PICK UPピックアップ
コーヒー×スピリッツ、
最強のコーヒーカクテルを探せ!
<前編>
#Pick up
大渕修一さん by「Mixology Bar Source 2102」
コーヒー豆をまるでフルーツのようにディスプレイ。フレッシュなコーヒー、フルーツを扱っているから、「全面禁煙」という業界に類を見ないスタイルを採用した。Photos by Kenichi Katsukawa
コーヒーにスピリッツなどを加えて作る、コーヒーカクテル。
そんなコーヒーカクテルに特化し、その味わい、アイデア、プレゼンテーションを競おうというのが「ワールド コーヒー イン グッド スピリッツ チャンピオンシップ」である。
ヨーロッパはもちろん、中南米やオーストラリアから各国代表が参加して腕を競うこの大会に、2013年から日本も参加。
この「ジャパン コーヒー イン グッド スピリッツ チャンピオンシップ」にて’13年、そして今年と2回の優勝を成し遂げているのが「Mixology Bar SOURCE 2102」店主の大渕修一さんである。
「ホテル関係の学校に通っていた時、ダイニングバーで始めたアルバイトが、お酒と触れ合うようになったきっかけ。
バーテンダーもカッコよかったし、お酒を取り巻く世界そのものに魅了されたんです。
それで卒業後の進路をホテルではなく、飲食業に変更しました」
バーながら本格的なエスプレッソマシンを備える。「エスプレッソは濃度が高いと言っても、そもそもの液体量が少ないのでカフェインの摂取量はドリップコーヒーの一杯より少ないです」。というわけで、宵っ張りのバー・ホッパーにもおすすめだとか。
就職したのは青山のレストラン。
大渕さんはそこのドリンク部門に配属になった。
「ここのバーには本格的なエスプレッソマシンがあって、バーにいる僕たちバーテンダーはカクテルを作りつつ、コーヒーも淹れていたんです。
いまやっていることの原点ですね」
その後、イタリアン・スタイルのカフェの新規オープンに伴い、出向という形で1年間、バリスタ修行をみっちり行うことになる。
日本ではバーテンダーとバリスタは全く異なるフィールドで語られがちだが、ヨーロッパではいささか事情が変わってくる。
たとえば、「バー」はイタリア語で「バール」という。
バリスタ(Barista)=「バール(Bar)の人(ista)」、つまりバリスタがお酒もコーヒーも提供する。
実際、ヨーロッパのバールではアイリッシュコーヒーが定番メニューだ。
コーヒーにアルコールを加える文化は、日本よりもはるかに浸透している。
「自分が大好きなコーヒーとアルコールは、一本の線でつながっている。
その距離をもっと近づけたい」
コーヒーを勉強したことで、そんな思いを抱くようになった。
スペシャルティコーヒーの酸味を生かし、甘めのブッシュミルズで仕立てた「アイリッシュウィスキー」¥1,500。信頼できるロースターと相談し、焙煎の段階からこだわる特別のコーヒーと、シェリー樽による甘い個性が特長的なブラックブッシュのペアリング。さらに、その甘さを引き立てるためにシェリーを使った自家製シロップで味を整える。
転機が訪れたのは’12年のこと。
大渕さんはさらにカクテルを極めるべくレストランを退職し、西麻布のバー「アンバー」に入店していた。
かつてコーヒーのいろはを教えてくれた先輩バリスタが、新たに始まる「ジャパン コーヒー イン グッド スピリッツ チャンピオンシップ」のデモンストレーション大会に推薦してくれたのだ。
「コーヒーカクテルの大会ができるらしい、という話は以前から聞いていましたが、まさに絶妙のタイミングで、自分がいままでやってきたことをフィーチャーする大会が生まれたんです」
デモンストレーション大会に参加したのは、二人のバリスタに大渕さんの計3名。
それぞれジャッジの推薦により出場が決まったのだが、「ミクソロジーをやっていたし、バリスタにミクソロジーのバーテンダーをあてたらおもしろいんじゃないかって、推薦してもらったみたい」と当時を振り返る。
「コーヒー イン グッド スピリッツ チャンピオンシップ」では、8分間の競技時間内で合計4杯のカクテルを作成する。
大会規定のドリンクであるアイリッシュコーヒーを2杯、さらにコーヒーを使ったシグネチャーカクテルが2杯。
バーテンダー向けの多くの競技会とは異なり、パフォーマンス中にプレゼンテーションを行い、コーヒーと使用したアルコールのペアリングのツボを紹介しなくてはならない。
今年の「ジャパン コーヒー イン グッド スピリッツ チャンピオンシップ」ファイナルの様子。(写真提供:一般社団法人日本スペシャルティコーヒー協会)
「バリスタはコーヒーの抽出技術やプレゼン能力に優れていますし、
バーテンダーはアルコールの幅広い知識に加え、所作の美しさという強みもあります。
今年の日本大会のファイナルは超有名バリスタが勢ぞろいでしたが、バーテンダーもバリスタもそれぞれが自分の持ち味を発揮しつつ、プラスアルファの要素を兼ね備えた人が優勝できる大会だと思います」
大渕さんにとって、参加するだけでも得られるものがあるというこの大会。
バーテンダーとバリスタの交流は、互いにとって大きな刺激になるからだ。
「日本ではコーヒーとアルコールのペアリングの認知度はまだまだ低いですが、だからこそそこには未来があると思うんです。
バーテンダーもバリスタと積極的に交流してほしいですし、『ジャパン コーヒー イン グッド スピリッツ チャンピオンシップ』にもぜひ、挑戦してほしい。
実際、僕が大会に出るようになったことでバリスタがミクソロジーの世界に興味を持つようになり、ミクソロジーバーに足を運ぶようになった、ということもあるようです。
コーヒーとアルコールがもっと近づけば、さらに奥深いペアリングが広がると思うから」
アイルランド西部の港町、フォインズ水上飛行場の待合室で生まれたといわれるアイリッッシュコーヒー。体の芯まで冷え切った乗客のために考案されたのは、心底から温まる一杯だった。アルコールランプを灯し、ウイスキーを入れたグラスをフランベ。この一手間に胸が高鳴る。
いよいよ今月、「ワールド コーヒー イン グッド スピリッツ チャンピオンシップ」の大舞台を控える大渕さん。
「今回は、『コーヒーの生産処理方法に対するスピリッツの選択』というテーマで世界大会に臨もうと思っています。
簡単にいうとナチュラルのコーヒーにはブラウンスピリッツを、ウォッシュトのコーヒーにはホワイトスピリッツを合わせることを前提に、それはなぜか?ということをプレゼン予定です」
大渕さんのチャレンジに乞うご期待!
後編へ続く。
SHOP INFORMATION
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