目指せ、海外出店!
新時代のバーテンダーが挑む道。
<後編>

PICK UPピックアップ

目指せ、海外出店!
新時代のバーテンダーが挑む道。
<後編>

#Pick up

清崎雄二郎さん by「Bar LIBRE DaNang」

成熟している日本のバー・シーンに比べ、まだまだ若くて成長段階にあるというダナンのバー・シーン。そこに魅力を感じたという「Bar LIBRE Danang」清崎雄二朗さんが、海外展開の面白さを語ります!

文:Ryoko Kuraishi

毎月満月の夜、ランタン祭りが行われる世界遺産の街、ホイアン。ダナンから車でおよそ20分でアクセスできる。

地元のバーテンダーたちと協力して、ダナンに新しいバーカルチャーを築くべく勢力的に活動している清崎さん。
リゾート地としての開発が進むこの場所で、一体どのようにカクテル文化を根付かせるのか。


「ベトナム人はお酒好きですが、手に取るのはビールばかり。
ビール以外の選択肢としても、カクテルを選ぶ人はまだまだ少ないのが現状です。


現在、ダナンの店で人気があるのは圧倒的にジャパニーズウイスキー。
バックバーに日本のラベルがずらりと並んでいる様子が受けるようです。
スタンダードカクテルもアピールしていますが、まだまだこれからですね。


僕たちがここでやっているのは、ビール党の彼らにカクテルの魅力を提案すること。
ですから色やデコレーションなど、ワインやビールでは表現できない作り込みで勝負しています」


そういって目せてもらったメニューには、カラフルで人目を引くあしらいのカクテルが並ぶ。

色とりどりのフルーツが通年で手に入るのも南国・ダナンの魅力、と清崎さん。

「それと同時に、地元のバーテンダーたちとの情報共有も積極的に行っています。
例えば日本のバーツール。
オープンにあたり、バーツールはほとんどのものを日本から持ち込んだのですが、これが逆に現地の若いバーテンダーたちにとても喜ばれた。


そこで、彼らに道具の使い方を教えたり、ミクソロジーの新しい機材をここで触ってもらったりしています。
新しいカクテルブックもしかり、こういう道具がバーテンダー同士のコミュニケーションを促すのです。
こうしたことをきっかけにバーテンダーのコミュニティができていけば面白いですよね」

清崎さんの右腕であり、「Bar LIBRE DaNang」でマネージャーを務める久保直己さん。立ち上げから携わり、ベトナム語も少し話せるようになったという。

そんな土地柄で清崎さんが新たに挑戦しようと思っているのが、コミュニティスクールだ。

「店舗のためにビル一棟を丸ごと借りているのですが、現状は1階しか使っていません。
いずれは空いている3階のスペースを活用してバーテンダー・スクールをやれたらいいなと考えています。


バーテンダーを目指す地元の人向けに、バースキルやカクテルの知識、サービスに加え、日本語を学べる場を提供します。
ここから巣立ったバーテンダーに働き口を紹介するシステムも作っていけば、彼らのモチベーションにもなりますよね。
若い彼らのやる気を促すことが、ダナンのバー・シーンの底上げに通じると考えています」


もちろん、いずれはインターシップも‥‥と、清崎さんの夢は膨らむ。


「現状ではベトナム人を東京に呼び寄せることはビザの問題があって難しいのですが、その分、日本人バーテンダーを積極的にダナンに招きたい。
うちの池袋のスタッフも3ヶ月周期で日本とダナンを行き来していますが、それがお互いの刺激になっているようです」

「Bar LIBRE DaNang」のメニューから一部を抜粋。南国ならではのカクテルがずらり。

それでは海外進出にあたり、清崎さんからのアドバイスを。

「大前提として、まずは信頼できる現地のパートナーを見つけること。
パートナーがいなければ店を開けることはできませんから。
そのためには一つ一つの出会いを大事にすることですね。
『一期一会』といいますが、良いパートナーとの出会いはそれに尽きます。


次に、観光で訪れた街の印象を基に出店のプランニングはしないこと。
海外展開はリサーチが命です。
しっかりとした情報源から正確で詳しい情報を得てからのプランニングをお勧めします。


それから言葉の問題もありますね。
国やエリアによりますが、英語なりその国の言語なり、コミュニケーションを図る強力な武器となる言葉は、身につけておくが勝ち。
土地の言葉を話すだけで状況が一変することもあります。
語学は早めに準備を始めておくのがいいでしょう」

左はベトナムのフルーツ、ミルクフルーツと自家製カモミールシロップを使った「Milky Blossom」、右はティーリキュールとベリー、クランベリーを合わせた「Super PANDA」。各150,000ドン(約717円)。

最後にバーテンディングについて。


「多くの日本人バーテンダーは世界基準のスキルとホスピタリティを備えているので、それをそのまま持っていけばいのですが、さらに加えるとしたら『表現力』でしょうか。


このカクテルはどういうものなのか、どういう意図で製作したのか。
自分やカクテルをきちんと表現するというのは、コンペはもちろん、海外での営業にも通じる大切な能力だと思います。
世界を見据えるなら表現力を磨いておくこともお勧めしたいですね」


さて、新年早々をダナンで過ごした清崎さん、今年の上半期はゲストバーテンダーとしてフィリピンや北京などアジアを中心に精力的に回る予定だ。


「店舗があるとついつい守備的な営業になってしまいがちですが、今は外に出ていくことに喜びと伸びしろを見出しています。
シンガポールや台湾など、すでにバー・シーンが完成している街も、フィリピンのようにこれからの街も、それぞれが刺激的でためになることがたくさん。
あらゆることを吸収してダナンに持っていき、それを地元の若いバーテンダーたちへフィードバックしていきたいですね」


この時代だからこそ可能になった、自由で軽やかな選択肢。
その先に新時代のバーテンダーの新しいライフスタイルがあるのかもしれない。

SHOP INFORMATION

Bar LIBRE DaNang
25 Quang Trung, Da Nang
TEL:0120 325 7732
URL:https://www.facebook.com/barlibredanang/

SPECIAL FEATURE特別取材