目指せ、ワールドチャンピオン!
注目4大会の傾向と対策、教えます。
<後編>

PICK UPピックアップ

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注目4大会の傾向と対策、教えます。
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#Pick up

カクテル コンペティション

コンペティション特集後半では、コンペティターが実際にやってきたことをご紹介する。それぞれの取り組みは、果たして主催者側にはどのように写ったのか。

文:Ryoko Kuraishi

メキシコならではのチャレンジを揃えた今年のディアジオ・ワールドクラス。

3.「味わい、オリジナリティ、人を惹きつけるプレゼンテーション」に注力する

Q.国内大会、そして世界大会と、勝ち抜いていくために最も大切なものはなんですか?

後編ではいよいよ、各大会でコンペティターが勝ち抜くための秘訣をご紹介。
国内と国外の審査基準の違い、ジャッジの視点など、主催者ならではの見解を伺った。


A
<ディアジオ・ワールドクラス>
「カクテルの香りや味わいが優れていることを前提に、ジャッジが見ているのは『ファイナリストが限られた時間の中で、各チャレンジ(競技)が求める意図をどう理解し、自分が行いたいことをどのように表現するのか』ということでしょう。


これまでのグローバル・ファイナルでは事前にカクテルレシピやプレゼンテーション内容を決定め、大会事務局に提出した上で臨むチャレンジが多かったのですが、今年のグローバルファイナルでは、現地で初めて詳細を知らされるというチャレンジが多かったです。
これらは、バーテンダーとしての引き出しの多さや即興性、あらゆるシーンに柔軟に対応できるかどうかという、バーテンダーの底力が試されているように思いました。


例えば『真夏の午後、プールサイドを囲んだパーティに相応しいカクテルは?』、『友人宅のホームパーティでは
どんなカクテル提案をする?』など、特定のシーンを想定したチャレンジもあります。
夜のバー・シーンだけではなく、例えばブランチにカクテルを楽しむお客さまや、そもそもカクテルになじみのないお客さまにはどのような提案が相応しいのか、普段からそうしたことを考えて実践しておくことも重要でしょう。


併せて、料理業界ではどのような調理方法や食材がトレンドで、それらをどのようにカクテルに応用するのか、なども
研究しておくといいでしょう。
普段から、国内外を問わずバックグラウンドが異なる様々なバーテンダーやシェフとのネットワークを幅広く築き、
自分のスキルやノウハウに取り入れ、引き出しを増やしていくといいですね。
普段の営業から実践し、大会では普段通りにそれらを実現することが、重要だと思います」

世界各国から集まった、バカルディ レガシー カクテル コンペティションのコンペティターたち。

<バカルディ レガシー カクテル コンペティション>
「この大会は世界で愛される定番カクテルを求めていますから、以下の2つがポイントだと思っています。
1. 一つのカクテルをどれだけブラッシュアップできるか
2. セルフプロデュース能力、ブランディング力


1については、ここで選ばれるカクテルののびしろはコンペで終わらない、むしろそこがスタート地点であると理解していただきたいのです。
世界大会の時点ですでに多くのプロモーションを経て、カクテルの完成度も高まっています。
この時に特定の地域でしか購入できない素材が多いなど、普遍性に欠けたレシピですとのびしろが少なくなってしまう。


2は、レガシーで優勝すると知名度もアップしますし、ビジネスのお誘いも多くなる。
この時、自分とカクテルをどうブランディングしていくかがそのあとの成否を左右します。
私たちとしても“レガシー”カクテルとする以上、そのカクテルを世界的なスタンダードカクテルにしていきたい。
それを理解してうまくセルフプロデュースしてくれるバーテンダーを選ぶ傾向にありますね」

いずれもザ・シーバス マスターズ カクテル コンペティションから。左上は中国代表で参加し、見事優勝を果たした鈴木敦さん。右上はファイナリストたち。左下がマックス・ワーナー氏、右下はオープニングパーティでパフォーマンスを披露した、世界最高齢のバーテンダー、福島勇三氏。

<ザ・シーバス マスターズ カクテル コンペティション>
「国内大会では、提示されたコンセプトをいかにカクテルで表現しているかをジャッジします。
一方、グローバル大会ではチャレンジのテーマは当日、発表されます。
つまり事前に準備ができないのでバーテンダーのいまの力量がそのまま、チャレンジに反映されます。


ここで重視するのは、ドリンク、コンセプト、アイデア、そしてホストとしてのサービス精神です。
そういえば、東京のバーにはハイエナジーのバーが少ないですよね。
もちろん落ち着いたバーテンディングがこの国の伝統で、多くの顧客がそれを望むということもわかっているのですが、プロフェッショナルなバーテンダーとして、時にハイエナジーなサービスが必要なシーンもあるでしょう。


これは大会だけの話ではなく、2020年を見据えて海外から多くのツーリストを呼び込む時に若い人たちにどうアピールするか、の話でもあります。
若い世代に向けて新しいエナジーを見せることも必要なのではないでしょうか。
ですから、私たちはこうしたエナジーもバーテンダーのスキルの一つと考えています。


