クラフトジンバー、Copain<後編>
2021年は日本のクラフトジンを究めるチャンス!

PICK UPピックアップ

クラフトジンバー、Copain<後編>
2021年は日本のクラフトジンを究めるチャンス!

#Pick up

ジェーニャ・マラホワ by「Craft Gin Bar Copain」

前編に続き、12月は池袋にある「Craft Gin Bar Copain」をご紹介。ウィズコロナの時代に、バーテンダーのジェーニャさんが目標とするものは?

文:Ryoko Kuraishi

来年の「東京ウィスキー&スピリッツコンペティション2021」洋酒部門の公式審査員に選ばれたジェーニャさん。「いまから楽しみにしています!」。Photos by Hisashi Nagasu

「Craft Gin Bar Copain」のジェーニャ・マルホワさんはロシアのヴォルゴグラードの出身。
かつてスターリングラードと呼ばれていた、近代的な産業都市である。


「初めて日本に来たのは17年前。当時は学生をしながらモデルをやっていて、その仕事の関係で来日しました。
学校があったのでしばらくはロシアと日本を行き来していましたが、卒業後、本格的に東京に腰を落ち着けたんです」


ジェーニャさんがバー通いを始めたのもちょうどその頃。
ちょうどミクソロジーがブームになり始めていたころで、一体どういう手法をとっているのか、そのテクニックや複雑なレシピに魅せられたのだとか。


ふとしたことをきっかけに、恵比寿の「TRAM」でモンキー47を口にする。
それがクラフトジンに目覚めたきっかけだった。

昨年の蒸留所巡りの記録から。左上はスコットランドはスペイサイドの「AniTher GIn 」。右上は同じくスコットランドの「ROCK ROSE」のボタニカルガーデン。左下はロンドンの「Portobello Road Gin」、右下は「SIPSMITH 」。

きっかけは「モンキー47」。

「それまではジンというと、学生時代にクラブで飲んだジントニック――変に甘くて、妙に苦い――のイメージしかなかった。当時はまだ若かったから(笑)。


本格的なクラフトジンに触れたのはそれが初めてで、衝撃を受けました。
複雑で重層的な味わい、香り、それぞれのバランスや奥行き感……。
一口飲んで、私の身体に合う!とピンときて、実際、翌日に残ることもなかったんです」


東京のバーシーンに触れるなかで、お酒をもっとちゃんと勉強したいという気持ちが強くなる。
「友人のバーを手伝うことになったのですが、そこはウイスキーが中心で。
おいしいハイボールの作り方を覚えることはできたけれど、私はもっときちんとミクソロジーを学んでみたかった。


当時、六本木の『R2 サパークラブ』によく通っていたのだけれど、そこにものすごく優秀な女性のバーテンダーが働いていて、彼女に大きな影響を受けたんですね。


ときどきバーテンディングのプライベートレッスンをお願いしていたのだけれど、彼女だって忙しいし。
そんなとき、パートナーから『本場のロンドンでカクテルの勉強をしてみたら?』という提案を受けたんです」

ラベンダーの風味がジンの香りと素晴らしくマッチ。「ラベンダーマティーニ」¥1,200。

「いまさら英語を勉強するのも気が引けるし、クイーンズイングリッシュに苦手意識があるし、まったく知らない環境に身を置くことにも抵抗があったし……」と及び腰だったジェーニャさんだが、観念して渡英を決め、ロンドンにある『LONDON BAR SCHOOL』に入学する。


「カリキュラムはかなりハードで、最初の三日は辛くて辛くて、毎晩、泣きながら日本に電話していました(笑)」というが、辛い思いをした甲斐あって、帰国後ここでバーを任されることになった。


「たくさんの人にクラフトジンの魅力を知ってもらおうと思って営業していますが、うちではジンの香りや味わいを楽しでもらうためにまずはストレート、もしくはロックで味わってもらっています。


ジンによっては少し甘みを加えた方が、香りが際立つ場合もあるので、ストレートで飲んでもらって甘味が欲しければソニックスタイルで提供します。
いいジンにはトニックの甘みをなるべく加えたくないから。


それから酔っ払いは入店お断り(笑)。
マティーニは2杯以上のオーダーは受けません。
お客さんには健康的に飲んでほしいし、酔っ払ってしまうとジンの香りもわからなくなるでしょ?


だからうちにはコアなジンファンか変わり者かチャレンジャーしか来ないんです」

クラフトジンには甘味はなるべく加えない。

そういって出してくれたのは、コッツウォルズのラベンダーが香る「COTSWOLDS」を使った「ジンエスプレッソ」や、雑味のないクリーンな味わいの「ORNABRAK」に山梨の有機ラベンダー、レモンピールを合わせた「ラベンダーマティーニ」。


ジェーニャさんがこの時期にいちばん飲みたくなるという「FOUR PILLARS」はソーダを加えてライムを絞り、ジュニパーベリーを浮かべて。


いずれのカクテルもジンの味わいを主役にしているから甘み控えめ、クラフトジン愛を感じさせるレシピだ。


カクテルに使うトニックも、厳選の6銘柄揃え、ジンにあわせてチョイスする。

ロンドンの「Portobello Road Gin」ではオリジナルのジン造りに挑戦。「もっと植物のことを勉強しなくては!と実感させられました」。

日本の蒸留所を巡るチャンス!

さて、ウィズコロナの時代を見据えてジェーニャさんの来年の目標は?


「インスタライブやYouTubeは続けるとして、来年は日本の蒸留所巡りにトライしたい。


本来ならイギリスの蒸留所に何ヶ月か滞在させてもらい、中に入って手を動かしながらジン造りのことを勉強しようと考えていたけれど、もしかしたらこれは日本の蒸留所を巡るチャンスなのかも、と思い直して。
ジンに欠かせない日本の植物のことも学びたいですし。


コロナで被ったダメージは確かに大きいけれど、バーテンダーにとっては自分の学びを深める期間なのかもしれません。


日本にもっとジンファンを増やすために自分になにができるのか、いまシーンにはなにが必要なのか。
常に思いを馳せながら、クラフトジンのために活動していきたいと思っています」

SHOP INFORMATION

Craft Gin Bar Copain
東京都豊島区上池袋1丁目8−1
TEL:080-7827-2134
URL:www.facebook.com/barcopain/

SPECIAL FEATURE特別取材