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今月のバーテンダー

ハーブと漢方の和洋折衷、
知られざる薬酒の世界へ!
<前編>

桑江夢孝さん/「薬酒BAR」 HAREMUNE代表取締役

16.02.01

ずらりと並ぶ、薬酒の入ったガラス瓶。その数、実に100種! Photos by Kenichi Katsukawa

先日、神宮前にオープンした「Bar Street」。
テキーラにラム、ミクソロジー、日本の醸造酒と、さまざまなコンセプトのバーが飲み屋横丁のように連なる「Bar Street」で異彩を放つのが、薬酒を専門に扱う「薬酒BAR」だ。


薬酒とは、生薬をそのまま漬け込んだ酒のこと。
古来、アルコールは医薬品として使われていたが、酒の効用に生薬の薬効が加わることで単体以上のパワーを発揮すると言われている。
飲みにくい生薬が味わい深く、飲みやすくなる利点もあり、中国、西洋、そして日本で尊ばれてきた。


その薬酒に目をつけたのが、全国で「薬酒BAR」を展開する桑江夢孝さん。
薬酒を扱う専門バーを始めたのはいまから9年前のこと。
2006年、三軒茶屋の飲み屋街、通称「デルタ地帯」にひっそりとオープンした看板のないバーが始まりだった。
以来、高円寺、原宿、名古屋、柏と少しずつ店舗を増やし、現在はフランチャイズ店を含め13店舗を運営する。

Bar Streetの店舗では、はじめに問診票で自らの体調、オススメの薬酒を確認できる。

放送作家、アパレル企業の社長、ミュージシャンのプロモーションマネージャーと、さまざまな職種を経験してきた桑江さんが薬酒に目覚めたのは、当時付き合っていた彼女の病気がきっかけだった。
脳下垂体腫瘍という難病を抱えていた彼女に、なんとか健康を取り戻せないものか。
すがるような思いでたどり着いたのが、漢方や薬膳だった。


「手術を受けてみたものの、切除できなかったらしいんです。
本人はその状態を受け入れて腫瘍と共存して生きていくという考えでしたが、僕はまだ何かできることがあるんじゃないかって、あがきましたね」


西洋医学では手の打ちようがなかったことから、中医学を学び始めた。
大学の薬学部で開講されている漢方薬の基礎講座を手始めに海外でも学び、薬膳アドバイザー、予防医学指導士の資格も取得。
その女性と結婚した桑江さんは、薬草や漢方の知識で彼女の治療に取り組んだ。


「僕が行った治療というのは、つまり食生活の改善です。
現代病というのは乱れた食生活、運動不足、そしてストレス(意識)に起因しているんですよね。
中医学の知恵を取り入れた食生活と適度な運動を日常に取り入れ、根本的な体質改善を図ろうと考えたんです」

「FOR ENERGY」は紅茶風味のベースにオタネニンジン、ショウガ、ニクジュウ、サンヤク、桂皮を漬け込んだ。スパイシーな風味に甘みと酸味が豊かに絡む。トニックアップでいただく。1,000円。

西洋医学と中医学では、病へのアプローチの仕方に大きな違いがある。
西洋医学は痛みがあればその箇所を切る、もしくは痛みを麻痺させる対処療法が主となる。
一方、中医学は病気の原因を探り、根本から直していこうとする。


「『中医学の知恵を取り入れた食生活』といっても難しいことは何もなくて、戦前の日本人の食卓をお手本にするんです。
理想は、昔ながらの精進料理。
そこに中医学、漢方の考え方を取り入れます」


中医学では自然の恵みである食物には五つの味と性があるとされる。
それぞれ、内臓のどこに作用するのか体系化されている。
たとえば冬は腎が弱りるから、コンブやワカメなど鹹(かん)味で体を潤しつつ、ネギやニラなど体を温める食材を摂る。
そのように、食生活から「未病=病気にならない状態」を保とうというのが中医学のアプローチだ。


人間の体にある60兆個の細胞は、私たちが食べたものの栄養でできている。
つまり、何を摂るのか、あるいは摂らないかが、私たちの体を作っている。
桑江さんの持論である。
実際、こうした食生活の実践で、妻の腫瘍はぐんぐん良くなり、ついには二人の子どもまで授かった。
最終的には大きな腫瘍がすっかりなくなったというから、まさに奇跡。

日本古来の薬酒といえば、これ!マムシ酒もラインナップ。

「『奇跡』というと安っぽく聞こえるかもしれませんが、実際に起きたことだから『奇跡』というしかない。
でも、同じような境遇の人は少なからずいるわけで、こうした恩恵に俗した僕がやるべきことは、この力をたくさんの人に広めることだと思ったんです」


漢方や薬膳の考え方をベースにした食生活をいかに広めるか。
良薬口に苦しというけれど、いくら体に良くてもおいしくなくては続けられない。
おまけに薬草や漢方には独特のクセがあり、マズイ・苦いというイメージが定着している。


そこで思いついたのが、蒸留酒に漢方や薬草を漬け込んだ薬酒だった。
当時、桑江さんはお酒が苦手だったそうだが、社会人ともなると飲まざるを得ないこともある。
飲まなくてはいけない状況に陥るなら、どうせなら体にいいものを飲みたい……そんな気持ちもあった。


とくにお酒はアディクトするもの。
「アディクトする対象が体にいいものであれば、おのずと健康になるんじゃないか」、そんなことから薬酒専門のバーにやりがいを感じたという。
お世話になった自然治癒力研究所の先生からのアドバイスもあり、薬酒を使って「薬食同源」を広めていくことになる。


日本ではなかなかお目にかかれない薬酒専門のバーを、果たして桑江さんはどう広めていくのか。
後編をお楽しみに。


後編に続く。

Bar Information

薬酒BAR
 
渋谷区神宮前2-22-2 2階BAR STREET内
TEL:03-5775-6560
URL:http://yakusyu.net/

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