クラフトはどこに向かう?
ジン・シーンのいまとこれからを考えた。
<後編>

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三浦武明さん by「ジンフェスティバル東京運営事務局」

今月はジン・スペシャル!後編には、2回目の開催を来月に控えた「ジンフェスティバル東京」主宰の三浦武明さんが登場。現在のクラフト・シーンの動向は?

文:Ryoko Kuraishi

アジア最大のジンの祭典となった、昨年の「ジンフェスティバル東京」から。実に157銘柄が勢ぞろい!

昨年初開催された「ジンフェスティバル東京」は、157種ものジンが一堂に会しテイスティングできる!というジンの祭典で、2日間で5,000人ものジン愛好家を集めた。


第2回の開催を6月8、9日に控え、ジンフェスを主宰する三浦武明さんはジンの本場イギリスで、2週間に渡り蒸留所を巡った。


現在のイギリスのジン・シーンの面白さを、三浦さんは「自分の生まれ育った街に蒸留所が次々にできていて、ご当地愛をジンで感じられるところ」と考えている。
イギリスでは現在、300以上ものジンの蒸留所が稼働しているが、ご当地ジンのような形で一気に裾野を広げるようになったのはここ5年ほどのことだ。


「飲み手と造り手の関係が近いことがクラフトの楽しさの一つですが、蒸留所の数が増えたことで心理的な距離だけでなく物理的な距離感も縮まった。
地元に蒸留所があるということで、ジンはさらに身近なスピリッツになっています」と三浦さん。


今回の旅で実感したのは、地方都市でジン・ツーリズムが盛り上がっている、ということだった。

ロンドンの外れ、EARLSFIELDという街で訪れたBEN'S CANTEENというローカルな蒸溜所兼ジン・バー。「オーナーがインスタでメッセージをくれたので訪ねてみたら、『EARLSFIELDS FIRST GIN FESTIVAL』を開催中だったとか。「造り手と飲み手の距離の近さやご当地愛、 直売や実際に会いに行ける楽しさを感じられたという部分で、とりわけ印象に残っているワンシーンです」。

「例えば、地方食材を使った絶景レストランを隣接する蒸留所もありました。


『造り手に会える・現場を見学できる』というクラフトの楽しさに、さらに食や観光の要素が結びついて、ジンの蒸留所ツアーは旅のコンテンツとしてしっかり定着していました。


これは蒸留所の数が増えてきて、ツアーとして成立するようになったという背景があります。
日本では酒蔵巡りがポピュラーですが、今後、ジンの蒸留所が各地にできてきたらジン・ツーリズムが発展していく可能性もありますよね」


イギリスのジン・ムーブメントはここ10年ほどのことだが、こと日本では3年ほど前からシーンが活発になった、と三浦さん。
例えば、焼酎メーカーや酒造メーカーからジン造りの相談を受けるようになったのもその頃からだ。
同時期に海外のジンの造り手からの問い合わせも増え始めた。
クラフトジンならではの広がりと”繋がれる”魅力を確信、ジンフェス構想を練りはじめたという。

「ジンフェスティバル東京」のコンセプト、”We're all connected by juniper”のフラッグを掲げるイギリスの造り手。

四季折々のボタニカルと世界屈指の蒸留技術、おいしい軟水という好条件に恵まれた日本は、世界を席巻するジンを生み出す可能性を秘めている。


そんな確信のもと、多くの蒸留所にジン造りを薦めたそう。
当初、焼酎の造り手や酒屋にとって洋酒のハードルは三浦さんが思っている以上に高かったようだ。


「日本酒の味わいの評価には『水のような』という表現がありますが、つまり和酒の特徴として根っこ系のハーブのベースノートは時にノイズに感じられるようなんです。
例えばロンドンドライジンのベースノートにある、苦みの先の、タンニンのような味わいはあまり好まれない。


でも、クラフト・ジンなら、あまりドライではない、ベースノートが柔らかい味わいも少なくない。
だからむしろ、ジンは洋酒と和種の架け橋になれると思ったんです」

今年は、倉庫型のイベントホール=B&C HALLをメイン会場に、21カ国・200銘柄以上のジンが集結!初お披露目のジンも登場予定とか。

そうした新しいジン・カルチャーの芽吹きを、これまでジンに触れてこなかった人にも伝えたい。
ジンの魅力と”繋がる”楽しさを発信し、日本のジンと酒カルチャーの発展に貢献したいと立ち上げたのが、「ジンフェスティバル東京」だ。


B to BよりB to C、造り手やインポーターを主役に据え、自分たちが扱うジンの魅力を来場者に直接、語りかけてもらう手法も、ジンの性格にマッチしていたように思う。


昨年と同じコンセプトを掲げる2回目は、規模もコンテンツもさらにパワーアップ。
ジンに興味がない人にも足を運んでもらいたいから入場無料のコンセプトはそのまま、会場では65社から200銘柄のテイスティングが可能に。


さらに、「ALL ABOUT UK GIN」と名付けたエキシビションを開催する予定だ。
こちらでは国産ジンではなく、世界中のクラフト・ジンの原点であるロンドンドライジンを改めてフィーチャーする。


「その土地のアイデンティティを閉じ込めている点がクラフト・ジンの魅力であり、そこが評価されて世界中で造られるようになったわけですが、その多様性はロンドンドライジンがあってこそ。
だから改めてロンドンドライジンをおさらいする時期だと思ったんです。
このジン・ムーブメントを息の長いものにするためにも、ジンの本場へのリスペクトを示したいと思って」

「ジンフェスティバル東京」では様々なスタイルでジンを自由に味わえるほか、無料セミナーやスペシャルコンテンツなども開催。

一方で、三浦さんが手がけるジン専門店「GOOD MEALS SHOP」も移転に伴い大幅にリニューアル予定だ。


「自分にとってのローカルは東京ですから、都市だからこそ可能な発信をしていきたいと考えています。


まずはマイクロディスティラリーを備えたショップをオープンさせたい。
念願のオリジナル・ジンのリリースはもちろん、『ジンフェスティバル東京』同様、”繋がる”をテーマに、都内はもちろん日本中の方と一緒にジン造りを行うプロジェクトをスタートします。


そしていずれは本場ロンドンへ!
ロンドンでジャパニーズ・ジン・ウィークを開催し、ヨーロッパに、そして世界に日本のジンの魅力を広めることが今後の目標です」


裾野がますます広がりつつある現在のジン・シーン。
それぞれの仕掛け人たちの今後の動向にご注目あれ。

ジンフェスティバル東京運営事務局
東京都渋谷区東1-3-1 カミニート20 TOKYO FAMILY RESTAURANT内
TEL:非公開
URL:https://www.ginfest.tokyo

SPECIAL FEATURE特別取材