BARのハウスエールだってできる!
板橋で始まるクラフトシーンって?
<前編>

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TOKYO ALEWORKS by「TOKYO ALEWORKS」

かつて東海道の宿場町として栄えた板橋に、クラフトビールを中心としたコミュニティが育ちつつある。今月は、誰でもクラフトビールが作れるという施設「TOKYO ALEWORKS」をフィーチャー!

文:Ryoko Kuraishi

製造と品質管理のマネージャー、ボブ・ストックウェルさん。Photos Kenichi Katsukawa

和食とクラフトビールのペアリングが楽しめるブリューパブ、ウイスキーを試飲できるテイスティングルームなど、ビール、ワイン、ウイスキーにまつわる施設が集まる「板橋カスクビレッジ」。
まるでカスク(樽)のようにコミュニティに集う人と酒をじっくり熟成させたい、そんなコンセプトを掲げる複合商業施設である。


その「板橋カスクビレッジ」に新たに加わったのが、醸造体験ができるブリュワリー、「TOKYO ALEWORKS」だ。


クラフトビールの本場、アメリカでは飲み手がホームブリューイングに挑戦することで造り手となり、シーンを醸成してきたという背景がある。
ところがアメリカと違って自家醸造が許されていない日本では、飲み手と造り手の間には大きな壁がある。


一般の人でも気軽にオリジナルのクラフトビール造りを体験する、そうした自由かつクリエイティブな体験が飲み手と造り手をつなぎ、それがシーンの活性化をもたらすのではないか。


そう、「TOKYO ALEWAORKS」の意義を語るのは、この施設のチーフプロデューサーでありウイスキーのスペシャリストとして知られるジミー山内さんだ。

アメリカの最新機器を導入した醸造室内。

「『TOKYO ALEWAORKS』には専門知識を備えたブリュワーが常駐、プロ・アマ、個人・飲食店を問わず、キッチンスクールの感覚でホームブリューイングを楽しんでいただけます。


特に普段、キッチンに立って食事の準備をされている女性たちに、日常のワンシーンの延長線上でクラフトビール造りに挑戦してもらいたい。
クラフトビール造りというと特別な体験のように捉えられてしまうけれど、もっと気軽で肩肘の張らないないものなんだよ、と伝えたい。
そんな思いもあって、キッチンスクールのようなしつらいにしました」


「TOKYO ALEWAORKS」では個人なら最小20リットルから、飲食店では160リットルからの仕込みが可能である。
発酵の様子をスマホにてリアルタイムでモニタリングできるシステムなど、開業にあたってはアメリカから最先端の醸造機器を導入。
データやレシピをシステム管理することで再現性の高いオリジナルビール造りを目指すという。

アイランドキッチンに据え付けられたステンレスの煮沸釜。一度に3組の仕込みが可能。

製造と品質管理のマネジメントを行うのは「麦の酒」のスペシャリスト、ボブ・ストックウェルさん。スコットランドでは4箇所のモルトウイスキー蒸留所、日本ではいくつかのクラフトビール醸造所で働いた経験があり、豊富な知識とスキルには定評がある。


「ビール造りで大切なのは、まずは掃除。
『ビールは90パーセントが掃除、9パーセントが床のモップがけ、残りの1パーセントが仕込み』といわれるほど(笑)。


タンクはもちろん、ホットサイドと呼ばれる仕込みを行う場でも常にクリーンであることが求められます。
違うイーストや菌が混在すると、全く違うものができあがってしまいますからね。


次に気をつけたいのが発酵中の温度管理です。
面倒に聞こえるかもしれませんが、これもスマホで簡単にモニタリングできる時代です。
ここにある機器はアメリカのオームブリュワーの間ではごく一般的なもので、彼らは自宅ガレージにこんなシステムを組んでビール造りに励んでいます。


つまり、これだけでビールができるんですよ。
簡単でしょ?」(ボブさん)

コールドクラッシュを行なっているのは、このブリュワリーに常駐しているアドバイザーのランディさん。

7月からスタートする醸造体験は、隣接するブリューパブ「IBU」でのランチや体験後のクラフトビールの一杯などを組み込んだ、半日ほどのコンテンツになる予定だ。


体験内容には仕込みや発酵槽への移送はもちろん、掃除も組み込まれている。
地味ながらビール造りに欠かせないプロセスの体験が、ビール醸造の奥深さを知る第一歩なのである。


「僕自身、アメリカに帰った時にホームブリューイングを体験しています。
アメリカと比べると、日本はやっぱり造り手と飲み手の距離があって、飲み手は『おいしいものはプロにお任せしてしまおう』という意識が強いのかなって感じますね。


コツはあるにしろ、そこそこいいビールを造るのって実はそんなに難しくない。
それでも一度、ビール造りを体験してみると人が作ったビールのありがたさがわかる。
特に大手メーカーが造っているビールがどれだけ高い技術が必要とされるのか実感できると思います。
こうしたリスペクトの精神が、”いい飲み手”を作るのだと思うんです。


もっとおいしいものをという志を持って試行錯誤することって、とてもクリエイティブで有意義な時間ですよね。
そういう時間を仲間と共有できるうえ、自分が作り出したものをみんなにお披露目できるというのもホームブリューイングの醍醐味だと思いますね」

プロデューサーのジミー山内さん。現在は拠点を構えるサンタバーバラで全米のウイスキーおよびビール関連ビジネスに携わっている。 西海岸流のホームブリューイング文化を日本にも、そんなジミーさんの思いを叶えたのが「TOKYO ALEWORKS」なのだ。

個人や飲食店のハウスエール以外に、「TOKYO ALEWORKS」名義のクラフトビールもリリースされる。
まずは日本茶をテーマに、緑茶のGreen Tea IPA、ほうじ茶のRoasted Green Tea Stoutほか、季節に合わせた茶葉を使ったジャパニーズスタイルのクラフトビールが近日発売予定だ。


そのほか、大麦麦芽とホップの組み合わせに特化した「307 IPA」というシリーズも見逃せない。
ボブさんによれば、このシリーズはそれぞれのホップのキャラを際立たせたもので、飲み比べにピッタリなのだとか。
ホップの個性を知ることができ、これからビールを作ろうというブリュワーにも参考になるシリーズになりそうだ。


後編ではホームブリューイングの文化をさらに深めてくれそうな、クラフトビールのペアリング事情をご紹介しよう。


後編に続く。

SHOP INFORMATION

TOKYO ALEWORKS
東京都板橋区板橋1-8-4
板橋Cask Village 1階
TEL:03-3579-8587
URL:http://tokyoaleworks.com

SPECIAL FEATURE特別取材