ジャッジはブランドアンバサダー、過去のウィナー、業界のエキスパートなどで構成されており、シーバスブラザーズ社が選んでいます。
各国団体の重鎮たちではなく、インターナショナルに活躍するバーテンダーのみが審査するというのも、この大会の一つのポイントになっていると付け加えておきます」

ワールドクラス グローバルファイナル 2017にて、トップ10に輝いた10人。日本代表、槇永優さんの姿も。

<ビーフィーター グローバル バーテンダー コンペティション>
「他のカクテルコンペティションとは異なり、この大会は一つのカクテルを世界に広めるというより、魅力的なオリジナルカクテルを通してビーフィーターを世界にアピールすることを目的としています。
ですから普遍性やシンプルさ、わかりやすさよりも、自分らしさ、オリジナリティを評価する傾向にあります。


具体的には、自家製のイングレディエントを使ったレシピは評価が高いですし、作り方が複雑でも歓迎されます。
見栄えや味わいについてはかなり重視してジャッジする傾向にあります。
さらに、国内大会から世界大会へと進む段階で、若干レシピを変えることも可能です。
審査を進める中で外国人の嗜好に合わせてレシピを変える方もいるようです。


ちなみにジャッジは、マスター・ディスティラーのデズモンド・ペインが日本大会・世界大会ともに参加。
日本大会では、デズモンド氏に加えてグローバルブランドアンバサダーとサントリーアライド副社長が、世界大会ではグローバルに活躍するバー関係者が加わり、おおよそ3名で審査することが多いです。


ジャッジの基準は日本大会・世界大会ともに共通で、見栄えや味わい、香りをチェックするカクテル審査、創作意図を問うコンセプト審査、ファイナルに残ったバーテンダーがお互いのカクテルをジャッジしあうバーテンダー審査の3つになります」

MIXLDNより、日本代表、藤倉正法さんのパフォーマンス。ただいまMIXLDN JAPAN 2017では大会出場者を募集中。詳しくはこちらから。http://beefeater.jp/competition/2017/entry.html

まとめ:各大会主催者からのメッセージ

Q.最後に、次回に向けてどんなバーテンダーに挑戦してもらいたいかコメントをください。

<ディアジオ・ワールドクラス>

「ワールドクラスとは、お客さまの満足度を高めていくためには何をすべきか?また、バー経営に重要なことは何か?を参加するバーテンダーの皆さんとともに改めて向き合い、一緒に学び、発展していくためのプラットフォーム(基盤)のようなものだと思っています。


従って、次の世代を担っていくであろう若いバーテンダーの方々にも、コンペティションの応募は別として、オフィシャルセミナーなどに積極的に参加して欲しいと考えています」


<バカルディ レガシー カクテル コンペティション>
「ファミリーとしての一体感を感じられるのがこの大会の特徴です。
世界大会の前には一族が参加バーテンダー全員を招待してウェルカムディナーを開いてくれますし、ジャッジに加わる過去のウィナー達も親身になってチャレンジャーにアドバイスしてくれます。
世界大会・日本大会ともに参加者同士の絆が強まるようで、大会が終わってからもいい関係が続いているようです。
レガシーは応募した後もプロモーションなどが続いて大変なのですが、そうした内容や雰囲気を理解して共感してくださる方に参加してほしいですね。
現在は参加者が関東・関西圏に集中しているので、地方在住のバーテンダーのご応募もお待ちしています」


<ザ・シーバス マスターズ カクテル コンペティション>
「この大会のいちばんの収穫は、参加したバーテンダーたちの連帯感、ブラザーフッドなんです。
勝つか勝たないかは関係なく、みんなが口を揃えて『素晴らしい体験だった』といってくれる。
ブランドのヘリテイジを強調するためにブラザーフッドにフォーカスしていますが、結局、バーという狭い世界の中でお互いに高め合い、刺激しあうことがシーンを活性化する。
そういうバーテンダー同士の繋がりに寄与することが私たちの願いです」


<ビーフィーター グローバル バーテンダー コンペティション>
「ビーフィーターを使って日本の新しいカクテル文化を作っていこう、それを携えて世界にチャレンジしていこう、そんな意欲的なバーテンダーの参加をお待ちしています。
毎年、国内大会だけでも独創的なカクテルが集まりますので、私たちもうまく世界にアピールしていきたいと考えています。


また、大会を通して得られる世界中のバーテンダーとのネットワークは、参加したバーテンダーにとって大きな財産になると思っています。
歴代の日本代表バーテンダー達も大会をきっかけに世界との接点が大きく広がったと声を揃えて言っています。
今後参加するバーテンダーの皆様にも、この大会を通して意欲的に世界から沢山の刺激を受け、日本のバー文化にも還元していってほしいと願っています」

SPECIAL FEATURE特別取材