ワールドクラス2013特別レポート。
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SPECIAL FEATURE特別取材

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#Special Feature

文:Drink Planet編集部

豪華客船「アザマラ・ジャーニー」号でのオープニングセレモニー。

豪華客船「アザマラ・ジャーニー」号でのオープニングセレモニー。

2013年7月4日~9日の6日間、今年も世界最高峰のバーテンディング・コンペティション「ワールドクラス2013」のグローバル ファイナルが開催された。

5回目となる今回の舞台は、地中海……。

グローバル ファイナルのために豪華客船をまるごと貸し切り、南仏ニースを皮切りに、モンテカルロ、サントロペ、イビサ、そしてバルセロナをめぐりながら、客船内や寄港地でバーテンダーたちの熱き戦いが繰り広げられた。

ちなみに豪華客船「アザマラ・ジャーニー」号は、長さ180m、重さ3万トン、スタッフだけで400名近くを抱えるという。

今大会の規模が、いかに巨大かがお分かりいただけると思う。

もちろんワールドクラスに参加するコンペティターの数も然り。今年は世界各地の激しい予選を勝ち抜いた44人もの代表バーテンダーが集結した。

ベトナムやフィリピン、インドネシア、などアジア・パシフィック地区だけでも13ヵ国。

ワールドクラスの開催が、アジアのレベルアップに繋がっているのは間違いないだろう。

世界44の国と地域から、個性豊かなバーテンダーが集結した。

世界44の国と地域から、個性豊かなバーテンダーが集結した。

参加バーテンダー44名は、まずTime to Play(インフュージョンやスピークイージーを取り入れたもの)やMediterranean Mastery(地中海沿岸諸国からインスピレーションを得たカクテル)といった4つのチャレンジを行い、この時点で16名(通称「Sweet Sixteen」)に絞られる。

さらにKings of Flavor とTapas Tableという2つのチャレンジを経て、最終ファイナリスト8名(通称「Great Eight」)が決定する。

Great Eightは以下の通り。

★ルーク・アシュトン(Luke Ashton) Australia, Vasco Bar
★宮﨑剛志(Tsuyoshi Miyazaki) Japan, Nara Hotel
★ジェイソン・クラーク(Jason Clark) New Zealand, Shott Beverages
★モニカ・バーグ(Monica Berg) Norway, Aqua Vitae
★マリオ・セイホ(Mario Alberto Seijo Rivera) Puerto Rico, Santaella
★デイビッド・リオス(David Rios) Spain, The Jigger Cocktail
★ローラ・シャハト(Laura Schacht) Switzerland, Clouds Bar
★ジェフ・ベル(Jeff Bell) USA, PDT

この後、Punch&Glass、そして最終日のCocktails Against the Clockという2つのチャレンジを戦い、ワールドクラス2013の勝者が決定した。

左:「Wild Strawberries Film」、右:「Gold Basque Punch」。

左:「Wild Strawberries Film」、右:「Gold Basque Punch」。

すでにご承知の方も多いかもしれないが、優勝はスペイン代表のデイビッド・リオス氏。

彼はヨーロッパ地区のリージョナル・チャンピオンにも輝き、全8つのチャレンジではPunch&Glassを制した。

リオス氏はスペインといっても、カクテルがポピュラーなバルセロナやマドリッドではなく、北西部のビルバオからの出場。

日本代表である奈良の宮﨑氏を含め、今大会はいわゆる大都市(カクテルシティー)以外からの出場も目立った。

これは、“Raising the Bar”をコンセプトに掲げるワールドクラスが世界中に広く浸透してきている証であり、同時にバーテンダーのレベルが世界的に底上げされてきている証でもあるだろう。

ではPunch&Glass Challengeでリオス氏が披露した2つのカクテルをご紹介しよう。

同チャレンジでは、5ℓ分のパンチカクテルと、自身を表現するシグネチャーカクテルを創らなければならない。

★Gold Basque Punch (パンチカクテルとして)
Recipe:
60ml Johnnie Walker Gold Label Blended Scotch Whisky
30ml Amer Picon bitter aperitif
30ml Pineapple juice
10ml Grenadine
30ml Soda
すべての材料をパンチボウルにいれ、大きな氷とともにステア。
オレンジスライス、スターアニス、ミントを加える。
サーブする際は、よく冷やしたワイングラスに注ぎ、オレンジツイストを飾る。

★Wild Strawberries Film (シグネチャーカクテルとして)
Recipe:
50ml Ketel One vodka
20ml Aperol infused with wild strawberries
15ml Sugar syrup
20ml Kumquat and grapefruit juice (50/50 split)
1 Egg white
1 Strawberry
2 dashes Orange bitters
イチゴをシュガーシロップとともにマドリング。
その他の材料を加え、氷とともにシェイク。
ダブルストレインし、クープグラスに注ぐ。
ドライストロベリー、ミントを飾る。

