カクテルアワード2015優勝の窪内那奈さん
「カクテルセッション in NY」特別インタビュー!

SPECIAL FEATURE特別取材

カクテルアワード2015優勝の窪内那奈さん
「カクテルセッション in NY」特別インタビュー!

#Special Feature

文:Drink Planet編集部

日本のバーシーンを牽引してきた歴史あるコンペティション「2015 ビームサントリー ザ・カクテルアワード by メーカーズマーク」において、オリジナルカクテル「Red Cattleya(レッド カトレア)で最優秀賞に輝いた窪内那奈さん(Café Bar STAR LIGHT/高知県)。

その副賞として、2016年3月に「ケンタッキー・ニューヨーク カクテルの旅」に招待されました。

Drink Planetでは、旅のメインイベントともいえる「カクテルセッション in NY」を中心に窪内さんにインタビュー!

日本を代表する女性バーテンダーの目に、ニューヨークのバーシーンはどんな風に映ったのでしょうか!?

今回が初めてのニューヨークだったという窪内さんですが、行列ができるほど人気の有名バーやレストランをいくつも巡ったそうです。

そのなかには過去にDrink Planetで取材した「PDT」「Dead Rabbit」「Saxon + Parole」「Maison Premiere」「Bar GOTO」なども含まれていました。

(それにしても、素敵なバーばかり!)

そんななか、窪内さんにとって、NYのバーで最も印象に残ったのはどのバーだったのでしょうか?

「どこも個性的でそれぞれに魅力的なバーばかりでしたが、印象に残ったという意味ではやはり「PDT」でしょうか。知ってはいても、ホットドック店の奥にバーが存在するというスピークイージー的な仕掛けには心を奪われました」

「おまけにバーテンダーの方の接客が丁寧で、気配りも細やか。なんとなく日本的な“おもてなし”の要素を感じました。技術やツールだけでなく、接客にもジャパニーズ・バーテンディングの影響が出てきているのかもしれません」

続いて、NYのバーシーンの全体的な印象も聞いてみました。

「まず、日本のように黙ってお酒を飲むゲストをほとんど見かけませんでした。とにかく人々がパワフルでエネルギッシュ! お客さまとバーテンダーがともに主役で、共有する時間を大いに楽しんでいるように感じました。ダブルシェイク、ダブルステアといったテクニックも一般的で、バーテンダーには多くの注文をさばくスピードと魅せながらつくるエンターテインメント性が求められていました」

「それから流行発信地であるニューヨークでは、たとえば桜の塩漬けや麹など、カクテルに和の食材を使うことがちょっとしたトレンドのようでした。日本のB級グルメ(ジャンクフード)をバーフードとして扱っている店もありました。和のテイストを日本人よりもずっと自由な発想で取り入れているところが、さすがはニューヨークだなと感心させられましたね」

「カクテルセッション in NY」をオーガナイズしてくれたMasaさん(中央)とMasaさんによるウェルカムパンチカクテル。

「カクテルセッション in NY」をオーガナイズしてくれたMasaさん(中央)とMasaさんによるウェルカムパンチカクテル。

さて、3日間のニューヨーク滞在のうち、2日目の午後にはニューヨークで活躍するバーテンダーを招いての「カクテルセッション in NY」が行われました。

ホストとして同イベントをオーガナイズしてくれたのは、「Saxon + Parole」のヘッドバーテンダー、通称Masaさんこと、マサ・ウルシドさん。

Masaさんの呼びかけにより、以下の6名のバーテンダーが集まってくれました。

ヴィクトリア・キャンティさん(Victoria Canty)「Cafe Dante」
イグナシオ“ナチョ”ヒメネスさん(Ignacio "Nacho" Jimenez)「The Daily」
マキシム・ベルファンドさん(Maxime Belfand)「Saxon + Parole」
ドミニク・ヴェネガスさん(Dominic Venegas)「Nomad Bar」
ナナ・シモセガワさん(Nana Shimosegawa)「Angel's Share」
イーベン・フリーマンさん(Eben Freeman)「Genuine Liquorette」

窪内さんはニューヨークのトップバーテンダーたちの前で、カクテルアワード2015の優勝カクテル「Red Cattleya」を披露。

英語で自己紹介とカクテルについての簡単な説明をした後に、丁寧かつ流れるような動きで「Red Cattleya」をつくりあげました。

「完全アウェイなので、さすがに緊張しました(笑)」と振り返る窪内さんに、ニューヨークのバーテンダーたちから、どんな反応があったのかを聞いてみました。

「シンプルなレシピと繊細な味わいで“おいしい”と言ってもらえました。また日本人バーテンダーならではの茶道のような美しい立ち振る舞いについても、皆さん興味津々でさまざまな質問が飛び交いました。その一方で、アメリカ、特にニューヨークではカクテルにも個性が重要視されること、バーテンダーにも目の前のお客さまを楽しませるエンターテイナーとしての要素が求められること、といった話題も出ました」

