「ヘンドリックス・ジン・パレス」に行ってみた!

SPECIAL FEATURE特別取材

「ヘンドリックス・ジン・パレス」に行ってみた!

[vol.02] - 伝説のマスターディスティラー、
レスリー・グレイシーに聞く10の極意

#Special Feature

スーパープレミアムジン「ヘンドリックス」のマスターディスティラー、レスリー・グレイシーは、伝統や風習にとらわれない。ロンドンジンの製造法をあえて封印し、科学的知識と独自の感性で新境地を切り開いてきた。その革新的な精神とジン業界への功績によって、2021年に『ジン マガジン』の殿堂入りも果たしている。そんな彼女にジン造りの極意を聞いた。                    文:Miyuki Sakamoto 写真: Misa Watanabe

すべては、1989年から始まった

Q1.ジン造りに関わるきっかけを教えてください。

大学で薬学を学び、卒業後はヨークシャーの製薬会社で働いていました。

その後スコットランドに引っ越すことになり、ヘンドリックス・ジンの製造元であるウィリアム・グラント&サンズの求人広告をみて応募し、1988年にこの会社の一員となったのです。

そして1989年に同社の創立者のひ孫であるチャーリー・ゴードンが二つの古いポットスティルを使ってのジン作りを提案してきました。それがすべての始まりだったのです。

チャーリーは19世紀に製造されたベネットと、1948年のカーターヘッドという名の2つのポットスティルを1966年にオークションで落札して手に入れていました。その頃から彼には新しいジン作りの構想があったのです。

「ヘンドリックス・ジン」が発売された1999年ですらジンのイメージは今とは雲泥の差で、おしゃれさは皆無でした。でもチャーリーはジンの可能性を見抜いていたのです。

とても聡明な経営者ではあるものの、そんな以前から現在のプレミアムジンの大ブームを予想したということに、驚かずにはいられません。

Q2.「ヘンドリックス・ジン」が他のどのジンとも違うのは、その2つのスティルポットがあるからでしょうか?

スティルポットが2つあるというのは、他との決定的な違いです。このコンビネーションがヘンドリックスを生み出しているのです。2つのポットを同時に使う製造を発案したもチャーリーで、彼が長年構想を重ねてきた、まったく新しいジン造りの柱となっています。

そのアイデアを聞いた時、私はとても驚きましたが、エキサイティングでもありました。ヘンドリックスの開発には半年から9ヶ月かかりましたが、非常に有意義なチャレンジの毎日だったことを覚えています。

比類ない味わいを生み出す3つのポットスティル。

比類ない味わいを生み出す3つのポットスティル。

創造力の源はどこに?

Q3.あなたのインスピレーションの源はどこにあるのでしょう?

特定の何かがあるわけではありません。いつも通る道の風景やそこで感じる匂い、そういったさまざまな組み合わせが発想の源となっていると感じています。

例えば、イギリスのどこの公園や庭にもある一般的な芝を刈ったばかりの青々とした匂い。そんな香りに、はっとさせられます。また、意外なコンビネーションであっても、試してみると他にはない美味しさが見つかることもあります。

以前、とあるコンテストを見学する機会がありました。そこで出品された一つに、スモークサーモンとストロベリーサンドイッチという意外な組み合わせがあったのです。とても斬新で素晴らしかった。

このように、心を開いて意外性を探る好奇心を持っていることが大切だと思っています。ヘンドリックスのさまざまなバリエーションのアイデアも、こうしたところから生まれてきています。

Q4.ボタニカルを求めて、数多くの旅をしていると思います。特に印象に残った国や地域はありますか?

特別に一つの場所が心に残るというよりも、全ての場所に魅力があり、さまざまな香りが新たな発想を与えてくれるヒントになっています。

ディスティラーたちの技と知恵が詰まった貴重なノートも残されている

ディスティラーたちの技と知恵が詰まった貴重なノートも残されている

Q5.「ヘンドリックス・ジン」を造る過程で、一番大切にしていることは何ですか?


全てが完璧に進行していくことです。

レシピを忠実に守り、古くから伝わる伝統的な工程も、新たに取り入れたヘンドリックスならではの手法も、すべてが予定通りにパーフェクトに進んでいくことにとても気を配っています。

一貫性を保つことは非常に重要なのです。

Q6.バラとキュウリのエッセンスを選んだ理由は?

バラとキュウリもチャーリーのアイデアです。彼は最初の段階からそれを考えていました。

選んだ理由はとてもイギリスらしかったから。バラ園でキュウリのサンドイッチを楽しむアフタヌーンティーは、この国らしい情景ですよね。

バラはダマスクローズを使い、キュウリはイギリスでは育たない、特別な品種を使用しています。

レスリーのインスピレーションを掻き立てる品々でいっぱいの「キャビネット・オブ・キュリオシティーズ」

レスリーのインスピレーションを掻き立てる品々でいっぱいの「キャビネット・オブ・キュリオシティーズ」

ジン造りの未来について

Q7.今後、ジン造りはどのようになっていくと思いますか?

今の人気は今後も衰えることなく続いていくと感じています。

人々は多様性を重んじて、これまで以上に新しいものに躊躇なくトライしています。違うことを楽しみ、好奇心に溢れている。そんな人々の考え方がさらなるジンの広がりを支えていってくれると考えています。

Q8.ジンに適していると思われる日本の素材は何ですか?

私はまだ一度も日本を訪問したことがありませんが、柚子はとても興味ある素材です。「ジン・パレス」の温室でも柚子の木を育てているんですよ。

Q9.お好みのヘンドリックスの楽しみ方を教えてください。

ヘンドリックスとエルダーフラワーのコーディアルを、氷とともに軽くステアしたカクテルです*。エルダーフラワーはヘンドリックスに使われるボタニカルの一つ。そのエッセンスを凝縮したコーディアルで割ることで、花の香りがさらに際立ってとても素敵なドリンクに仕上がるのです。

*編集部註:これはヘンドリックスが提案するカクテルの一つであり、彼女の名が付けられている。

Q10.日本のヘンドリックスファン、そしてバーテンダーの方々にメッセージをいただけますか?

目指す道を諦めず、常に心を開いて新しいことへの挑戦を続けてください。

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「キャビネット・オブ・キュリオシティーズ」

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