PICK UPピックアップ
日本橋の夜を彩る、
美しき女性バーテンダー。
<前編>
#Pick up
栗原幸代さん by「マンダリンバー」
摩天楼のはるか向こうに富士山が。冬ならではのお楽しみの一つだ。Photos Tetsuya Yamamoto
吹き抜けにあしらった巨大な窓からは素晴らしい眺望、雪を抱いた富士山をも望める。
ここ、マンダリンバーは2005年12月にオープンしたマンダリン オリエンタル 東京の、37階に位置するメインバーだ。
和の伝統建築を思わせる土壁にモダンなシルバーの格子をあしらった壁面、
カツラの古木にガラスを配したテーブル、店内の壁面は黒檀でまとめられており、
モダンな和のしつらえが印象的だ。
広東料理「センス」とモダンフレンチのレストラン「シグネチャー」、2つのダイニングの間に位置するバーは、
食事の前にアペリティフなどを楽しむゲストたちでいつも賑わっている。
5周年を記念して、各年に人気を博したオリジナルカクテルを「アニバーサリーカクテル」として再リリース中。
和洋折衷の空間に華を添えるのは、所作も美しい女性バーテンダーたち。
そう、ここのバーテンダーは、チーフバ−テンダーを始め全てが女性なのだ。
チーフバーテンダー栗原幸代さんはホテルのバーでキャリアを積んだ、職人肌のバーテンダー。
多彩なオリジナルカクテルを手がけており、中でも代表作「グローリアス マティーニ」は2000年の「ジャーディン W&S カクテルコンペティション」タンカレー部門で見事、優勝を果たしたという逸品。
昨春、オープン5周年を記念してリリースされたマンダリンバーのオリジナルカクテル「Nihonbashi」も彼女の手によるものだとか。
「Nihonbashi」は「粋を信条としならがも上品さを失わない大店の若旦那」をイメージしたそうで、
ウォッカをベースにゆずリキュールやグレープフルーツジュースをあわせた爽やかな味わい。
水の街である日本橋を意識したターコイズブルー(ブルーキュラソー)と川岸になびく柳のエメラルドグリーン(MIDORI)で、変わりゆく日本橋の風景を清々しく描いた。
こちらが「Nihonbashi」(¥2100)。ブルーとグリーンの色合いも美しい。
そんな栗原さんのアイデアソースは「ひらめき」だという。
「どんなカクテルを作ろうか、考えて考え抜いて…というタイプではありません。
ふとした瞬間に色や味覚のイメージがぱっとひらめく。
私の場合、オリジナルカクテルはそうやって生まれたものばかり」
例えば「Nihonbashi」は、「活気のある日本橋をイメージした色合いと、万人が飲みやすい味」というお題があった。
「川のイメージからブルーをベースに、とは思っていました。
『移り行く日本橋の風景』からブルーとグリーンが混在し、混ざり合うことで異なる表情を見せてくれる、
そんなカクテルを思い浮かべて。
橋を思わせるライムピールを浮かべて、ゆずを隠し味に効かせ、和の雰囲気を添えました」
その土地にあう文化や風土に合わせてのホテル作りを目指している、いかにもマンダリン オリエンタル 東京らしいカクテルと言える。
もちろん、なんの下準備もなしにこうしたオリジナルカクテルのアイデアが「ひらめく」わけもなく。
外国からのゲストにも好評な、モダンな和を感じさせるインテリア。
「美術館、クラシックコンサート、歌舞伎…...
趣味外であろうと何だろうと、インスピレーション源を求めてあらゆる場所へ出かけました。
国内外を問わず旅行もそうです。休日を楽しむというよりも、様々な国の文化や風土に触れたい。そして新しい視点を手に入れる。
こうした、感性を磨くという過程なくしては、インスピレーションというのは得られないのかもしれません」
感性を磨く、という目的以外にも、経験値を高めることには意義がある。
「バーテンダーという職業にはお客様との会話も欠かせません。
そのときに、お酒のことだけを考えていたのでは会話が広がらないのです。
あらゆる話題にアンテナを広げ、お客様との会話を楽しむ、
そうした会話が糸口になって、新しいカクテルが生まれることもあるんです」
店内ではシガーも楽しめる。
栗原さんの影響だろうか、マンダリンバーでは若いバーテンダーがコンペティションに積極的に参加する、そんな流れがある。
「若いスタッフが新しいカクテルを前に煮詰まってしまったときには、『帰りなさい』ってアドバイスします。
帰って、気持ちをフラットに切り替える。
インスピレーションって頭がクリアな状態のときに現れることが多いようです」
こうした「フラット」な気持ちを大切にする栗原さんは、寝入りばなでもカクテルのアイデアが浮かぶという。
そんなときはすかさずメモ!
で、こうしたメモから生まれたのが代表作「グローリアス マティーニ」なんだそうな。
グラスの縁にあしらったグラニュー糖とザラメがまるで大粒のクリスタルのように輝く、女性のための華やかなマティーニだ。
グラニュー糖とザラメのミックスというアイデアの裏には、常にカクテルと対峙するバーテンダーの地道な努力が秘められているのだ。
次回に続く。
SHOP INFORMATION
マンダリンバー | |
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103-8328 東京都中央区日本橋室町2-1-1 マンダリン オリエンタル 東京 37階 TEL:0120-806-823 URL:http://www.mandarinoriental.co.jp/tokyo/dining/bar/ |