「ディアジオ ワールドクラス2012」
どりぷら編集部もリオ・デ・ジャネイロへ。

SPECIAL FEATURE特別取材

「ディアジオ ワールドクラス2012」
どりぷら編集部もリオ・デ・ジャネイロへ。
[vol.03] - 日本大会総責任者、
西海枝毅氏にインタビュー!

15.08.2012 #Special Feature

文:Drink Planet編集部

西海枝 毅(サイカチ ツヨシ) 写真右/1993年にキリンビール(当時)入社。2002年よりスピリッツやリキュールのマーケティングを行い、Diageo社からアジア・パシフィック地域での業績を認められ“アジアン・ヒーロー”という賞を獲得。現在は、キリン・ディアジオ社のシニアブランドアンバサダー兼リザーブブランドシニアブランドマネージャー。同時に2010年より「ディアジオ ワールドクラス」の日本大会総責任者を務める。

西海枝 毅(サイカチ ツヨシ) 写真右/1993年にキリンビール(当時)入社。2002年よりスピリッツやリキュールのマーケティングを行い、Diageo社からアジア・パシフィック地域での業績を認められ“アジアン・ヒーロー”という賞を獲得。現在は、キリン・ディアジオ社のシニアブランドアンバサダー兼リザーブブランドシニアブランドマネージャー。同時に2010年より「ディアジオ ワールドクラス」の日本大会総責任者を務める。

オーストラリア代表のティム・フィリップス氏が優勝を飾り、華々しく幕を閉じた「ディアジオ ワールドクラス2012」世界大会。

リオまで飛んだどりぷら編集部が気になったのは、2009年から始まったこのビッグイベントが、どのような変遷を遂げ、どこに向かおうとしているのか。

そこで2010年から大会運営に携わり、おそらく日本で最も深くこの大会にコミットしているであろう日本大会総責任者の西海枝毅氏に話を聞くことにした。

ワールドクラスを通して垣間見える、世界のカクテルトレンドやバーシーンの最新動向とは?


Q まず西海枝さんご自身の、ワールドクラスとの関わりからお話しいただけますでしょうか?

ワールドクラス自体は2009年からスタートしました。ロンドン、アテネ、ニューデリー、そして今回のリオ・デ・ジャネイロで4回目。私が日本大会総責任者としてワールドクラスに関わりはじめたのは、2010年の日本大会からとなります。私自身、アテネで行われた世界大会をはじめて生で目にして、心の底から感動と衝撃を受けました。少し大袈裟かもしれませんが、カルチャーショックといってもいいかもしれません。

Q 具体的にどのような部分に感銘を受けたのでしょうか?

世界中から参加するトップバーテンダーたちのスキルやホスピタリティーはもちろんですが、最も強く感じたのは日本のバーテンディングの潜在能力です。その時ファイナリストとして戦われた渡邉匠さんの活躍も然ることながら、世界と比較することで、日本のスゴさを改めて感じさせられました。そして、日本大会の仕組みを今以上に整えていけば、日本にも勝てるチャンスがあると確信しました。

Q その後、日本大会の総責任者として、どのような取り組みをされたのでしょうか?

選手であるバーテンダーの方々には負担をかけてしまって申し訳ないのですが、日本での予選としてセミナーやオリエンテーションを徹底的に行い、ブランドや大会への理解を深めてもらいました。また日本の最終実技審査では世界大会と同様のチャレンジを設け、世界で勝つための道筋づくりをしたつもりです。ワールドクラスの参加国は約50ヵ国ありますが、日本ほど徹底した予選をやっている国はないと思います。

Q その結果、2011年大会では大竹学さんが見事に優勝を果たしました。


とてもうれしかったです! もちろんご本人の努力があってこそ最高の名誉を勝ち取ったんだと思います。大竹さんは、日本のバーテンディングの素晴らしさをビシッと世界に示してくれました。

2011年チャンピオンの大竹学氏も、昨年の優勝以降、海外のイベントなどに引っ張りだこ。今回のリオでも世界各国からのメディアインタビューを受けていた。写真はメディア向けにカクテルレクチャーを実施しているシーン。

2011年チャンピオンの大竹学氏も、昨年の優勝以降、海外のイベントなどに引っ張りだこ。今回のリオでも世界各国からのメディアインタビューを受けていた。写真はメディア向けにカクテルレクチャーを実施しているシーン。

Q 少し話は戻りますが、そもそもワールドクラスを行う意義とはなんでしょうか?

ご存じのように、コンセプトは「Raising The Bar」、バーを通してお酒の楽しさを広めることです。そのための2つの狙いがあります。1つは、日本のバーテンダーの皆さまに、このワールドクラスを通じて、日本にはない世界の情報やトレンド、プレゼンテーションなどを知ってもらいたい。と同時に、日本が持つ素晴らしいバーテンディングを世界に広めてもらいたい、と考えています。

2つ目は、Diageo社が保有するリザーブブランドの世界観を好きになってもらいたいと考えています。なぜタンカレーNo.Tenなのか、なぜシロックを使うのか……、ブランドがもつ奥深いストーリーを理解すればするほど、より付加価値の高いカクテルを創りあげる手助けにもなり、お客さまにもプレゼンテーションを通して説明できる“きっかけ”の一つになると思います。それも「Raising The Bar」に必ず繋がっていくと信じています。

誤解しないでいただきたいのですが、私がブランド側の人間だからこういうことを言っている訳ではありません。ここ数年の活動を通して、「Raising The Bar」を実践するには、ブランドを理解することが必要不可欠だと痛感したのです。

Q そんななか行われた2012年のリオ・デ・ジャネイロ大会。西海枝さんから見て、今大会はどのように映りましたか?

