日本の食を鮮やかに変える、
話題の「Kabi」の絶品ペアリング!
<前編>

PICK UPピックアップ

日本の食を鮮やかに変える、
話題の「Kabi」の絶品ペアリング!
<前編>

#Pick up

江本賢太郎さん(ソムリエ) by「Kabi」

酒の世界でも発酵がトレンドとなり、和食文化に注目が集まっている。そんななか、気鋭のシェフ&ソムリエが手がけるレストランが昨秋、オープン。今月はバーテンダーとは別視点のペアリングをフィーチャー!

文:Ryoko Kuraishi

 左がソムリエの江本さん、右がシェフの安田さん。Photos by Kenichi Katsukawa

2017年11月、目黒通りの元競馬場前にオープンしたレストラン、「Kabi」。
日本の昔ながらの食材や手法を全く新しく解釈した料理の数々と、それらを引き立て、かつ単体のドリンクとしても存在感を発揮するドリンクのペアリングで一躍、注目を集めている。
手がけるのは、ともに海外で修業を積んだ20代の若手クリエイター、シェフの安田翔平さんとソムリエの江本賢太郎さんだ。


安田さんはコペンハーゲンの一つ星レストランでシェフを経験、江本さんはメルボルンのトップレストランでシェフソムリエを務めた。
帰国後、偶然出会った二人は意気投合、タッグを組んで食のポップアップイベントを行っていた。
一年後、満を持してお披露目となったのが、この「Kabi」である。


「『発酵』という言葉だけが一人歩きしているような気がしますが、『Kabi』のコンセプトは日本の食文化を世界に発信すること。
発酵というのは、あくまでも日本の食文化のエッセンスの一つです。
発酵も含め、出汁や旨みといった、伝統的に日本の食卓にあるものを、全く新しい形で提案していきたい。


日本の人、海外の人、いろいろな方が足を運んでくれますが、お客さんに合わせるのではなく、僕たちが思う“日本の食”を、自分たちらしいスタイルで見せていきたいですね」(安田)

店内の造りも、カウンターを中心としたカジュアルな佇まいに。

一方の江本さんは、安田さんが手がける日本の食と、この国に息づく酒文化を融合させたいという。


「日本には世界中から上質なヴァン・ナチュールが集まっていて、それでいて日本酒という伝統文化もきちんと根付いています。
飲み屋に行けば『とりあえずビール』という庶民的な飲酒習慣があり、加えてカクテルメイキングの技術は世界トップレベル。


だから日本料理のペアリングにおいても、ビールから始まり、日本酒、ワイン、カクテル、和洋取り混ぜて様々な提案を行うことができます。
種類における縛りがないことって、ほかのどこの国でも実現できない、日本にしかないペアリングのアプローチだと思うのです」(江本)


現在、Kabiでは12品のコース(¥9,000)に対して9種のドリンクを合わせるアルコールペアリング(¥6,000、ノンアルコールのペアリングもあり)を提供している。

ぬか床、もろみ味噌といった、日本らしい発酵食品が登場する。

当日、安田さんのメニューが決まると江本さんがペアリングのイメージを膨らます。
「その日何を使うのか、材料を聞けば彼が何を作るのかわかります。
その皿のイメージからペアリングの流れを考えます」(江本)


ペアリングのメニューにはビールあり、日本酒あり、カクテルあり。
熱燗など温度を変えたものを差し込み、メリハリをつけている。


ドリンクに関しては自然派ワインと真摯な造り手の酒を積極的に扱う。
それがソムリエである江本さんの信念だ。


「ヴァン・ナチュールを苦手とおっしゃる人もいますが、他でも飲めるものではなく、どうせならここでしか飲めないもの、味わえないことを突き詰めていきたいですね。
その方がコンセプトが明確になると思うから。
日本酒も同様で、トレンドを追いかけるよりも、うちのコンセプトに即したものを皆さんに提案したいと思います」

それでは早速、この日のペアリングメニューを見ていこう。

アジの筋目とワサビ菜に、群馬泉の熱燗のペアリング。

こちらは3品の突き出しの次にサーブされる、アジの筋目とワサビ菜。
アジの酢漬けをワサビ菜に包み、ケールのパウダーを上からあしらう。
中にお米が入っているが、一見するとそうはわからない。


合わせるのは「群馬泉」の熱燗だ。
「いまはフレッシュで軽い飲み口の日本酒が流行っているようですが、僕がピンときたのはこれ。
伝統的な山廃で仕込んだ群馬泉は濃厚で骨太の味わいが強い印象を与えてくれます」(江本)


濃厚で、まるでナッツのような芳醇な山廃仕込みの純米酒が、ケールの青っぽい香りとしっかりと炙ったアジの脂を引き立てる。

訪れる人の好奇心をそそるプレゼンテーションも「Kabi」の醍醐味の一つ。

「僕にとってのペアリングは流れが重要です。
この前の3品には冷たいランビックビールを合わせるので、温度差をつけるという意味でも熱燗がいいかなと思いました。


うちでは料理よりも先にドリンクがサーブされるのですが、まずはお燗を口に含んでもらい、『次に何が来るのだろう』と想像力を巡らせてもらう。
そこに緑色の一皿がくる、という流れです。
『なにこれ』と思って口に入れてみたら実は寿司だった……そういう料理の意外性と合わせて、ペアリングを楽しんでもらいたいですね」(江本)


後編ではさらに深まる料理とお酒のペアリングの妙を、「Kabi」からお伝えしよう。


後編に続く。

SHOP INFORMATION

Kabi
東京都目黒区目黒4-10-8
TEL:03-6451-2413
URL:http://kabi.tokyo

SPECIAL FEATURE特別取材