「日本のバーテンダーとニューヨークのバーテンダーは、同じ職業とはいえ、お客さまから求められていることも違えば、それに対する反応も違う。違いがあるからこそ、このセッション自体が刺激的で、楽しいものになりました」

「どちらがいい悪いではなく、それぞれの捉え方の違いを肌で感じられたのは大きな収穫でしたね。ニューヨークのバーテンダーの前でカクテルをつくる機会なんて、そうそうありませんから(笑)。この貴重な機会をいただけたことを本当に感謝しています」

左上/イーベン・フリーマンさん。右上/イーベンさんによるメーカーズマークのミニボトルを使ったカクテル。右下/いつも笑顔のヴィクトリア・キャンティさん。左下/NYで活躍する日本人女性バーテンダー、ナナ・シモセガワさん。

左上/イーベン・フリーマンさん。右上/イーベンさんによるメーカーズマークのミニボトルを使ったカクテル。右下/いつも笑顔のヴィクトリア・キャンティさん。左下/NYで活躍する日本人女性バーテンダー、ナナ・シモセガワさん。

窪内さんのパフォーマンスに続いて、この日集まったバーテンダーたちもメーカーズマークを使って次々にオリジナルカクテルを披露していきました。

特に印象に残ったバーテンダーは誰だったのでしょうか?

「最も印象に残ったのは、最後に登場したイーベン・フリーマンさんです。彼がつくり上げたのは、コカ・コーラのミニ缶にメーカーズマークのミニボトルを逆さまに差し込み、レモンとストローを添えたカクテル。このカクテルのために自ら缶に穴を開けるマシーンを考案したんだそうです」

「要するにメーカーズマークのコーラ割りなのですが、こういうユニークなアプローチの仕方は飲み手をワクワクさせますよね。いかにもニューヨークのバーテンダーらしい大胆な発想だなと思いました」

それから2人の女性バーテンダーにも強いインパクトを受けたそうです。

「ヴィクトリア・キャンティさんは、笑顔がキュートでバーテンダーとしての華やかな存在が印象的でした。このセッションの後に、彼女のバーを訪問したのですが、常に笑顔が絶えず、生き生きと仕事をしていた姿が忘れられません」

「日本の女性バーテンダーは、女性らしさを前面に出すことを避ける傾向にありますが、ニューヨークの女性バーテンダーは女性らしさをひとつの個性として捉えているようです。同じように『Angel’s Share』のナナ(シモセガワ)さんも、凛として美しく、女性らしさが光っていました」

「ニューヨークは自由の女神が守護というだけあって、女性バーテンダーが心から仕事を楽しみ、自由な発想と感性で輝いていました。どのバーにも必ずと言っていいほど女性バーテンダーがいたことは、女性バーテンダーである私にとっては嬉しい発見でした。改めて、私も頑張ろうという勇気をもらえました」

今回のセッション、バー巡りを通して、窪内さんが感じたニューヨークのカクテルトレンドについても聞いてみました。

「トレンドとまでは言えないかもしれませんが、それぞれの店が個性(自分らしさ)を表現しているように感じました。同じスタンダードカクテルでも、ハーブやスパイスでアレンジしたり、自家製のシロップやビターズで違いを生み出したり……。日本のバーテンダーにはない発想も多く、参考になることばかりでした」

「と同時に、日本人バーテンダーとしての長所も再確認できました。私がニューヨークのバーテンダーの皆さんから刺激を受けたように、ニューヨークのバーテンダーもジャパニーズ・バーテンディングから多くの影響を受けているようです」

「バーテンダーとして大切なのは、技術はもちろん、人間性を高めていくこと。自由で、明るく、自分らしく振る舞うニューヨークのバーテンダーを見ていて、改めてそう感じました」

最後に、今回のツアーを振り返るとともに、これからカクテルアワードに参加される方に向けてのメッセージをもらいました。

「この『ケンタッキー・ニューヨーク カクテルの旅』のおかげで、バーテンダーとしての自分の長所も再発見できたし、世界観も大きく広がりました。言葉では伝えきれないくらい、感謝の思いで一杯です。これからも、この仕事を誇りに思い、もっと自信を持って、バーテンダーとしてさらに成長していきたいです」

「今年、カクテルアワードに参加する皆さんも、ぜひ、自由な発想と自分の感性を大切にして、自分らしいオリジナルカクテルを創作してください。その先には新たな発見と素晴らしい出会いが待っているはずです!」

■「2016 ビームサントリー ザ・カクテルアワード」の詳細は下記をご覧ください。
2016ビームサントリー ザ・カクテルアワード


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