古くて新しいジントニックに
世界中がアイ・ラブ・ユー!
<前編>

PICK UPピックアップ

古くて新しいジントニックに
世界中がアイ・ラブ・ユー!
<前編>

#Pick up

三浦武明さん by「GOOD MEALS SHOP」

テキーラ、そしてラムに次ぐ一大ムーブメントを巻き起こしそうな、ジン。今月はスモールバッチのクラフトジンにフィーチャー。いまなぜ、ジンがアツいのか?ジンの伝道師が語ります!

文:Ryoko Kuraishi

スモールバッチでジンを生産するアルティザンたちの心意気に惚れ込み、40種以上のクラフトジンを扱う三浦さん。Photos by Tetsuya Yamamoto

「なるべくカラダに良いものを、できるだけ手作りで」、そんなコンセプトを掲げる渋谷・並木橋のレストラン「GOOD MEALS SHOP」。
“House-made、Handcraft、Small batch”にこだわったメニューは、ソースや調味料から手作りするナゲットにフラットブレッド、自家製のビーフジャーキー、アイスキャンディなどさまざま。


現在、そうしたグッドミールズに負けず劣らず注目を集めているのが、40種以上を誇るジンのラインナップ。
バーではないのに、スモールバッチのクラフトジンばかりを厳選している。


「GOOD MEALS SHOP」代表の三浦武明さんがジンに注目し始めたのは、今から10年近く前のこと。
当時、世界30カ国の料理とビールを味わえる「TOKYO FAMILY RESTAURANT」をオープンさせるべく、世界の食事情を探っていた。

三浦さんのおすすめは生のハチミツを浸した、バーモント州生まれのジン「BARR HILL GIN 」。ストレートで飲んでも、もちろんジントニックに仕立てても美味。ジントニック¥1,200

「『TOKYO FAMILY RESTAURANT』のオープンが2006年なんですが、2005年ごろから食のグローバリゼーションが進み、食文化が多様化しつつありました。
ロンドンやベルリン、ヘルシンキなど世界各地の大都市ではフードマイレージを見直し、地産地消を促す動きが生まれ、大都市以外でもフレンチやイタリアン以外のジャンルに注目が集まり、各国レストランが続々とオープンするなど、食にまつわる新しい価値観が育まれつつあったんです。
それまで、食のシーンはファストフードか高級レストランと二極化していたわけですが、その中間にあたる層が生まれてきた印象でした」


加えて、2010年代に突入するころからはあらためて「食の本質」が取りざたされるようになった。
世界に波及したリーマン・ショックは多くの人々に今までの生活や暮らしの根本のあるべき姿を問いかけ、従来の大量消費・大量生産型の暮らしに疑問を抱いた人々は、より本質的な生き方を求めるようになった。


「『食の本質』いうと大げさに聞こえるかもしれませんが、丁寧に作られたものを丁寧に調理し、家族や友人、親しい人と楽しく食卓を囲うもうよ、という一昔前なら当たり前の事柄です。
『本質』を求める風潮の中で、昔ながらの食の有り様にいま一度、注目が集まるようになりました。


そして食というシーンはとりわけ、そうした『時代の空気』に敏感です。
なかでもコーヒー、クラフトビール、ジンは、時代の流れをそのまま映し出すという点でとてもわかりやすい素材なんです」

2階は「センヌキ ビール スタンド」。クラフトビールを中心に、およそ30種のボトルビールをセレクトしている。店に置いてある栓抜きを使い、話題の角打ちスタイルで飲むことができる。

ファーストウェーブからサードウェーブまでの段階を経てスペシャリティコーヒーの概念が広まったことで、豆の流通の構造そのものが変わったコーヒー。
造られた土地の風土や文化をベースにしながらも、食のグローバリゼーションを受けて新しいスタイルを日々、生み出しているクラフトビール。
そして、小規模生産だとしても造り手の個性を色濃く反映できるクラフトジン。


「そもそもジンは、配合するボタニカルなどのレシピを変えることで、大手蒸溜所でなくても風味や味わいの特徴を出しやすいスピリッツ。
さらに、添加物や香料を加えないプレミアムトニックウォーターが流通するようになって、ジントニックの完成度が飛躍的にアップしました。


これまでトニックウォーターの風味がジンの香りを邪魔することが少なからずあったんですが、ジュニパーやそのほかカッシアやリコリス、コリアンダーなど、さまざまなボタニカルの繊細な香りや味わいが、よりクリアに楽しめるようになったのは大きかったですね」

こちらが噂の「クリスピーチキンナゲット」¥750。ディルマヨネーズ、ケチャップ、カレーソース、レモンヨーグルト、ハニーマスタードの5種のソースでいただく。ソースもすべて自家製!

プレミアムトニックウォーターを使ってジントニックを飲んでみたら、このスピリッツの奥深さにあらためて圧倒された。
「TOKYO FAMILY RESTAURANT」を運営しつつ、3年前からはケータリングやイベントなどでスモールバッチのジンや、クラフトメイドのスピリッツと天然素材のミキサーを組み合わせたカクテルを提供するようになった。


こうして、あちこちで好評を博すようになった「GOOD MEALS SHOP」のジントニックだが、そのルールは以下。
・  味がしぼんでしまうから、ジンは常温で保管する
・ その分、トニックウォーターはしっかり冷やす
・ 氷が泳がない程度に口の広いグラスを使う
・ 溶けにくい氷を使う
・ ステアは軽く
・ レモンもライムもなし。ジンに含まれるボタニカルの香りを味わってもらう

と、なんともシンプルだ。


「バーではなく、僕たちの店はレストラン。
方向性はあくまでも『日常使いのカジュアルな店』です。
だから、スピリッツに詳しい人たちの好奇心も受けとめつつも、初めてクラフトジンを飲む人に親切な店であり続けたいと思っています。


スモールバッチとかクラフトジンなんて言っていると、ついついマニアックになりがちですが、僕たちの存在価値は『入り口を作る』ことだと思う。
ですから、そういったディープな世界をもっと知りたいという方には、僕の大好きな『トラム』や『ベンフィデック』など、専門のバーをご紹介しています」

クラフトジンのワークショップやイベントに、講師あるいはスピーカーとして招かれることも。

「むしろ、ジントニックというメジャーなカクテルをニッチな素材でおいしく仕立てることに意義があると思うんです」と三浦さん。


「TOKYO FAMILY RESTAURANT」では30カ国以上の本格的な各国料理を扱いながらもあえて「ファミレス」を名乗った。
本格的なジンのラインナップを揃えながらも、ここはあくまで「グッドミールズ」の店。
生活圏にあって近所の人がふらっと来られる、日常使いの店がいい。


世界中から集めた最新のクラフトジン、手抜きなしのレシピで作られた料理。
自分たちが心からお薦めしたいこだわりのものを用意しつつ、訪れる人のためにはカジュアルな店構えで、かつ間口は大きくとっておきたいのだ。


後編では、そんな三浦さんが考える「個人商店」のありかたと価値観をご紹介する。

SHOP INFORMATION

GOOD MEALS SHOP
東京都渋谷区東1-25-5 2F/3F
TEL:03-6805-1893(3F)
URL:http://flyingcircus.jp/info-gms/

SPECIAL FEATURE特別取材