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辻 美奈子

魚における味覚の意地悪テスト

10.04.19


小さいころ、勝手口と玄関があり、
玄関から入るといつも、母におこられていた。

このように書くと豪邸みたいだけど、田舎ではよくある話。
この勝手口に、よく魚屋さんが来ていた。

その日にとれたお魚をもってきてくれ、それを眺めるのが日常の一部。
当時、この季節、ダントツに食卓に並ぶのは、メバルの煮付け。

ところが、東京にきて、メバルを食べて、
その石油臭さに食べることができなかった。

世界各国のお酒のメーカーの方が来日したときに、
よく、和食店でお魚を食べさせる。
最近は、日本食がトレンドなので、皆行きたがる。

やってはいけないとは思いつつ、
興味深く面白いのでそこから“ゲーム”がスタートする。

まず、脂身の少ない、白身のお魚、スズキや平目あたりからスタートし、
西に出張のときは、冬であればフグも食べてもらう。
そうすると、ほとんどの人は、味がないという。
フグは、チューインガムみたいだという。

チューインガム!

その感想の言葉が、あまりにも斬新で、私には思いつかない単語。
次々と思いつかない単語が飛び出してきて、
それが面白くついついやってしまうのだ。

あまり調子にのって、続けていると、
最後のマグロのころには
フィッシーさ(魚臭さ)が口に残ると、ちょっとうんざりしている。

そこでようやく、今の季節だと、
筍の天ぷらとか、空豆の天ぷらなどを食べてもらうと
初めて本当の大喜びの顔となる。

でも、当然といえば、当然でだが、
ワインやシャンパンの醸造家はさすがで、
白身魚は、ほんのり甘いという。そして、ずっと噛んで飲み込まない。
毎回彼らがもつその嗅覚と、味覚に驚き、尊敬の眼差しを送ることに。

この意地悪ゲームが私は好きで、
醸造家、来日者の味覚チェックのテストをアイテム化していた。

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SPECIAL FEATURE特別取材