日本人女性として初の戴冠!
世界一へのバー・ストーリー。
<前編>

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日本人女性として初の戴冠!
世界一へのバー・ストーリー。
<前編>

#Pick up

高橋直美さん by「PALACE HOTEL TOKYO「LOUNGE BAR PRIVÉ」」

この夏開催された「I.B.A.ワールドカクテルチャンピオンシップ」において世界一に輝いた高橋直美さん。日本人女性として初の快挙を成し遂げた彼女に「これまで」と「これから」についてインタビュー!

文:Drink Planet編集部

東京・丸の内。大きく取られた窓からは皇居前の鮮やかな緑と、その奥にオフィス街の高層ビル群が見渡せる。

夜には高層ビル群がイルミネーションとなって光り輝き、東京随一の夜景を望むスペシャルシートとなる。

高橋直美さんは現在、パレスホテル東京6階にある「ラウンジバー プリヴェ」でバーテンダーとして働いている。

世界大会でのワンシーン。©一般社団法人 日本バーテンダー協会

2013年8月20日、高橋さんはチェコ・プラハで開催された「I.B.A.ワールドカクテルチャンピオンシップ」のビフォア・ディナー・カクテル部門において、見事世界一の栄冠を手にした。

同大会での優勝は、日本人としては6人目、日本人女性としては初の快挙だ。

受賞作品の「ウィステリア」はラムとマスカットリキュールをベースにしたステアカクテル。

マスカットの優雅でさわやかな香りも然ることながら、高橋さんのゆったりとしつつも凛とした所作や、アルコール度数の割にやわらかな口当たりに、女性バーテンダーならではのセンスとホスピタリティを感じさせる。

さらにグラスの縁にあしらわれたフルーツのガーニッシュを見れば、その技術の高さにも驚かされることだろう。

今でこそ珍しくなくなった女性バーテンダーという存在だが、高橋さんが駆け出しの頃には、ゲストの方々にかなり珍しがられたという。

はたして高橋さんは、どのような道のりを経て、日本人女性初となる世界一のバーテンダーとなったのだろうか?

世界大会優勝カクテル「ウィステリア」。

高橋さんは高知生まれの高知育ち。

高校卒業後は進学のために上京し、そのまま東京で就職した。

たまたま勤務先が銀座だったことが、高橋さんのその後の人生に大きな変化をもたらすことになる。

高橋さんはこんな風に話してくれた。

「当時勤めていた会社の上司や取引先の方などに、銀座のバーに連れていっていただく機会がありました。そこでいわゆる“バーの世界”に触れ、漠然とした憧れを抱くようになりました。その頃はまさか自分がバーテンダーになるとは考えてもいませんでしたが、ときどきは自分一人でもバーに通うようになるくらい、バーの魅力に惹かれていきました」

その後高知に戻った高橋さんは、縁あって、ホテルのバーでアルバイトをはじめることになる。

ここでバーテンダーという仕事の魅力にとりつかれた。

「修業時代はもちろんツラいことや大変なことも多かったのですが、バーテンダーとしての仕事をひとつずつ習得していくことのほうが楽しくて仕方ありませんでした」

仕事熱心な高橋さんには、当然のように正社員になる誘いが何度もあったが、高橋さんはそのたびに断りつづけた。

「ありがたいお誘いではあったのですが、正社員になると異動などによりバーで働けなくなる可能性がありました。この頃にはもうプロのバーテンダーになることを決意していたので、アルバイトという立場でもいいから、バーから離れたくなかったのです」

その甲斐あってアルバイトを3年ほどつづけた後、晴れて専属バーテンダーとしてホテルに迎え入れられることとなった。

高橋さんのフルーツカッティング見たさに、大勢のギャラリーが集まった。©一般社団法人 日本バーテンダー協会

この頃から日々の仕事と並行して、コンペティションにも積極的に参加するようになる。

目標としたのは、NBA主催「全国バーテンダー技能競技大会」の優勝。つまりは日本一である。

「目標が決まるとのめり込むほうなので、とにかく毎日練習ばかりしていましたね」と高橋さん。

仕事を終えた後もカウンターにひとり残って、朝まで、時には昼まで、バーテンディングの技術を磨き続けた。

とはいえ、ひとりで練習をするには限界がある。時には四国内の先輩バーテンダーを訪ね歩き、大会に勝つノウハウや最新の情報を求めることも怠らなかった。

休みが取れた日には大阪や東京のバーにも足を運んだ。

「四国にも素晴らしいバーはたくさんありますが、やはり情報量が圧倒的に少なかったのも事実です。メーカーや代理店の方々もなかなか四国までは足を運べないらしく、新商品の噂を聞きつけては自ら取り寄せていたくらいでした」

また大会に出るたびに人を紹介してもらい、あるいは有名バーテンダーに自ら声をかけ、高知に戻ると手紙をしたためて全国津々浦々に人脈をつくっていった。

「地方という不便な環境のおかげで、逆に貪欲になれたのかもしれませんね」

2012年開催の「第39回全国バーテンダー技能競技大会」の様子。©一般社団法人 日本バーテンダー協会

不断の努力が実り、高橋さんはメーカー主催の大会などで優勝や入賞を重ねるようになった。

2011年の「第38回全国バーテンダー技能競技大会」では総合2位。創作カクテル部門では第1位を獲得した。

そして翌2012年の第39回大会では各部門を総なめにし、見事優勝。目標通り、日本一のバーテンダーとなった。

さらには、日本代表として2013年に開催される世界大会への出場権を得た。

高橋さんに「世界一」という新しい目標ができた。

と同時に、新しい転機も訪れることになる……。


後編へつづく。


SHOP INFORMATION

PALACE HOTEL TOKYO「LOUNGE BAR PRIVÉ」
100-0005
東京都千代田区丸の内1-1-1 パレスホテル東京 6F
TEL:03-3211-5211(代表)
URL:http://www.palacehoteltokyo.com

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