ブームよりも「続ける」ことを!
マデイラの始祖のフィロソフィ。
<後編>

PICK UPピックアップ

ブームよりも「続ける」ことを!
マデイラの始祖のフィロソフィ。
<後編>

#Pick up

鈴木勝宏さん by「Leandro」

いつでもどこでもの飲める日常の酒に。2020年を目標に、マデイラワインの普及を目指すLeandroオーナーの鈴木さん。昨年発足した「クラブ・マデイラ」の活動と合わせて、今後のプロモーションを伺った。

文:Ryoko Kuraishi

「大西洋の真珠」と謳われるポルトガル領マデイラ島。クリスティアーノ・ロナウドの故郷としてもお馴染みの、リゾートアイランドだ。

“マデイラワインの聖地”として知られるようになっていた「レアンドロ」。
鈴木さんは改めてその足元を固めるべく、オープン以来の方針を見直し、マデイラ島の醸造所と信頼関係を結べるような地道な活動を行うようになった。


そんな鈴木さんに再びチャンスが訪れる。
そう、マデイラワイン騎士団だ。
実は今年に入って再び、木下インターナショナルの木下社長を通じて騎士団に認定されるという話が再浮上したのだ。


マデイラワイン騎士団に名をつらねると、帽子とマントが授与される。
もし騎士団に認められたら「帽子をかぶってマントを翻し、マデイラに身を投じた一殉教者として全国を巡りたい」そう。

昨年の研修で、BARBEITO社のリカルド社長と。

「帽子とマントなんて、イカサマっぽく見えるかもしれないけれど、自分は男芸者で構わないから」と鈴木さん。


「僕の目標は、マデイラワインをどこのバーや酒場でも飲めるような、当たり前の存在にすること。
だから、まずはバーオーナーやバーテンダーへ広げていきたい。
さらには、ワイン業界やソムリエに、酒精強化されているとは言え、製造法上は同じワインであるマデイラの素晴らしさを知ってもらいたい。


2005年から今日まで毎日、マデイラワインと向き合ってきた時間と、昨年、醸造所で得た知識や経験があれば、プロである彼らを納得させられるような情報を提供できると思っています」


マデイラは確かに優れた料理酒だが、それでいてバーにもってこいの酒でもある。
常温での保管が可能だからセラーも不要で、封を開けても半永久的に飲める。
それぞれに個性もあって、さらにヴィンテージも楽しめる。
ストレートで飲んでもうまいし、例えばジントニックの代わりにマデイラを使うなど、カクテルのベースとしてのポテンシャルも高い。


「ベルモットやリキュールの代わりとしてもいいんですよ。
おまけに『吉宗の時代を感じられる』というようなストーリーも持っている。
『時を旅する』酒、マデイラの良さを飲酒業界の隅々にまで広げていきたいですね」

研修中の風景。除梗(小さな枝と果実を分けること)したボアル種(白ブドウ)を、「ロボティック・ラガール」に移動する鈴木さん。「ロボティック・ラガール」とは、かつて行なわれていた足踏みでの葡萄破砕を人工的に再現した機械で、マデイラ島のワイナリーでは唯一、BARBEITO社だけが 採用している。

今後の目標は、2020年の東京オリンピックに向けてマデイラのピークを持ってくること。
もともとマデイラは、アメリカ人など外国人に好まれている。
黒船が日本の開国のきっかけを作ったように、彼らの手を借りてマデイラの世界にも風穴を開けたい。
いまはその下地を整えていく時期だと考えている。


「ワインだって、今のような市民権を得るのに30年かかりました。
バブル時代のヌーヴォー・ブームがあって、田崎さんという世界で活躍するソムリエが生まれ、世界各地からさまざまな銘柄が入るようになった。
それでようやく日常の酒として認知されるようになったんです。


だからマデイラもゆっくりでいい。
上がらず、下がらず。
いっときのブームを作るよりも、長く続けることが大事かなって思うんです」

レアンドロはあくまでもカフェ+バー、という鈴木さん。朝から晩まで、好きな時に飲めて、気軽につまめる。そんなヨーロッパのカフェをイメージしている。事実、濃く苦いエスプレッソと甘いマデイラワインは絶妙のマッチング!

同時に、志を同じくする若い世代へも積極的にアプローチしている。


「僕より下の世代の仲間を作って彼らにこの流れを途絶えさせないようにすれば、あと30年は続きますよね。
うちもね、来年1月から息子が手伝ってくれることになりまして。
次の、さらに次の世代を見据え、再来年くらいからはマデイラ島への視察も一緒に行ければ、なんて考えています」


そうした息の長い活動の拠点となるのが、この「レアンドロ」と、前出の木下インターナショナル直営のマデイラワインバー「マデイラ・エントラーダ」。


昨年、銀座にオープンした「マデイラ・エントラーダ」は、100余種のマデイラワインを飲み比べられるバーだ。
ポルトガルの料理も揃え、現地の雰囲気を色濃く体感できると同時に、日本人により馴染みやすいよう和食とのマリアージュも積極的に提案している。
マデイラ本来の魅力を伝えたいという木下社長の心意気に賛同する鈴木さん、いちばんのサポーターとして店舗の枠を超えた盛り上がりを作っていきたいのだそう。

マデイラワインにちなみに、マデイラフィニッシュのモルトを始めとするウイスキーも充実。例えばマッカランのレッドリボン。1824年の創業からわずか4年しか造られなかった、超希少なボトルも揃う。

さて、鈴木さん曰く「無謀な野望計画」というワイナリー研修の実現に向けて、「レアンドロ」ではユニークな試みを企画している。


「2014年11月11日の7周年の日から渡航資金集めを始めました。
資金が限りなく¥0に加え、56歳の1人営業の店主が、10週間店を空ける=無謀!
日本人初の、マデイラワイナリーでの研修=野望!!
そんな無謀な野望計画ですが、興味を持ってくださる方々の賛同を店で募ったんです。


ご賛同(=カンパ、¥15,000)を頂いたお礼の1つが、研修先であるBARBEITO社のティンタネグラ種の『ティスティング・セット(50ml×4種)』。
通常のそれには、騎士団風の小太りの紳士のロゴマークをあしらったラベルがボトルに貼られてます。
この紳士にメガネをかけさせて腹を凹ませ、自分風にデフォルメしたキャラをあしらったラベルを特注してボトルに貼り、自分が携わった証にしたいと考えてます。
曲がりなりにも、初めて日本人の手が加わった記念すべきマデイラワインが2018年以降にボトリングされるんです。
ボトリングまでの間は1年毎に1杯、生まれ年のマデイラワインをご提供。
それを飲みながら来るべき歴史的瞬間(!!)をお待ち頂こうという趣向です。


加えて、『2015年』の葡萄の収穫年数が入った白ブドウ4品種のいずれかを、500mlサイズのボトルで1本(2022年ごろにボトリング可能予定)ご用意。
マデイラワインを多くの方に知っていただくために、このようなクラウドファンディングといういうスタイルをとってみました」


現在は、来年の渡航資金集めのため、残った100セットの二次募集もスタートしているとか。
(詳細はぜひ、「レアンドロ」へ直接お問い合わせを!)


シェークスピア、大航海時代、織田信長にナポレオン。
マデイラを取り巻く壮大なストーリーを、魅力的な言葉に乗せて綴る鈴木さんは、まさにマデイラの語り部。
「レアンドロ」に足を運び、はるか2世紀、3世紀前の世界に思いを馳せながら、時を超える物語に身をゆだねてみよう。

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SPECIAL FEATURE特別取材