今回はプロジェクトページの作成などにおいて『ふぁんどり』がフルサポート体制で取り組んでくれましたが、そもそも『ふぁんどり』の担当者にプロダクトの魅力や自分たちの熱量をきちんと伝えないと、ページにもそれが落とし込まれません。


そのために必要なのは、常にプロダクトの魅力をブラッシュアップしていくことだと実感しました。
また、それを伝えるためのインパクトのある写真も大切です。
そうした感覚的な素養を磨いてはじめて、多くの人を引きつける魅力的なページを作れるんですね」


第一弾のプロジェクトは無事、目標を達成して終了し、4月26日からは第二弾のプロジェクトがスタート予定だ。
クラフトドリンクのブームの先駆けを作りたいという新しいチャレンジではクラフトコーラとコラボするそう。
「クラフトジンとクラフトコーラの組み合わせというドリンク業界の次なるムーブメントを、たくさんの方に応援していただければと思います」


なお、クラファンによりスピリッツやリキュールのジャンルにおいて新たなファン層を広げつつある羽田麦酒では、オリジナルリキュールのOEMも小ロットから可能だ。


「バーのオリジナルリキュールを造りたいとお考えのバーテンダーのみなさん、ぜひお気軽にお声がけください!!」

SHOP INFORMATION

羽田麦酒
東京都大田区多摩川1-23-12
TEL:03-6715-0702
URL:http://haneda-brewery.com/

SPECIAL FEATURE特別取材