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注目は、女の子がいる本格バー。
<後編>

PICK UPピックアップ

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#Pick up

Moriito Kazuhiko/森糸一彦 by「SHELTER」

希少なボトルを含む500種超のウイスキーを揃える大森「SHELTER」。代表の森糸さんのマニアックな嗜好は、オリジナルのスパイスカクテルからも伺える。スパイス、蒸留と発酵……はたして、そのキーワードとは。

文:Ryoko Kuraishi 撮影:Kenichi Katsukawa

森糸さんらしいチャイカクテル「サンスクリット」¥1,200。裏テーマはイギリスとインド。両国それぞれのアイデンティティを物語るシンボリックな素材を使い、絶妙なバランスで仕立てた。「サンスクリット」は古代インド語で「正しく構成された」を意味する。

500種のウイスキー、100種のアブサン、150種のジンほか、「SHELTER」各店ではフードメニューにも手間ひまかけた料理が並ぶ。

たとえば、自家製のビーフジャーキー。

国産牛をオリジナルのソミュール液に漬け込み、半日かけてじっくり乾燥させてジャーキーに仕立てたものだ。

同業者から「うちにも卸してほしい!」というラブコールが絶えない人気メニューで、現在は2店舗で提供しているが、どちらの店舗でもオーダー率No.1だとか。


土曜日に提供している本格的なインドカレーは、ホールもパウダースパイスも毎週、大久保の専門店に買い出しに行って仕込んでいる。

香りが飛んでしまうからフレッシュなものしか使わないという熱の入れようだ。

数年前からスパイスに魅了され、”スパイス友だち”の久保俊彦さん(ark Lounge&Bar)とともにカレー専門店をはしごして食べ比べるうち、いつしか自分でもスパイス料理を作るようになった。

仕込みに時間がかかるので土曜のみの提供だが、週替りで内容を変えて振る舞っている。

メイン、副菜ともに3、4種でサーブしている。プレートの中は左上から時計回りに、5種類の豆を使った宮廷のダル「パンチメルキダル」、西インドのミートボールカレー、「ムガリ・リザ・クフタ」、白胡椒を効かせた骨付きチキンカレー、「モハンマース」、ベンガルの大海老の「マライカレー」。付け合せは、ネパール料理のワサビのサーグ、ナスのタルカリ。西インドのニンジンと青唐辛子の副菜「カジャーカ・アチャール」。

大阪からインドへ。森糸さんがたどったスパイスの道。

「はじめは“大阪スパイスカレー”の影響を受けてスパイスカレーを作っていましたが、そこからインドに行き着いて、スパイスへの考え方が変わりました。

基本であるインドのスパイス使いを勉強して、いまではインドの東西南北各エリアのスパイス料理を作り分けています」

広大なインドではエリアによって宗教も気候も食習慣も異なることから、使われるスパイスも好まれる食材もがらりと変わる。

スパイスを学ぶなかで、そうした風土の違いを感じられるようになった。


たとえばこの日のカレーは、インド東部と西部のミックススタイルで。

ベンガル地方(東)に欠かせないイエローマスタード、クミンシード、コリアンダーシードをふんだんに使った一品と、ムガール帝国の宮廷料理をひと皿でミックス。

副菜には、森糸さんが個人的に大好きなネパールの副菜をチョイスした。

こちらは「メスカルラッシー」¥1,500。ガールズバーなのになぜか女性客も多いという「SHELTER」で女性からの支持が高い、飲みやすいカクテル。

スパイスをふんだんに使った、インドがテーマのカクテル。

合わせるカクテルは……?

「おすすめはVORTICEを使ったメスカルソニック。トニックはFarr Brothersのシトラストニックウォーターがいい。

カルダモンとメースの香り立ちがスパイス料理に合うんです。

メルカスとラッシーを合わせたメスカルラッシーもいいですね」


自家製ラッシーは、お気に入りのヨーグルト(森糸さんは雪印の「恵」一択)と牛乳、てんさい糖とフレッシュレモンジュースを合わせてミキサーでブレンド。

メスカルラッシーはこれに、ハイビスカス茶をインフューズドしたメスカルと季節のフレッシュフルーツ(今回はザクロ)を潰して合わせ、シェイクする。


よりスパイス感を感じさせるカクテルを、と紹介してもらったのが、チャイカクテルの「サンスクリット」。

サイレントプールに自家製カカオマサラチャイとホールのシナモンを合わせ、ディサローノベルベットをアクセントに効かせる。

自家製カカオマサラチャイはCTCの茶葉(粒状の茶葉で、短時間でしっかりとした味わいの紅茶を淹れられる)にカカオマスを合わせてミルで粉砕し、スパイスと一緒に牛乳で煮込んだもの。

サイレントプールのどこかミルキーなニュアンスをスパイシーなチャイが強調する、というワケ。

オリジナルクラフトジン(氣水)「ラビット47」。サルの代わりにウサギを主役にしたラベルも自作。第三弾は久保さんへのオマージュということで、ウサギを若干、ふくよかに(下に置いたラベル)。八戸産カシスは、フレッシュ、ドライ、コンポートをそれぞれ作り、別途蒸留して合わせている。

オリジナルクラフトジン(氣水)を作ってみた。

そんな森糸さんがここ数年、ドはまりしているのが蒸留だ。

蒸留が好きで自分でクラフトジン(氣水)を試作しては、店でモニタリングしているという。

「モンキー47」にインスパイアされ、“葉巻に合わせるジン”というコンセプトで作り上げたオリジナルクラフトジンは、その名も「ラビット47」。

第一弾、第二弾のベースはコーヒー豆とカカオ、さまざまな柑橘類。それらをベースに、最終的に47種以上のボタニカルをブレンドした。

近日完成予定のVol.3は八戸の久保さんにオマージュを捧げるレシピで、八戸のカシスとスパイスを活かすレシピになっているそう。


そんな“蒸留”道をより深く極めようと思ったきっかけが、デンマークの「エンピリカル」だった。

「エンピリカル」は、ご存知、「noma」出身のラース・ウィリアムズとマーク・エミル・ハマンセンが作り上げたスピリッツだ。

「エンピリカル」を飲んで絶望し、一時期は蒸留をやめようかとさえ思ったほどだったが……。

左が森糸さんの教科書、『ノーマの発酵ガイド』。右が、衝撃を受けた「エンピリカル」。

「nomaの本を読んで、蒸留のベースに発酵の知識があれがさらに面白くなると実感し、これがさらなるモチベーションになりました。

モチベーションとしては、昨年発売された北條さんが監修したジン『BRONCO 20』にも感銘を受けましたね。

ものすごくマニアックに造られていて、スパイス感とシトラスノートがパワフルで、フィニッシュはビター。

一杯でずっしりとした飲み応えがあって、これからのクラフトジンはますます面白くなると予感させてくれました」


自分もそんなクラフトジンを造ってみたい、と森糸さん。発酵&蒸留をさらに勉強しつつ、10周年を迎える今年はメタバースまで導入(!!)しようとしているそう。

バー、バニーガール、蒸留、そしてメタバースと、さまざまなエッセンスを取り入れて現代的に融合させる「SHELTER」。

こうしたあり方が、これからの時代のバーのベンチマークの一つになるのかもしれない。

SHOP INFORMATION

SHELTER
東京都大田区大森北1-3-9 春日ビル2F
TEL: 03-5493-3331
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SPECIAL FEATURE特別取材