クラフトはどこに向かう?
ジン・シーンのいまとこれからを考えた。
<前編>

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岸久さん by「日本ジン協会(一般財団法人 カクテル文化振興会 内)」

世界中でまだまだ盛り上がりを見せているジン・ムーブメントだが、ジンはこれからどうなっていくのか。6月第2土曜日の「ワールド・ジン・デイ」を前に、日本ジン協会の岸久代表に特別インタビュー!

文:Ryoko Kuraishi

昨年の「ジン-ポジウム」で行われた「ジン・ガーディアンズ」授与式。

国内でもここ数年でクラフトジンを手がける造り手が増えるなど、国内外で相変わらず大きな盛り上がりを見せるジン・シーン。


昨年、一昨年と日本ジン協会が主催した「ジン-ポジウム ジャパン」にはそれぞれ70以上ものブランドが集まり、それを目当てに一般のジン愛好家が数多く来場。
ジンを取り巻く環境が大きく変わっていることを感じさせた。


日本ジン協会は、岸さんが2014年にアジアで初めて英国ザ・ジン・ギルドのリクティファイヤーに任命されたことをきっかけに、「ジンをもっとメジャーに広めよう」という趣旨で設立された。


岸さん曰く、「ジンが世界的な盛り上がりを見せる中、生産者やインポーター、酒販業者などジンに関わるあらゆる立場の人の受け皿として機能することが日本ジン協会の役割」なのだそう。

ロードメイヤー(オブ・ザ・シティ・ロンドン)公邸で行われた任命式は「クラスを感じさせるセレモニーだった」と岸さん。「 長期熟成でないジンはむしろカジュアルなスピリッツですが、ジンを取り巻く環境が日本とは全く異なると感じました」。

協会の活動の一つに「知識の体系化」がある。
先日、日本ジン協会が監修した『ジン大全』が発売されたが、ここにはジンの規定や製法、歴史から、ボタニカルの蒸溜方法、現在日本で手に入る172銘柄の紹介と60種のカクテルレシピを掲載した。
まさにジンの教科書ともいうべき一冊である(トップ画像参照)。


「現在はクラフトジンが人気を集めていますが、クラフトではないスタンダードなジンとクラフトは何が違うのか、それを語れる人は少ない。


そもそも日本では『クラフト』自体に定義がない。
最近の『クラフト』という言葉の受け止められ方はイメージ先行に過ぎるという思いもあって、ジンを体系的にまとめる必要を感じていました」


長くジンを造っているメーカーは、知識もスキルもボタニカル調達のコネクションも持っているためクオリティの高いジンをリーズナブルに提供しているが、現在のブームの中ではそういったことは見過ごされがちだ。


クラフトという言葉が醸すイメージだけでなく、香りや味わい、コストパフォーマンスなど、本来のジンの魅力を総合的に評価していかないと一過性のブームで終わってしまう。
ジンを正当に評価するためにも、ブランドのストーリーやそれぞれのジンの個性を広めるような提案をしていきたい、と岸さん。

2014年の英国ザ・ジン・ギルドのリクティファイヤー任命式の様子。

「『Tokyo International BarShow 』にも『ジン-ポジウム』にも、たくさんのジン・メーカーが出展してくれました。
日本での評価が高まるとアジア全体での認識がアップするという流れもあり、相変わらず問い合わせはたくさんいただいています。


ただ、蒸溜所の数も多くなりすぎて統制が取れていないようにも見受けられます。
例えば海外では日本以上のスピードで新しい蒸溜所が誕生していますが、3年後にどれだけの蒸溜所がジンを造り続けているのか。
そういう危機感は抱いていますね」

昨年の「ジン-ポジウム」より。セミナーはプロから一般の愛好家まで多くの参加者を集め、改めてジンへの注目度の高さを印象付けた。今年の開催は11月24日を予定している。

「バーテンダーやバーの視点からお話ししすると、ジンはウイスキーに比べたら手にいれやすいスピリッツです。
最近はジンの専門店もできていますが、若くて何か商売を始めるならジンは非常に有効なツールです。


とはいえ、最近出てきているクラフト系のジンが既存のカクテルにハマるのか。
柔らかすぎて、カクテルではうまく力を発揮できないジンもありますね。


ストレート、水割り、ロックのように、よりシンプルに楽しむスタイルの方がボタニカルの香りを際立たせられる銘柄もある。
カクテルの向き不向きを判断して新しい飲み方を模索することも必要でしょう。
そういう意味では、どんな切り口を提案するのか、バーテンダーの腕が問われますね。


とはいえ、そういうバーやバーテンダー個々の努力がクラフトジンブームをさらに底上げし、ビジネスの面でも魅力的になっていくんだと思いますよ」

こちらは、英国ザ・ジン・ギルドより岸さんに贈られたリクティファイヤーの証書とバッジ。どちらにもジュニパーのモチーフがあしらわれている。

今後の日本ジン協会の活動を伺おう。


「今年、いよいよ検定資格制度の『クラフト ジン マスターズ』がスタートします。
自分なりのクラフト性を見つけて欲しいという思いから、あえて資格名にクラフトと入れました。
バーテンダー、インポーターはもちろん、一般のジン・ファンの中からもジンの専門家が生まれる、そんなきっかけの一つになればいいですね。


昨年の『ジン-ポジウム』から『ジン・ガーディアンズ』の授与もはじめました。
『ジン・ガーディアンズ』は日本におけるジンの普及や発展に寄与した人や団体に与える称号ですが、こうした取り組みを地道に続け、ジンのシーンを少しずつ成熟させていけたらと思っています。


それからこれはまだ構想段階ですが、『ジン-ポジウム』のなかでジン・カクテルの品評会をやってみるのも面白いなと思っています。
ご期待ください!」


まずは来月開催される「Tokyo International BarShow 」(http://tokyobarshow.com/booths.html)へ!
さまざまなジンの造り手によるプレゼンテーションをお見逃しなく!

SHOP INFORMATION

日本ジン協会(一般財団法人 カクテル文化振興会 内)
東京都千代田区有楽町2-3-6 マスヤビル 9F
TEL:非公開
URL:http://cocktail.or.jp

SPECIAL FEATURE特別取材