選手がお客さまである審判に対して創作したカクテルの説明をする時には、味わいの説明やカクテルの歴史だけではなくブランドのストーリーもしっかり活用し、プレゼンテーション力を高めていました。また、海外のバーテンダーの方はブランドへの理解が深く、同時にそこにあるストーリーを語るプレゼンテーションが素晴らしかったです。これは日々お客さまに対して行っている仕事の賜物だろうと思います。

そして、改めて思ったのが、引き続き日本においても「Rasing The Bar」の浸透に力をいれることで、さらなるバーカルチャーの底上げのお手伝いが少しでもできればと思いました。

毎晩夕方からオープンする「タンカレーバー」。

毎晩夕方からオープンする「タンカレーバー」。

Q 世界が注目するジャパニーズ・バーテンディングというトレンドは目立ちましたか?

昨年大竹さんが優勝したことでますます注目を浴びていました。海外の方々はどりぷらの動画を見て研究しているみたいですよ(笑)。3ピースシェイカーや3段振りなどは普通に取り入れていました。ただし、上位にきた方々は結局、自分のオリジナリティーを追及していましたね。

ジャパニーズ・バーテンディングということでいうと、今後ますますグローバル化が進み、日本の道具やスキルは世界基準のひとつになってくるだろうと思います。その時にこそ、日本のバーテンダーに本当のクリエイティビティが求められるはずです。個人的に「日本のおもてなし」は大きな武器になると考えています。日本が長年培ってきた「おもてなし」の文化は、道具やスキルのように外国人がyou tubeを見て真似できるものではありませんし、なによりゲストに感動を与えることができます。そういう意味で、私自身も「おもてなし」ということを改めて勉強し直しているところです。

Q その他、今大会で目立った傾向はございましたか?

奇抜なアイデアや派手なパフォーマンスを伴うカクテルが減り、“シンプルかつ創造性が高い”カクテルが目立ちましたね。なかなか言葉では言い表すのが難しいのですが、見た目はシンプルながら、そこに必ず“驚き”や“意外性”、ひいては“感動”があるカクテルが高い評価を受けていました。“シンプルかつ創造性が高い”カクテルをつくるには、味の構成についてのロジック、ベースとなるブランドへの理解などを深めながら、日々カウンターで実践していくことが大切になってくると思います。

左上/昨年よりDrink Planetも注目していたUAE「Bar Zuma」のジミー・バラット氏。総合2位。 左下/ジミー・バラット氏のシグネチャーカクテル「Zacapa Cola」。 ロンサカパ23に、サカパと砂糖、アンゴスチュラ・ビターズ、ビターズ、クローヴ、ペドロ・ヒメネス、ヴァニラ・ビーンズをリダクションしたものを加えてシェイク。右上/「Gentleman’s Secret」の本。 右下/スペイン「Ohla Boutique Bar」のグイゼペペ・サンタマリア氏による、とてもポエティックなシグニチャーカクテル「Gentleman’s Secret」。ジョニーウォ-カーブルーラベル、洋梨リキュール、ペドロ・ヒメネス、ラベンダービターズをステア。

左上/昨年よりDrink Planetも注目していたUAE「Bar Zuma」のジミー・バラット氏。総合2位。 左下/ジミー・バラット氏のシグネチャーカクテル「Zacapa Cola」。 ロンサカパ23に、サカパと砂糖、アンゴスチュラ・ビターズ、ビターズ、クローヴ、ペドロ・ヒメネス、ヴァニラ・ビーンズをリダクションしたものを加えてシェイク。右上/「Gentleman’s Secret」の本。 右下/スペイン「Ohla Boutique Bar」のグイゼペペ・サンタマリア氏による、とてもポエティックなシグニチャーカクテル「Gentleman’s Secret」。ジョニーウォ-カーブルーラベル、洋梨リキュール、ペドロ・ヒメネス、ラベンダービターズをステア。

Q 大会とは少し離れてしまいますが、西海枝さんは出張や視察などで世界各国のバーをご覧になっていることと思います。世界のバーシーンについて、個人的に感じることはございますか?

アジアのレベルが急速に上がってきているのを感じます。今大会もカエ・イン氏が総合第3位になりましたが、特に台湾のバーシーンは盛り上がっていますね。台湾のバーテンダーの方々は日本のバーテンディングを相当研究しているようです。その一方で、みな英語のレベルが高く、オープンマインド。日本人が苦手とするコミュニケーション能力が素晴らしいんです。その背景には、台湾のバーシーンが熱い、ということがあります。「Raising The Bar」という意味で参考になります。

それと中国、特に上海が注目です。まだ西洋や日本の真似をしている状態ですが、海外から優秀で野心のあるバーテンダーが集まってきています。と同時に、中国人のバーテンダーも育ってきているようです。近い将来、世界屈指のバーシティーになるはずです。今から注目しておきたいですね。

Q 次回も日本大会の総責任者として大会の指揮をとられると思うのですが、今後についてお聞かせください。

日本から世界大会に出場できるのは毎年1人のみですが、日本大会に参加するだけでもバーテンダーの方々にとって必ず成長があると思うんです。このワールドクラスの雰囲気を、1人でも多くの方に体感してもらう。そのことが「Raising The Bar」に繋がってくる。主催者側としては、そんな大会運営を目指しています。ですから、来年も1人でも多くのバーテンダーの方に参加していただきたいですね。

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