注目のコンプレックスバー、「旅する酒屋」が
仕掛ける酒、食、旅のシナジー効果って?
<前編>

PICK UPピックアップ

注目のコンプレックスバー、「旅する酒屋」が
仕掛ける酒、食、旅のシナジー効果って?
<前編>

#Pick up

齋藤大典さん by「万珍酒店 / MANGOSTEEN」

店主の個性が光るコンプレックス(複合)・バーが次々と登場している中、どりぷら編集部が注目したのは酒、食、旅をテーマにした新時代の角打ち酒屋。旅行業も手がける「万珍酒店 / MANGOSTEEN」って?

文:Ryoko Kuraishi

物販コーナー、バーコーナー、ラウンジを備える店内。

テーマは酒、食、そして旅!

「世界の微生物が醸す、万(よろず)珍しいお酒」をコンセプトに、今年1月、世田谷区代沢にオープンしたのが「万珍酒店 / MANGOSTEEN」だ。


クラフト&スモールバッジのメスカルを中心に、ビオワインやクラフトビール、オーガニックウォッカなどを角打ちスタイルで提供するインポーター兼酒屋で、店の中ほどにテイスティングバーがあり、店内で扱う全てのボトルを試飲できる。


デリスタイルのフードメニューも揃え、テイクアウトはもちろん、テイステイングバーや奥に設けたラウンジスペースで、カクテルと合わせてのイートインも可能だ。
近隣に系列のケータリング業のためのキッチンがあり、全てそこで作られているとか。

さらには、店内のあちこちにメキシコの陶器や小物、インドの布製品など、エキゾチックな雑貨が並んでいる。
果たして、この店って一体……?

店内のあらゆるボトルをテイスティングできる。おすすめはメスカルの3種の飲み比べだ。¥2,000

「万珍酒店 / MANGOSTEEN」代表を務める齋藤大典さん曰く、「ここはただの角打ちではなく、酒と食(デリ)、旅の要素を融合した遊び場」だとか。


「90年代後半に世界を旅したバックパッカー仲間と西麻布でクラブを立ち上げ、その後、青葉台で『mangosteen cafe』というカフェを始めました。
そこで独立してケータリングサービスの『MANGOSTEEN』をスタート、展示会やブランドのパーティ、映画の撮影現場やライブなど、さまざまな場所ヘ料理を届けてきました。
ケータリング業を行う傍ら、食と音楽のミックスアップパーティのオーガナイズなど、食と音楽を軸に様々な活動を行っています。
その一環としてスタートしたのが「万珍酒店 / MANGOSTEEN」です」


食を軸とする活動を行っていたの「MANGOSTEEN」が酒類の取り扱いを始めたのが3年前のこと。
「ケータリング業が忙しくなると、だんだんと旅に行きづらくなった。
大手を振って旅に行くためには……と考えて、世界各地の酒の仕入れを始めることにしたんです」

代表の斎藤さん。

クラフトのメスカル・カルチャーが、酒そのものへの見方を変えた

友人を介して紹介してもらったのが、オーガニックでワインを造る、オーストラリアの南東部にあるロズネーというワイナリー。
バイオダイミック農法でブドウとオリーブ、イチジクを栽培する家族経営のワイナリーで、畑を耕しながらセルフビルドで家を建て、自然に寄り添ったオーガニックな生活を送っている。


ロズネーを訪ねた齋藤さんは真摯な造り手の暮らしにサスティナブルな未来のヒントを見いだし、以来、世界各地の醸造所や蒸留所を訪ねるようになったとか。


「酒との出合いという意味でもう一つ転機になったのが、メキシコのメスカルでした。
実はもともと、僕はそんなにお酒が得意ではなかったんです。
ところがメスカルに関しては、悪酔いなどのイヤな要素が一切なかった。

その上、味わいや香りに、造られている土地のルーツや原料であるアガベの個性を色濃く感じられ、工業製品ではない酒造りの文化に好奇心をかき立てられました」

メスカルツアーでMANGOSTEENチームが訪れたメキシコの蒸留所のテイスティングバーにて。

実際に造り手を訪ねてみたら、家族経営・スモールバッジの生産者がほとんど。
昔ながらの手法で手間も時間も惜しまず、丁寧に造っている。
いわば “クラフト”を体現するようなものづくりを行っていた。


たとえば、万珍酒店で仕入れている「MEZCAL AMORES」。
高温で熱した石と、葉を全て刈り取った巨大なマゲイ(アガベ)をさらに大きな穴に入れ、蓋をして蒸し上げ、蒸しあがったマゲイを馬と石臼を使って細かく挽く。
それを樽に入れ、自然発酵させたものを2回蒸留してボトリング。


その工程のほぼ全てが手作業で行われるから恐ろしく手間がかかる。
そもそも原料となるアガベも栽培自体が難しく、また収穫に適したサイズに育てるのに10年近くかかるとか。

現地ではアガベ畑も視察した。こちらはオアハカの畑。

「伝統的な製法、自然発酵、その土地特有の微生物……メスカルはいわば、『オラが村の酒』。 

工程がオーガナイズされているテキーラとは全く異なり、木の樽で自然発酵させているようなローカルの酒ですが、造り手たちは皆、プライドを持ってものづくりをしています。
そういう造り手の姿勢にも共感しました。

こうしてメスカルに出合ったことで、まだ知られていない酒を、世界中を旅しながら掘り出して日本に紹介していきたい、そんな風に考えるようになったんです」


後編では引き続き「万珍酒店 / MANGOSTEEN」がコミットする旅と酒の世界観をご紹介しよう。


後編に続く。

SHOP INFORMATION

万珍酒店 / MANGOSTEEN
世田谷区代沢4-29-14
TEL:03-6413-8819
URL:https://mangosteen.vc/shop/

SPECIAL FEATURE特別取材