PICK UPピックアップ
バーのハウスエールができる!
板橋で始まるクラフトシーンって?
<後編>
#Pick up
TOKYO ALEWORKS by「IBU Itabashi Brewers Unit」
22タップを設けた、カリフォルニア・スタイルの明るい店内。Photos Kenichi Katsukawa
ホームブリューイングの悦びは、造る・味わう・共有することだと教えてくれた、「TOKYO ALEWORKS」チーフプロデューサーのジミー山内さん。
「造る」TOKYO ALEWORKSに対し、「味わう」を深められる施設が、隣接するブリューパブ、「IBU Itabashi Brewers Unit」である。
国内を中心に、世界のクラフトビールを提供する22タップを完備したカリフォルニア・スタイルのブリューパブで、「TOKYO ALEWORKS」と協働してビールの総合施設を目指す。
「かつてのウイスキーや焼酎のように、近頃はクラフトビールも一部のマニア向けのものという風潮ができつつあります。そうした空気感がエントリー層やライト層を遠ざけてしまうのでは……」と、ビールシーンの衰退を危惧するのは、「IBU Itabashi Brewers Unit」のビアコーディネーター&ブリュワーの江口奈々さん。
「知識やスキルのあるマニアの人も、ライト層も、みんなが飲めて語れる場があって、さらに体験を共有できる。
そんな場所作りをしたくって『コミューナル・ブリューイング』を自認しています。
『コミューナル』が当たり前になった時こそ、クラフトビールシーンが文化として日本に根づくんじゃないかと思っています」
江口さんの審美眼を感じられるユニークなセレクションも。
飲食店の立場から考えれば、「TOKYO ALEWORKS」の醸造体験はがもたらすのは、ハウスエールのさらなる可能性なんだ、と江口さん。
OEMで行なっている飲食店もあるが、醸造の工程から携わることができれば、その店独自のペアリングをより自由に、かつシビアに追求することができる。
「これまでは選んだビールに対してどんな料理を合わせるかというペアリングが主でしたが、これからは料理に合わせて仕込まれたハウスエールを提案することができます。
例えばイタリアンのお店なら、イタリアの食材にマッチするビールを一から仕込むことができるんです。
テストバッチサイズで仕込めるから自由度が高いですし、微調整を重ねることで本当に自分が望むものを造ることができます。
うちは割烹の板前が手がける本格的な和食がウリなので、それに合わせたビールということでまずは緑茶のビールをリリース予定。
ビールも料理も既製品ではないからこそ、制約のない、自由なペアリングの可能性が広がる。
本当の意味でのペアリングを追求できるんじゃないかって、ワクワクしています」
ビアコーディネーター兼ブリュワーの江口奈々さんと、割烹で10年以上の経験を持つ板前にして店長の高野恭平さん。
「IBU Itabashi Brewers Unit」は昨年12月、「TOKYO ALEWORKS」に先行して「ワインカスクビレッジ」にオープンした。
’70年代のアメリカで始まったホームブリューイングに端を発するクラフトビール文化、その根底を伝えたいと始まったプロジェクトの一環であることから、当初は西海岸スタイルを踏襲した店になるはずだった。
「ブリューパブとしては後発ですし、『プロ・アマを問わずブリューイングという創造的な時間を提供する場づくり』というコンセプトですから、よくあるブリューパブのあり方では物足りないと思いました。
幸いなことにうちには和食の料理人とフレンチのシェフがいます。
そこで、本格的なペアリング、特に日本ではまだ珍しい、和食とクラフトビールを楽しめるスタイルに舵を切ったのです」(江口さん)
「クラフトビールと合わせることを念頭に置いて料理を考えるということで、トラディショナルな技法や価値観にとらわれることなく、自由な発想で食材と向き合っています」というのは、料理人で店長の高野恭平さんだ。
「TOKYO ALEWORKS」の開業記念に行われたパーティでは、素材使いにセンスが光る和食とクラフトビールのペアリングを提案。黄身衣や酒粕、柚子コショウをホップのフレーバーに合わせる「ボードブリッジロール」など。
既存のクラフトビールに合わせる場合、和食ではあまりお目にかかれないパクチーやパラダイスシードなどを大胆に使い、和食をモダンにアップデート。
例えばヒラメ、タイ、イサキなど白味魚のセビーチェには柔らかな酸と炭酸が特徴の、米と麹で仕込んだ「コウジ・リソ」というベルギーのビールをペアリング。
江口さんが選んだビールに合わせ、高野さんが料理に用いる酸をクエン酸なのか酢酸なのか、方向性を微調整する。
「クラフトビールを合わせる場合に大切なのは、食材の味わいを活かしつつ、ビールの好ましくないフレーバーを立たせないようにすること」と高野さん。
例えば酸味のあるビールには、酸味よりも旨味の強い料理を合わせることで、ビールのフレーバー、食材の持ち味を互いに引き立てることができる。
「赤身の魚にはラガーを合わせがちですが、それだと生臭さが強調されてしまうんですね。
ですからラガーよりもIPAがいい。
白身魚には『コウジ・リソ』かシードルなど、ドライすぎないものをチョイス。
日本人が好きな甘辛く炊いたものは、スタウトのようにしっかりとした香りを味わいのあるものがいいですね」(高野)
モルトを使った自家製プレッツェルはモチモチの食感が絶品!
その他、搾りかすを料理に生かすなど、ここならではの楽しい試みも。
「搾りかすというとイメージが良くないですが、モルトはたんぱく質と食物繊維を豊富に含む優れた食材。
うちではこれでモチモチのブレッツェルを焼いたり、パウダー状に細かく粉砕して食感のアクセントとして巻物にあしらったり、様々な使い方を考えています」(高野)
日本人は繊細な舌を持っているからこそ、ビール単体で楽しんでもらうより食とのペアリングで思いもかけないような味わいやハーモニーを提供したい、と江口さん。
「飲食店やプロの方にもクラフトビール初心者の方にも、『へえ』って言ってもらえるようなペアリングで、ビールを楽しくカジュアルに、長く楽しんでもらうのが私たちの目標です。
いずれは『TOKYO ALEWORKS』で造ったビールをここのタップに繋げ、パブでお披露目できるようなサービスも提供できるようにしたいですね」(江口)
造る・味わう・共有するを一度に楽しめそうな「TOKYO ALEWORKS」と「IBU」が担うジャパニーズ・クラフトビールのシーンにご注目ください!
IBU Itabashi Brewers Unit | |
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東京都板橋区板橋1-8-4 板橋Cask Village 1階 TEL:03-3961-1196 URL:http://ibu.itabashibrewing.com |