PICK UPピックアップ
どりぷらが注目する若手バーテンダー!Vol.2
スパイスとカレーを追求する「mement mori」の六川晃輔さん。
<後編>
#Pick up
Rokukawa Kousuke/六川晃輔 by「memento mori」
Q 六川さんがこだわって追求しているカクテルの素材はなんですか?
個人的に勉強しているのがスパイスです。特にカレーが好きで、カレー仲間である青森の久保さんとは食べ歩きをご一緒することも。
カレー好きバーテンダー、多いですよね。カレーにはスパイスの調合が欠かせませんが、その調合というプロセスがカクテルメイキングに通じるのかもしれません。
カレー作りは、2020年の緊急事態宣言時に自炊するようになったことをきっかけにハマりました。
現在はお店でもカレーを出しています。自分らしいと思うのは、スパイスを使ったカレーのようなカクテルと、スパイス×カカオのカレー。
カカオはカカオパルプ、パウダー、チョコレートと、それぞれ使い方を変えてカレーに取り入れています。もちろん、カレーをイメージしたスパイスカクテルも。
六川さんの3種盛りカレー。牛すじブラックカレー、スパイシーチキンカレー、サバキーマカレーに、付け合わせとしてアマゾンカカオとナスのアチャール、カカオビネガーのピクルスを添えた。
カレーではないですが、うちらしいスパイスカクテルといえば、「麻辣チョコレートマティーニ」。
イメージソースは、CACAO HUNTERの小方(真弓)さんにお勧めされた、シンガポールの麻辣チョコレートです。
ベースは自家製のホアジャオジンと、おいしい麻婆を買って蒸留した麻婆ジン。チョコレートと合わせるとスパイシーな麻辣がアクセントになったチョコレートマティーニになるんです。
カレーのレシピをあれこれ考えているおかげで、いろいろな素材をカクテルに応用できるようになりました。
たとえばサバ。サマソニから考えたのが、サバの水煮を蒸留した自家製サバジンの「サバーソニック」です。サマソニのようなフェスでごくごく飲んでいただきたい、爽やかなサバカクテル(笑)。
「麻辣チョコレートマティーニ」に使った自家製ホアジャオジン(左)と麻婆ジン。
サバの臭みを消すためにアブサンを加えていますが、サバとアブサンの相性はサバキーマカレーのレシピで実証済み。
あ、でも社長には『うちはこういう店じゃないから!』と言われたのでここでは出せません……。
もう一つ、いま面白いと思って研究しているのがハーブです。うちはカカオをテーマにしていますが、ボタニカルも広く扱っている関係で変わったハーブも手に入るんです。
それをカレーに転用したり、カクテルに仕立ててデザートとのペアリングコースに提供したりしています。
こちらが「麻辣チョコレートマティーニ」。ピリリとした花椒の辛味と麻婆の香り、ニュアンスがコクのあるチョコレートとぴったり。こちらのベースが、まさか麻婆を蒸留したジンとは……。
Q 未来のバーシーンを見据えてどんな店作りをしていきたいと思いますか?
世間では若い人たちのアルコール離れが指摘されていますが、うちではそれを感じたことはありません。
男性は確かに昔より飲まなくなっているのかもしれませんが、むしろ若い女性たちがよく飲みます。
そういう意味では、「男性は飲まなくてはいけない」とか、「女性がたくさん飲むのははずかしい」とか、そういう既成概念の押し付けから自由になっているのではないでしょうか。
男性とか女性とか年齢とか、そういうジャンルにくくられることなく、それぞれが自分らしいスタイルでお酒やバーと向き合える、そういう時代なんじゃないかと思っています。
そんな時代に求められるのは、バー慣れしていない人でも気軽に足を運べる、バー文化の入り口のような店だと思っています。
うちはまさにそういう店づくりを行なっていて、コーヒーやデザートといったメニューもそうですが、社長以外のスタッフはみな20代を揃えており若い人たちが集まりやすい店づくりをしています。
こういう場所が増えていけば、気軽に足を運ぶ店としてバーが選択肢に入っていくのではないでしょうか。
ここでバーを体験された方が階段を登っていくようにステップアップしていったら、また次の世代の方たちがここに入ってくる。そういう存在になれるといいなと思っています。
カクテルのインスピレーションはデザートの世界に求めることが多い。特に参考になるというのがこちらの3冊。「ペアリングコースのカクテルを考えるときの参考にもなります」。
Q 六川さんが目標とするバーテンダー像を教えてください。
お客さまそれぞれの状況やコンディションを察知してその方に寄り添ったサービスを提供できるバーテンダーが目標です。
自分が好きなバーには、そういう“ザ・接客のプロフェッショナル”というようなバーテンダーがいらっしゃいます。
じっくりカクテルを味わいたいのか、誰かとカジュアルに会話を楽しみたいのか、グループで楽しみたいのか、バーの雰囲気を楽しみたいのか。
お客さまのその日、その時のコンディションを察知して居心地のいい空気づくりを行えるようになりたいですね。
そしていろいろな素材を扱い、さまざまな文化やスタイルを取り入れ発信できるようなバーテンダーになりたい。
あそこにいけば何か新しい体験ができるよ、そう言っていただけるような。
だから海外も行きたいし、地方のバー巡りにも行きたい、いろいろな素材を勉強したい。いくら時間があっても足りないんです。
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