バーテンダーが熱烈支持、
生ハム&サラミ×酒の歓び。
<前編>

PICK UPピックアップ

バーテンダーが熱烈支持、
生ハム&サラミ×酒の歓び。
<前編>

#Pick up

新町賀信さん×大場健志さん by「サルメリア69」

近年、飲食業界でも注目されているフードペアリング。今月は、バーテンダーたちにも支持されている生ハム&サラミの専門店が満を持して登場!目利きの店主とバーテンダーによる、フードペアリング談義をお送りする。

文:Ryoko Kuraishi

特大の生ハムの原木とアメリカンな佇まいが目印。Photos by Tetsuya Yamamoto

欧米を中心に、飲食業界の一分野として確固たる地位を築いたフードペアリング。
相性のよい食材同士の組み合わせは、バーテンダーやシェフに新たなカクテルやレシピを生み出すためのインスピレーションをもたらしてくれる。
「フードペアリングにおいて新しい可能性を感じさせてくれる」とバーテンダーたちに人気の店が、今月ご紹介する生ハム&サラミの専門店「サルメリア69(ロッキュー)」である。


切り盛りするのは、職人肌の店主、新町賀信さん。
最高の状態の生ハムやサラミのみを厳選して取り扱い、かつ中央のいちばんおいしい部分だけを、それぞれの肉質に適した厚みにカットして提供してくれる。
さらに生ハムだけで15種類、そのほかサラミなど店には常時40〜50種を取り揃えるという圧巻のラインナップを誇る。


だが、この「サルメリア69」はただの専門店ではない。
生ハムとサラミの極上の味わいの可能性をさらに広げるべく、ユニークなイベントを随時、開催しているのだ。


ワインとの相性は言わずもがな、たとえば「イタリアのクラフトビールと生ハムの会」、「生ハムとお酒のマリアージュナイト」、「生ハムと馨華献上銘茶の宴」などなど、趣向を凝らした催しは一般の愛好家はもちろん、バーテンダーやシェフなど飲食業のプロをも魅了している。

店内の冷蔵ケースにずらりと並ぶ生ハムは圧巻!

もともとこうしたイベントは、筑波にあるイタリア自然派ワインのインポーターのプライベートなパーティから始まったものだった。
自然派ワインで名高いヴィナイオータの社長がイタリアからわざわざ生産者を十数人招待して、自らの誕生日会を企画。
その生産者たちのワインをよりおいしく味わうため、新町さんが加工肉のサーブを頼まれた。
1000人以上の来場者を集め大盛況に終わったパーティで新町さんの生ハムやサラミが評判になり、会場にいた多くのワイン&酒類関係者に「サルメリア69」の名前を知らしめることに。
以来、お酒と生ハムのイベントに関わる機会が増えるようになった。


「ワインはある程度わかりますが、そのほかのお酒は詳しくないので、バーテンダーやインポーターなど、その道のプロたちに協力を仰ぎます。
そんなことをしているうちにバーはもちろん、蕎麦、中華料理、さまざまな業態の飲食店とつながって、ペアリングの可能性がぐんぐん広がってきました」
一部の愛好家だけのものだった本場の生ハムが、こうしたイベントや機会を通じて少しずつ広がっていくのが嬉しいという。


さて、「出張バーテンダーと生ハムの夜」と題して吉祥寺で催されたイベントにも登場した「Bar cacoi」のオーナーバーテンダー大場健志さんが、新町さんの生ハムに出合ったのも中国茶と生ハムのペアリングの会でのことだった。
実際に「Bar cacoi」では新町さんのサラミや生ハムが酒呑みたちに大好評。
店ではウイキョウ入りのサラミにはジントニックを、定番の生ハムには熟成の進んだブレンデッドウイスキーをたらした中国茶などを薦めているそうだ。

