シリーズ連載/英国ドリンク事情

SPECIAL FEATURE特別取材

シリーズ連載/英国ドリンク事情
[vol.09] - 「英国ジン・テイスティングイベント」
日本未発売の8つのジン蒸溜所が登場!

23.12.2019 #Special Feature

文:Drink Planet編集部

英国4地域(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)のクラフトジンが集合。

英国4地域(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)のクラフトジンが集合。

2019年12月12日(木)、東京・青山にある「The House of Aston Martin Aoyama」において、駐日英国大使館 国際通商部の主催による「英国ジン・テイスティングイベント」が開催されました。

といっても、単なるジンのイベントではありません。

この日披露されたのは、英国4地域(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)から集められた、日本市場未参入のクラフトジンのみ。

また英国ジンを紹介するプレゼンターとして登壇したのは、日本におけるクラフトジンの第一人者である三浦武明さん。

「ジンフェスティバル 東京」のオーガナイザーとしても有名ですね。

(2014年にDrink Planetが三浦さんを取材した時の記事はこちら

プレゼンターとして登壇した三浦武明さん。

プレゼンターとして登壇した三浦武明さん。

英国は今、ジン・ルネサンスの時代!

さて、ほんの十数年前には15軒だった英国のジン蒸溜所は、現在では300軒を超え、今なお増え続けています。

しかもお馴染みのイングランドやスコットランドはもちろん、ウェールズや北アイルランドといったこれまでジンとはあまり縁がなかった地域にまで波及しているんだとか。

2018年時点で2,360億円とされる英国のジン消費量(2018 WSTA調べ)は、2020年には4,300億円にまで拡大すると予測されています(ザ・スピリッツ・ビジネス 2018予測)。

そう、英国は今、ジン・ルネサンスを迎えているのです。

三浦さんは、現代の英国ジンの特長をこんなふうに説明してくれました。

「英国ジンは、クリアなベーススピリッツの骨格をルート系のスパイスで下支えすることで、それぞれのボタニカルの味わいをしっかりと感じさせてくれるのが特長です。ジントニックにした時に、トニックを味わうスペースを空けている点も特長の1つです。ですからトニックで割っても、ボタニカルが際立ちます。ユニークなボタニカルやその組み合わせの面白さが消費者に受け入れられ、近年のムーブメントに繋がっているのではないでしょうか」

また英国ではクラフトジンの流行を背景に、ジン・ツーリズムが盛り上がりを見せているとのこと。

それぞれの蒸溜所は見学ツアーや試飲スペース、レストランなどを用意して、ビジターの受け入れに積極的な取り組みを行っているそうです。

地元のシェフや農家などと組んで、ジンと料理のペアリングや民泊イベントなども開催されています。

「ジンが一般の方にここまで受け入れられているところも、世界のジンカルチャーを牽引する英国ならではの現象かもしれません」

まずはウェールズ、続いては北アイルランド!

では、ここからはお待ちかねの日本未発売の英国クラフトジンを紹介していきましょう。

トップバッターは、ウェールズにある「アバフォールズ蒸溜所(Aber Falls Distillery)」。

こちらは2種類のラインナップがあって、1つが「スモール・バッチ・ジン(Small Batch Gin)」、もう1つが「ウェルシュ・ドライ・ジン(Welsh Dry Gin)」です。

「スモール・バッチ・ジン」は古代ケルト人の宗教ドルイド教時代にインスパイアされたジンで、当時ローアンベリー(Rowanberry)を発酵させたものを飲んでいた歴史があったことから、ボタニカルにナナカマド属のローアンベリーを使用しています。

ほんのり甘い印象ですが、飲み口はあくまでドライです。

三浦さん曰く「ボタニカルにベリー系のフルーツを使用するのは、新しい流れ」とのこと。

一方「ウェルシュ・ドライ・ジン」は蒸溜所の名前となったアバフォールズ滝と同じ水脈のウェールズ産天然水を使用した、柑橘が印象的なドライ・ジンです。

次にご紹介するのは、北アイルランドの「コープランド蒸溜所(Copeland Distillery)」で生産されている「コープランド・アイリッシュ・ジン(Copeland Irish Gin)」。

ボタニカルにアカマツ(Pine Needles)を使用しているため、重厚でオイリー、さらには少し苦味のある印象です。

さらに地元素材としてハマカンザシ(Sea Pink Maratima)も使われています。

オレンジピールはあえてフレッシュなものを蒸溜前に浸漬させているため、オレンジもしっかりと感じさせ、それがアカマツとハマカンザシをつなぐ役割をしています。

このジンは北アイルランドのコープランド島でつくられているのですが、いかにも北アイルランドの海を感じさせるジンと言えるでしょう。

続いても北アイルランドから。

「ストロー・エステイト・スピリッツ・カンパニー(Strawhill Estate Spirits Company)」が手がける「ジャカード・ジン(Jacquard Gin)」です。

銘柄の名前となっているジャカードは、ジャカード織りのこと。

蒸溜所がある村は19世紀にジャカード織りによるリネンの名産地として栄えた場所で、蒸溜所はリネンの工場跡地に建てられています。

そのため、リネンづくりのためのアマニ油をボタニカルとして使用し、軽めでスッキリ、そして驚くほどスムースな飲み心地を実現させています。

スコットランドのジンは個性派ぞろい!

