シリーズ連載/英国ドリンク事情

SPECIAL FEATURE特別取材

シリーズ連載/英国ドリンク事情
[vol.02] - 英国産ウイスキーとモダンハイボール。

#Special Feature

文:Drink Planet編集部

「TOKYO Whisky Library」のヘッドバーテンダー、小田健吾さん。Photos by Yoshitatsu Ebisawa

「TOKYO Whisky Library」のヘッドバーテンダー、小田健吾さん。Photos by Yoshitatsu Ebisawa

なぜスコッチウイスキーが選ばれるのか?

英国のスピリッツ&ビバレッジ事情を、10回に渡ってお届けする特別連載シリーズ。

初回のモダンマティーニに続く第2回のテーマは「モダンハイボール」です。

日本では老若男女を問わずウイスキーの飲み方として定番のハイボールですが、日本から逆輸出的に飛び火するカタチで、海外でもハイボールが人気になりつつあるようです。

しかも、スコッチウイスキーを使って、ちょっと贅沢にアップグレードするのが密かなトレンド。

そこで常時1,200銘柄以上、約1,300本ものウイスキーをストックする「TOKYO Whisky Library」のヘッドバーテンダー小田健吾さんに、ハイボールや英国産ウイスキーについて話を聞くとともに、英国産ウイスキーを使ってモダンハイボールをつくってもらいました。

英国産ウイスキーをはじめ、日本最大級のウイスキーの品揃えを誇る「TOKYO Whisky Library」。

英国産ウイスキーをはじめ、日本最大級のウイスキーの品揃えを誇る「TOKYO Whisky Library」。

「TOKYO Whisky Library」では1,200種類以上を揃えるウイスキーのうち、70~80%が英国産ウイスキーだと言います。

もちろん北アイルランド産やウェールズ産のものもありますが、そのほとんどがスコットランド産、つまりはスコッチウイスキーです。

小田さんはこんな風に説明してくれました。

「アメリカン、カナディアン、アイリッシュ、ジャパニーズを含めて、世界の5大ウイスキーとされていますが、ここ日本でも世界的にも、やはりスコッチウイスキーの人気は圧倒的です。販売量においても、クオリティ(味)においても、ブランド力という意味においても、です」

英国国際通商省の発表によれば、現在スコットランドで操業中のウイスキー蒸溜所の数は128。

これらの蒸溜所から世界175のマーケットに向けて、計算上毎秒41本のスコッチウイスキーが輸出され、その数は年間12億本にも上ります。

と同時に、今もスコットランド各地のウェアハウス(熟成庫)では、2,000万樽ものスコッチウイスキーが出荷の時を待ちわびて眠っているのです。

「TOKYO Whisky Library」で人気No.1の「フリーザー シトラス ハイボール」。

「TOKYO Whisky Library」で人気No.1の「フリーザー シトラス ハイボール」。

ハイボールが世界的なブームに!?

さて「TOKYO Whisky Library」で人気No.1のドリンクは、スコットランドのスペイサイドを代表するシングルモルト「ザ・グレンリベット12年」を使用した「フリーザー シトラス ハイボール」とのこと。

(なんと1カ月に500杯も出るそう!)

これはお湯を使って丁寧にワックスを落としたレモンの皮を、贅沢にも「ザ・グレンリベット12年」のボトルにそのまま24時間漬け込んで冷凍保存したウイスキーがベースです。

レモンの皮のエグ味が出ないように、あえて冷凍保存しているんだとか。

それにしても「ザ・グレンリベット12年」をハイボールにするなんて、少しもったいないのでは?

「ストレートやトワイスアップ(ウイスキーと水を1:1で)以外の飲み方は邪道、ということはありません。またハイボールは庶民に愛される大衆的なドリンクであると同時に、日本を代表する歴としたカクテルのひとつです。ハイボールにすることで、より引き立つウイスキーの個性やフレーバーもあるんですよ」

小田さんによると、バーテンディングコンペティションの課題にハイボールが採用されたり、生活意識が高いアメリカのミレニアム世代にハイボールが支持されたりと、世界的にハイボールに追い風が吹いているそうです。

その要因は、ウェルネス(健康)志向、ほどよいアルコール度数、ブームである日本食に合う、味わいとしてのドライ志向などが挙げられます。

「自家製ウイスキー梅酒」を使ったハイボールは外国人ゲストに人気!

「自家製ウイスキー梅酒」を使ったハイボールは外国人ゲストに人気!

それゆえ「TOKYO Whisky Library」を訪れる外国人ゲストにもハイボールの人気は高く、特に期間限定でメニューに載せている「自家製ウイスキー梅酒ハイボール」がよく出るそうです。

(今年の仕込み分は夏頃にはなくなってしまうかも!)

こちらも「ザ・グレンリベット12年」に、梅酒をつくる要領で青梅を漬け込み、一年ほど熟成させた「自家製ウイスキー梅酒」がベースとなります。

「単純に梅酒のホワイトリカーを『ザ・グレンリベット12年』に代えて、梅酒自体をアップグレードさせました。モダンハイボールと言うと少し大袈裟かもしれませんが、ハイボールはシンプルなレシピなぶん、さまざまなアレンジが考えられます」

例えば「ザ・グレンリベット」のようなスペイサイド特有の華やかさがあるウイスキーにはレモンピールや梅、「マッカラン」のようなシェリー樽を効かせたタイプにはベリー系、「グレンモーレンジ」のようなバーボン樽を効かせたタイプにはパイナップルや熟したリンゴ、といった具合です。

いずれにせよ、良質なスコッチウイスキーがベースとして下支えするからこそ、こうしたモダンなツイストも可能になるのだそうです。

山椒のやさしい刺激がたまらない「エレクトリカル ハイボール」。

山椒のやさしい刺激がたまらない「エレクトリカル ハイボール」。

スコッチウイスキーはバーテンダーの強い味方。

最後にもうひとつ「エレクトリカル ハイボール」を紹介しましょう。

「TOKYO Whisky Library」では常時5~8種類のハイボールをオンメニューしているのですが、こちらは夏のシーズンに向けた新作。

定番ブレンデッドウイスキー「デュワーズ」のハイボールに、日本の伝統スパイスである山椒を粗くグラインドしてふりかけたものです。

山椒の実は刺激的なアクセントとなりながらも、その繊細な香りでウイスキー自体の香味や自然な甘味を軽やかに引き立てます。

なんとも上品な和食が食べたくなるような味わいです。

「最近では珍しい地域のウイスキーや、個性を全面に打ち出した新機軸のウイスキーも多く出回るようになりましたが、結局ウイスキー好きはスコッチウイスキーに戻ってくるのではないでしょうか。やはり歴史があり、蒸溜や熟成のスキルがあり、ブランド力があり、それを支える造り手の情熱がある。我々バーテンダーにとって、安定して良質な味わいを提供してくれるスコッチウイスキーは強い味方です」

最後に小田さんはこんな言葉も付け加えてくれました。

「日本を代表するカクテルであるハイボール人気を受けて、外国の方の間では徐々にレモンサワーも認知されつつあります。来シーズンあたりは、スコッチウイスキーでアップグレードさせた『ウイスキーレモンサワー』なんていうアプローチも新鮮かもしれません」


★TOKYO Whisky Library
東京都港区南青山5-5-24 南青山サンタキアラ教会2階
☎03-6434-1163
http://tokyo-whisky-library.com

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