店主の新町さん(左)と、バーテンダーの大場さん(右)。

「新町さんによる絶妙なチョイスとカットは、よそではけっして味わえない」とここの生ハムに惚れ込み、以来、月に1、2度は「サルメリア69」に足を運んでいる。
必ず購入するのは生ハムと定番のサラミ「フィノキオーナ」で、それぞれ状態のいいものを新町さんに選んでもらう。
「『フィノキオ』はまるでタルタルみたいにふわっと柔らかくて、これを『サラミ』といってお出しするとみんなびっくりします(笑)。
薄くスライスしても、厚めにカットしても抜群にお酒に合います」(大場)


バーながら、とっておきのハムにこだわるのは「それぞれのお酒の味わいの可能性を広げるペアリングを知ってもらいたい」という気持から。


「新町さんは生ハムの原木(スライスされる前のブタの足まるごと)の、いちばんおいしい部分しか使わないうえ、スライスの技術もスゴい。
スライサーって実は均一に切るのが難しいんですよね。
それをあの薄さで均一に、かつ、肉質を見極めて、その味わいが最もうまく引き出せる厚みにカットしてくれる。
どんなお客さまにも自信を持っておススメできるし、ペアリングの世界を広げてくれること請け合いです」(大場)

注文が入るたび、生ハムの原木をスライサーでカット。肉質を見極め、ちょうどいい厚みに仕上げる。

ここで、大場さんが差し入れたイタリアのクラフトビールと生ハムのペアリングを実演してもらう。


90年代半ばに設立されたブルワリー、ビリフィーチョ・イタリアーノの「AMBER SHOCK」は中国茶のスパイスを加えたアンバーエール。
「ちょっとみりんを思わせる風味のビールなので」と新町さんが合わせたのは、「プロシュット・ディ・サンダニエーレ 熟成20カ月」(100g ¥1,800)。
「あまり発泡を強くせず、冷たくしすぎないほうが、ハムの甘い脂みを活かしてくれる」と2人。


「とはいえ、日本人はやっぱりキンキンに冷えたビールが好き。
なので、うちで出す時は先に冷えたビールを出して、口の中にビールの余韻を残しつつ、ビールの温度が落ち着いて来たころにハムを出す。
口で説明すればわかってもらえるけれど、それよりもまず味わってほしいから、サーブするタイミングをずらすなど自分なりに工夫していますね」(大場)


お次はビリフィーチョ・グラド・プラトの「SVEVA」。
「いわゆるピルスナーなんですが、コクがあって泡立ちも上品。
生ハムと合わせやすいビールだと思います」(大場)
「これには味わいやスモーキーな薫香がしっかり感じられる、カモの薫製が合うんじゃないかな」(新町)
「カモの強めの味わいはモルトのスタンダード品をちびちびなめる、なんて時にもぴったり」(大場)

大場さんが持参したイタリアのクラフトビールと、新町さんがセレクトした生ハム&サラミの競演。

最後は「STRADA S.FELLICE」。
キリエの栗をフレーバーに用いており、独特な香りと味わいが特徴のピスルナーだが、「木の実を食べて育ったブタのプロシュットと栗のフレーバーのビールの相性は抜群」と新町さん。


「ペアリングというと中国茶にシェリー、白ワイン……。
そもそもの生ハム、サラミ自体の食感や香りがそれぞれ異なるので、そこまで相性を意識せずとも、どんなお酒でも合うみたいですね」(大場)


「本来は一般のお客さん相手の店なので、組み合わせを細かく考えたことってなかったんだけど、やっぱり『何と合わせるのがいちばんおいしいですか?』ってよく聞かれますね。
だからこちらとしては逆に、今日は何を飲む予定なのか、どんな気分なのかを聞いてそれに合わせておススメすることが多いかな。
それにしても、ビールが飲めてカクテルが味わえ、さらに中国茶も楽しめる大場さんのバーは、『ハム環境』としては申し分ないロケーションだよね」(新町)


と、まだまだ続く2人のペアリング談義。
後編ではさらにユニークなハムと酒の組み合わせが登場!
また大場さんが新町さんのハム、サラミを実際に店でサーブするさまをレポートする。


後編に続く。

SHOP INFORMATION

サルメリア69
182-0004
東京都調布市入間町3-9-11
サミール成城
TEL:03-6411-9496
URL:http://www.salumeria-69.com

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