ウェールズ、北アイルランドに続いてはスコットランドです。

2017年創業の「クラフティ蒸溜所(Crafty Distillery)」が手がける「ヒルズ&ハーバー・ジン(Hills & Harbour Gin)」は、地元の人の意見を聞き入れ、さらには地元の人を巻き込んでつくられているジン。

三浦さんは「飲み手と作り手が近いのもクラフトジンの面白さ」と語ります。

例えば、地元で採取されたモミの木(Noble Fire Needles)や海藻(Bladderwrack Seaweed)をボタニカルとして使用。

ジュニパーをはじめとする典型的なボタニカルにプラスして、いわゆる五味を形成するエッセンスとして、甘味にはドライマンゴー、酸味にはオレンジピール、苦味にはモミの木、塩味と旨味には海藻、といった具合に、かなり攻めた味の設計を行っています。

さらには最近話題の花椒(Green Szechuan Berry)もアクセントとして使っているのだとか。

一方、スペイサイドにある「グレンリンズ蒸溜所(Glenrinnes Distillery)」の「エイト・ランズ・オーガニック・スペイサイド・ジン(Eight Lands Organic Speyside Gin)」は、ベーススピリッツの小麦をはじめボタニカルも完全オーガニック。

加えて蒸溜からボトリングまでを家族経営で行っているので、当然少量生産。

オーガニック、サステイナブル、ローカル、少量生産、ジン・ツーリズムなどを意識した、新しいタイプの蒸溜所だそうです。

スコットランドはもはやウイスキーだけにあらず。

その蒸溜の歴史や伝統をベースにした、新しい(しかも個性派の)ジンカルチャーが育っているようです。

「英国ジン・テイスティングイベント」に登場した日本未発売のクラフトジン。

「英国ジン・テイスティングイベント」に登場した日本未発売のクラフトジン。

ロンドンのみならず、イングランドの辺境のジンも!

最後はイングランドの3つの蒸溜所をご紹介しましょう。

1つ目はロンドンの架線下にある小さな蒸溜所、その名も「ロンドン蒸溜所(The London Distillery)」。

こちらでは「ドッズ・オーガニック・ジン(Dodd’s Organic Gin)」と「キュー・オーガニック・ジン(KEW Organic Gin)」を手がけています。

「ドッズ・オーガニック・ジン」はロンドン産のハチミツを使用し、味わいやテクスチャーにほのかなハニーっぽさを感じさせます。

ラズベリーリーフ(Red Raspberry Leaf)などの繊細なボタニカル類は、別で蒸溜してエッセンスを抽出し、それを後からブレンドしているそうです。

「キュー・オーガニック・ジン(KEW Organic Gin)」は、前回紹介した「マザーズ・ルーイン」創業者のベッキーさんもお勧めしていた、王立植物園「キュー・ガーデン」とのコラボレーションジン。

すべてのボタニカルとは言えませんが、例えばパッションフラワーはこの世界遺産の王立植物園で採取されたものを使っているのだそうです。

「キュー・ガーデン」のお土産としても人気急上昇です。

2つ目は同じイングランドでも南西端に位置するコーンウォール地方の「コルウィズ・ファーム蒸溜所(Colwith Farm Distillery)」。

こちらはイングランド南西部初の蒸溜所とのことです。

しかも5代続く農家が経営しています。

こちらでつくられるFarm to Bottleの「スタッフォード・コーニッシュ・ドライ・ジン(Stafford’s Cornish Dry Gin)」は、ベース由来のジャガイモの穀物感や力強さを感じさせてくれます。

素朴ながらもじんわりと奥深い味わいは、英国の他のエリアとは異なる独自の文化を育んできたコーンウォール地方のジンならではかもしれません。

3つ目は、いわゆるフレイバード・ジンのつくり手として知られるヨークシャー州の「スピリット・オブ・ハロゲート社(Spirit of Harrogate)」。

同社の「スリングスビー・グースベリー・ジン(Slingsby Gooseberry Gin)」や「スリングスビー・ルバーブ・ジン(Slingsby Rhubarb Gin)」は、いずれも敷地内の庭園で採れた24種類のボタニカルを使用した、いわばGarden to Bottleのジン。

グースベリーもルバーブもヨークシャー州の名物なんだそうです。

それにしても、今回紹介したどのジンも美味しいのはもちろん、個性があり、こだわりがあり、ストーリーがありますね。

プレゼンターの三浦さんは、今回のイベントをこう締めくくってくれました。

「本日紹介したジンは、単にクラフトジンというより“ご当地ジン”と呼んだほうがふさわしいかもしれません。それくらい、それぞれの土地の歴史や文化に深くコミットしています。こうしたジンづくりを可能にするのは、英国という国の多様性と懐の深さがあってこそだと思います」


Aber Falls Distillery(Small Butch gin,Welsh dry gin )
Copeland Distillery(Copeland Irish gin)
Strawhill Estate Spirits Company (Jacquard Gin)
Crafty Distillery (Hills & Harbour)
Eight Lands (Organic Speyside Gin)
The London Distillery Company(Dodd's, KEW)
Colwith Farm Distillery(Stafford's Cornish dry gin)
Spirit of Harrogate(Slingby)



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vol.3 天王洲のデッキプロムナードはジン一色に!

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