バーテンダ向けカクテルポータルサイト「Drink Planet」

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今月のバーテンダー

注目の生産者によるボタニカルは
グラスに咲く、生きたアート!
<後編>

井上隆太郎さん/GRAND ROYAL green

16.06.15

アウトドアのイベントにも参加している。アウトドアでお酒と食を楽しもうというイベント「Farmer's Garden Table」をアウトドアの酒ユニット「SOTONOMO」と共催。手塩にかけたハーブをカクテルに仕立てた。Photo by Masa Hamanoi(メインカットとも)

3年前から縁あって、鴨川の内陸部に畑を借りることができた「GRAND ROYAL green」の井上隆太郎さん。
それまでに培った園芸の知恵と経験を試してみたくて、自然農でハーブや花を作るようになった。


「どういうスタイルの農業をやるかと考えた時、自分の土地があるわけでもないし、まず大規模な“ザ・農業”という形式は違うなと思いました。
『小規模農業で起業する』みたいな本を読んでみても、そもそもの“小規模”のレベルが違う(笑)。
コメとか、年に1回しか収穫できないものでは太刀打ちできない。


加えて、 自分の知識が活かせる作物ですぐに独立できる分野でなかった意味がない。
そして自分の家族を養えるくらいの利益が上がるもの。
もちろん、自分が興味を持てるものでないと作れないなとも思いました」

ハーブやエディブルフラワーが自生する原っぱ”を目指す井上さんの畑。時間をかけるほどに良くなっていくのが自然農の醍醐味。「今に見てろよって思います。誰も見たことのないくらい美しい畑を作りたい」

野菜のように品種改良されたものは無農薬・無肥料栽培が難しい。
原種に近い植物で鴨川の風土に近いものを探すことにした。
で、出した答えがハーブとエディブルフラワー。
栽培法に配慮するとともに、従来の生産者とは異なるきめ細かな対応を売りにした。


「どのレストラン、バーにも、グラムではなく一本、一輪、一枚単位で卸しています。
さらに『10cmのローズマリー』とか、細かなリクエストにも対応します。
うちとつきあいのある飲食店が必要としているのは、ハーブ何本、何枚やエディブルフラワーを何輪、なんです。
週末50杯売ろうとか コース料理だったら予約が50人だからとか、ケータリングならこのデザインのピンチョスが200皿とか。
そもそもグラムで納品しても、それが何本分に相当するかはまちまちになってしまいますし」


昔ながらの料理の世界では、葉や実の風味や食感を良くするために花の部分を間引いて捨てることが多いという。
花が咲くと固くなる、エグミが出る。
例えばカラシナやコリアンダー、ニンジン。
花は渋いとかエグミが出るからって捨てられてしまう。

いま勉強しているのがビターズ。一緒にスピリッツやビターズを造ろうという作り手も大募集中。

「バジルもブロッコリーもそう。
花が咲くとそこに養分が取られる、だからとうだち(花芽が上がる)=ダメ、という先入観があります。
ってことは、そこに栄養があるんじゃないかと僕は思うんです。
そして固定観念にとらわれない一部のフレンチのシェフやバーテンダーにしたら、その間引いた花の部分が欲しかったりする。
渋みもエグミも個性になる、って。
自然農だし500坪しかないから大量生産はできない。
でもそういう少数精鋭みたいなスタイルなら現実的だし、僕にとって未来があるように思えました」


井上さんが目指すのは“畑のシェフ”。
「農家は畑のシェフだ、味の半分はここで決まる」、シェフの成澤さんに言われた一言だ。
一皿一皿、素材の調和や味わいを考えて調理するシェフのように、土の上で同じことをやりたいのだという。


「それぞれの花や葉や実、茎が、その個性を100パーセント発揮できるように、育てかた、摘み時、プレゼンテーションまで、ベストな方法を見極めてやるんです」

昨年、一昨年と2年続けて開催した「Farmer's Garden Table」では、ゲストのためのロングダイニングテーブルも製作。井上さんの世界観を反映した空間構成が好評を博した。Photo by Masa Hamanoi

種をまき、自然農でここまで育てるのに3年かかった。
ここの土や気候に合うものだけが生き残って、こんな風になりました。
最初の年は雑草だらけだったんですが、3年経ったら雑草の種類も変わってきた。
強いものだけが生き残り、うまく雑草と共存して、僕が理想とする“自生する原っぱ”みたいな形になってきました」


3年前に植えたライラックは今年初めて花をつけた。
この花は「BAR BEN FIDDICH」の鹿山さんに蒸留してもらおうと思っている。


「ライラックだけじゃないんです。
ヒイラギナンテン(マホニア)のベリーで、シロップやジャムを。
9月に咲くキンモクセイはシロップにしますが、いずれはこれでビターズを作りたい。
それぞれの花や実のベストなタイミングを見計らって丁寧に手摘みし、加工すればあの香りを長く瓶の中にとどめておくことができるんです」


そう、最終的に考えているのはスピリッツやビターズだ。


そもそも「新しいシステム」として、二次加工ありきで農業を考えていた。
ハーブやエディブルフラワーなら飲食店に食材として卸しつつ、シロップやジャムなどに加工でき、別の販路を持つこともできる。

先日開催された「ジェムソン バーテンダーズボール ジャパン2016」ではバーカウンターの建てこみと、ワークショップを手がけた。

酒類免許を持つ生産者と組んで、ビターズやスピリッツを造ることも念頭に入れていた。
「例えばバーには、風味をつけるビターズやシロップと一緒に、その元になったボタニカルをセットで販売するんです。
フレッシュと、フレッシュから抽出したエキスをそのままグラスでミックスできたら、それはアピールになりますよね。
そしていつか、ローズマリーやラベンダー、香りのある植物ならなんでもいいんですが、香りをそのまま液体に閉じ込めたようなエッセンスを抽出してみたい」


昨年からは自宅兼会社の拠点も東京から鴨川に移した。
装花や作り込みの仕事ももちろん継続して行っているが、現在はこの水辺の“原っぱ”や、拡張予定の事業に夢中である。


「実は、現在借りている住居をそのまま二次加工用のアトリエにしようかと考えています。
中二階があるガレージを併設しているんですが、そこに蒸留機をしつらえて。
目指すは世界に発信する鴨川メイドのスピリッツ。
プレゼンテーションもスタイリッシュなものに徹して、その道のプロであるバーテンダーやシェフに支持してもらえるようなものを作れたらいいですね」

Bar Information

GRAND ROYAL green
 
千葉県鴨川市北風原122-1
URL:https://www.instagram.com/grg_viasso/

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