左:Punch&Glass Challengeでの宮﨑剛志氏。右:Red Carpet Challengeでのモニカ・バーグ氏。

左:Punch&Glass Challengeでの宮﨑剛志氏。右:Red Carpet Challengeでのモニカ・バーグ氏。

今回で5回目を数えるワールドクラスだが、今大会はじめて行われたチャレンジのひとつがPunch&Glassだ。

しかも、最終ファイナリスト8名が決定した後のチャレンジということで、注目度も高かった。

Punch&Glassがチャレンジとして採用された背景について、ワールドクラス日本大会の運営総責任者であるキリン・ディアジオ社の小﨑玲子氏に話を聞いた。

「理由は3つあります。ひとつはSpeak Easyブームにより、Speak Easy時代に流行っていたパンチカクテルにも再びスポットライトが当たったこと。2つ目は有名バーコンサルタントのニック・ストレンジウェイ氏を筆頭に、ロンドンでパンチカクテルを取り入れるバーが増えたこと。3つ目は、2010年にデイヴィッド・ウォンドリッチ氏による『PUNCH』という本が発売されたことです。こうしたバーシーンのトレンドを踏まえて、今回Punch&Glassが新しいチャレンジとして加わりました」

最近一部でリバイバルの兆しを見せていたパンチカクテルだが、ワールドクラスのチャレンジに採用されたことで、世界的なムーヴメントとなることだろう。

ここでは日本代表の宮﨑剛志氏のパンチカクテルをご紹介しよう。

ちなみに宮﨑氏は同チャレンジ、堂々の2位であった。

★Knockout Punch
Recipe:
1Bottle Tanqueray No.TEN gin 
1Bottle Johnnie Walker Gold Label Blended Scotch Whisky
1Bottle Zacapa 23 rum 
上記にブレンデッド ルイボスティーとライムスライスを加える。
サーブする際は、特大茶筅でステアし、
ライムジュースをスプレーしたグラスに注ぐ。

最後にフレーバー付けをする3種のスプレーを用意。
「フレッシュ」:ラベンダーをインフュージョンしたTanqueray No.TEN gin
「リッチ」:ジンジャービターを加えたJohnnie Walker Gold Label
「スイート」:バニラビターを加えたZacapa 23 rum 
3種のうち、好みで選んだスプレーをかけていただく。



それから女性バーテンダーの活躍も目立った。最終ファイナリスト8名には、ノルウェイ代表のモニカ・バーグ氏とスイス代表のローラ・シャハト氏の2名が残った。

彼女たちに共通するのは、女性ならではのしなやかな感性とちょっぴりキュートな演出。

ここではRed Carpet Challengeでモニカ・バーグ氏が披露したボトルサーブカクテルをピックアップしてみたい。

★Made by the Sea (Bottle Serveとして)
Recipe:
50ml Talisker 10-year-old Single Malt Scotch Whisky
"Spring" infused water (Nori)
"Summer" infused water (Pear)
"Fall" infused water (Pepper)
"Winter" infused water (Teablend)
"Seasons by the Sea"と名づけた春夏秋冬4つのエッセンスから、好みのものを選んでもらい、タリスカーとともにグラスにドロップする。グラストレーの上には、牡蠣の殻や海藻をあしらい、タリスカーが持つ海の魅力を伝えた。

授賞式では日本の大竹学氏を含め、歴代5人のチャンピオンがセレブレーションシェイクを行った。

授賞式では日本の大竹学氏を含め、歴代5人のチャンピオンがセレブレーションシェイクを行った。

日本代表の宮﨑剛志氏の結果もお知らせしておこう。

最終ファイナリスト8名に残ったのは言うまでもなく、Kings of Flavor Challengeでは見事チャレンジ部門トップ。アジア・パシフィック地区のリージョナル・チャンピオンの座に輝き、総合でも第3位と好成績を残した。

豪華客船でめぐる地中海を舞台に、華やかに幕を閉じたワールドクラス2013。

最後に改めて、日本大会の運営総責任者である小﨑玲子氏に今大会を振り返ってもらった。

「全体のレベルがまたさらに底上げされているように感じました。これまでバー後進国といわれてきた国や地域のレベルが格段に上がったと思います。また欧米のトップバーテンダーの方々は、これまで日本の長所とされてきた“丁寧さ”や“繊細さ”、“おもてなし”といった部分をバーテンディングに取り入れ、確実に自分のものにしていました」

「それから今大会が客船で開催され、規制が多かった影響かもしれませんが、特別な器具や変わった材料を持ち込んでサプライズ系の演出をする方が減ったように思います。それよりもむしろ“マイ・スタイル”にこだわった方が多く見受けられました。マイ・スタイルとはつまり、その方がいつもお店で行っているスタイルです。大会用の特別な演出ではなく、いつものバーテンディングの延長として、ワールドクラスを捉えているようでした。やはり日々のバーテンディングがあってこそ、ワールドクラスの掲げる“Raising the Bar”にも繋がっていくんだろうと思います」

地中海での熱き戦いを経て、世界中のバーテンダーたちはすでに次の舞台に向けての準備を進めていることだろう。

“Raising the Bar”。

それぞれのバーテンダーが、それぞれのバーで、この言葉の意味を探りながら、世界中のバーシーンを盛り上げていくことを期待したい。

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