食前酒には「アペロール」が定番!!
北イタリア・アペリティーヴォ事情。

SPECIAL FEATURE特別取材

食前酒には「アペロール」が定番!!
北イタリア・アペリティーヴォ事情。
[vol.01] - 前編 from PADOVA

25.07.2011 #Special Feature

文:Miki Tanaka(ミラノ在住)

アペリティーヴォとは? スプリッツとは?

日本ではあまり馴染みがないかもしれないが、イタリアにはアペリティーヴォ(食前酒)の習慣が伝統的に存在している。

平均的なディナーの時間が日本より全体的に1~2時間ほど後ろ倒しになっているという違いもあるせいか、イタリアでは食事の前に軽く一杯飲んでちょっとしたものをつまむというのが日常的なスタイルだ。

そんな時に飲むアペリティーヴォの代表的存在のひとつがスプリッツ。

「アペロール」か「カンパリ」に白ワインあるいは発泡性ワインを加えてソーダで割るというシンプルなレシピで作られる軽いドリンクで、北イタリア、特にヴェネト地方では、“食前酒=スプリッツ”といっても過言ではないほど。

そこで今回は特に日本でも人気急上昇中のリキュール、「アペロール」をベースに作られるスプリッツに焦点をあてて、北イタリアのアペリティーヴォ事情を探る旅に出ることに。

食前酒には「アペロール」が定番!!北イタリア・アペリティーヴォ事情。

アペリティーヴォの代名詞「アペロール」誕生秘話。

まずは「アペロール」発祥の地であるパドヴァへ向かう。

それどころか「アペロール」や「カンパリ」のようなリキュールを入れた現在のような形のスプリッツが生まれたのもパドヴァだといわれている。

「スプリッツ自体は1800年代よりオーストリアにあった、ワインにソーダを入れた『スプリッツァー』に起源を発しているんだ。当時オーストリアがヴェネト州を支配下に置いていたことで、この飲み物もヴェネトに伝わったといわれているよ」

そう蘊蓄を語ってくれたのは、パドヴァのバール協会会長のフェデリコ氏。

食前酒には「アペロール」が定番!!北イタリア・アペリティーヴォ事情。 「一方、『アペロール』の誕生は、パドヴァの中心にあるフルッタ広場とエルバ広場で開かれている青空市で、売れ残って劣化したオレンジを袋に入れて絞っていた果汁がそもそもの始まり。甘いジュースなので寝る前に子供たちにあげるとよく眠るといって重宝されていたんだけど、実はよく眠るのは果汁が発酵してお酒になっていたというわけ(笑)。これが『アペロール』の起源だといわれているよ。パドヴァ人が酒飲みなのは、祖先たちが子供のころからお酒を飲まされていたせいかな(笑)」と続ける。

さて、「アペロール」が商品として正式に誕生したのは、

1919年にシルヴィオ&ルイージ・バルビエリ兄弟がパドヴァで行われた国際展示会で発表したのが始まりだった。

シルヴィオがフランスを旅した際、フランス語でアペリティーヴォを意味する“アペロ”という言葉からの連想で「アペロール」と命名したのだとか。

これがイタリアで最初のアペリティーヴォ用のリキュールとなった。

戦後50年代にまず「アペロール」の大ブームが押し寄せ、90年代ごろにはさらに若者層へ大きく人気が広がる第2のブームが訪れたという。

そして現在はアペリティーヴォの代名詞といわれるトップブランドとなったという訳だ。

食前酒には「アペロール」が定番!!北イタリア・アペリティーヴォ事情。

その発祥の地であるパドヴァでは、見事にバールの大部分の客たちがアペロールスプリッツを飲んでいた。

有名な大学があり、2万人のパドヴァ市民に対して3万人近い学生や大学関係者が住んでいるといわれるこの街では、バールでも若者たちが主導権を握っている模様。

どのバールを覗いても、少なくても4、5人以上のグループで集う若者たちがメイン層を占めている。

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人気の3軒で「アペロール」はどう飲まれているのか?

今年1月にオープンしたばかりで、若者たちを中心に大人気のエノテカレストラン「エノターヴォラ・ピノ」のオーナー、ピノ氏はこう語る。

「スプリッツをオーダーするお客様は朝の10時から夜中まで(笑)。毎日60~100杯のスプリッツがでますが、パドヴァはアペロール発祥の地だけにカンパリよりアペロール入りのほうがよく出ますね。当店では『スプリッツ・ノストロ』というアペロール+ワイン+ソーダにプントエメスというトリノのアマーロを混ぜたオリジナルレシピもお薦めです」

「パドヴァは若者が多いせいか、アペロールスプリッツのつまみはちゃんとしたおつまみ的なものより、軽いスナック類などが多いのですが、当店では生魚やチーズの盛り合わせなどもお薦めしています」

食前酒には「アペロール」が定番!!北イタリア・アペリティーヴォ事情。

一方、田舎風のアットホームな雰囲気で若者に人気の「イル・ゴッティーノ」のオーナー、パオロ氏とルカ氏はこう話す。

「スプリッツはアペリティーヴォというイメージが強いですが、実際のところは深夜までオーダーはありますよ。内訳はカンパリ派30%、アペロール70%という感じ。若者、女性、または初心者にはアペロールのほうが甘くて飲みやすいのでウケているようです。でも当店では本来のレシピにグレープフルーツジュースを加えた『ポンペルマウス』というレシピもあり、甘すぎないテイストを好む人に人気ですね」

とはいえ、もちろんパドヴァは若者だけの街ではない。

今年創立180年を迎える有名老舗バール「ペドロッキ」を覗けば、一人で飲みに訪れるエレガントな老紳士や、おしゃべりに花を咲かせる年配のご婦人たちもたくさん。

食前酒には「アペロール」が定番!!北イタリア・アペリティーヴォ事情。 バーテンダーのマウリツィオ氏は言う。

「イタリア人にとってアペリティーヴォとは皆が集まる大事な時間。そして我々パドヴァ人にとってそんな時になくてはならないものがアペロールスプリッツです。17歳の若者から90歳のおじいちゃんまで、みんなが当たり前のように飲むものなんです(※イタリアでは16歳から飲酒が認められている)。当店で1日にサーブするカクテルうちの80%はアペロールスプリッツですよ」

「当店ではオリジナルバージョンと同時にライム4切れをモヒートのような要領で軽く潰し、ワインとアペロールを加えてソーダで割った『スプリットスペシャル』もお薦めです。私はオリーブと一緒に飲むのが個人的に好きですね。パドヴァのスプリッツにはオレンジスライスと一緒にオリーブを入れているところが多いのではないでしょうか? 
これはヴェネチアではあまり見られないことなのではないかと思います」

さすがに発祥の地といわれるだけに、パドヴァ人たちにとってのアペロールスプリッツは、まさに生活の一部なのだというのがひしひしと感じられた。

そんなことを考えながらふと視線をあげると、バールの外にたむろする若者がみんなオレンジ色の液体のグラスを片手にしているのが目に入った。

食前酒には「アペロール」が定番!!北イタリア・アペリティーヴォ事情。

Bar Information

     
ENOTAVOLA PINO エノターヴォラ・ピノ
Via Dell’Arco 37 Padova
049-8762385
http://www.enotavola.com
IL GOTTINO イル・ゴッティーノ
Via delle Piazze16 Padova
348-4271900
http://www.enotecailgottino.it
PEDROCCHI ペドロッキ
Via Ⅷ Febraio15 Padova
049-8781231
http://www.caffepedrocchi.it

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