目指せ、海外出店!
新時代のバーテンダーが挑む道。
<前編>

PICK UPピックアップ

目指せ、海外出店!
新時代のバーテンダーが挑む道。
<前編>

#Pick up

清崎雄二郎さん by「Bar LIBRE DaNang」

いま、バーテンダーたちが続々と海外進出を進めている。今月はベトナムのリゾート地、ダナンに進出した「Bar LIBRE」の清崎雄二郎さんにインタビュー。海外出店という選択肢について伺ってみよう。

文:Ryoko Kuraishi

ベトナム中部にある海沿いの街、ダナン。ビーチ沿いにはリゾートホテルが立ち並ぶ。

ハノイ、ホーチミンに次いで注目を集める、ベトナム随一のリゾート地、ダナン。
オンシーズンには日本・ダナンを結ぶ直行便が毎日運航しており、エメラルドグリーンの海が広がるビーチ沿いには大型リゾートホテルの建設が相次いでいる。


注目のリゾートシティ、ダナンに登場した初のオーセンティックバーが、「Bar LIBRE DaNang」である。
オーナーは池袋で「Bar LIBRE」を構える清崎雄二郎さん。
「Bar LIBRE」はミクソロジーの手法を取り入れたオリジナルカクテルに定評があるが、ダナンの店舗でもスタンダードカクテルに加えて地元のフレッシュフルーツをふんだんに使ったカクテルを提案している。


「ベトナムではビールがメジャーで、カクテルはまだ少数派。
ミクソロジーやカクテルに興味を持ってくれるのは、ツーリストや他の土地でスタンダードカクテルを飲んだことがあるという限られた層です。
まずはここで、地元の人向けにカクテルの面白さ、美しさ、奥深さを紹介していきたいと思っています」(清崎さん)

ダナンの若手バーテンダーたちと清崎さん(右から二人目)。

清崎さんは「バカルディ マルティニ」や「ヘネシーミクソロジー コンペティション」といったカクテルコンペティションの日本代表として選出され、世界を舞台に切磋琢磨してきた。
ダナンに店を出そうと思ったきっかけもやはり、コンペティションだった。


「コンペで海外のバーテンダーたちと一緒になり、そうしたつながりから世界各地でゲストバーテンダーに呼ばれるようになりました。
違う国のバーカルチャーが魅力的だったし、それに触れることが何よりも楽しかった。
そうするうちに海外のバー・シーンに目を向けるようになって、いつか日本以外の場所で勝負してみたいと思うようになったのです」


そうして足を運ぶようになった街の一つが、ダナンだった。
感激したのが、現地の若いバーテンダーたちがクラシックからミクソロジーまで、日本のバーテンディングやカクテルにとても興味を持ってくれていたこと。
実際、清崎さんがゲストに呼ばれてカウンターに立つたび、大勢が遊びに来てくれたという。
みんな真面目で勉強熱心、日本のバーテンダーから精一杯を学ぼうという真摯な姿勢に彼らのポテンシャルを感じたとか。

人気のミクソロジーカクテル「Morning Old Fashioned」150,000ドン(約717円)。

現在、ダナンのバーは店内にDJブースを設けているようなクラブスタイルの店が多い。
大勢で賑やかに飲むスタイルが主流のダナンのバー・シーンに、清崎さんはあえてオーセンティックで勝負を挑むことにした。


「ダナンで初めてのオーセンティックバーだからこそ、やりがいを感じたのだと思います。
そもそもこういう場がありませんでしたから、オーセンティックバーでの楽しみ方を知らないんですね。


だからこそ、静かにお酒と向き合える場所、そういう場所をここで作ってみたと思いました。
カクテルのクオリティをあげるとともに、バーでの過ごし方や楽しみ方を紹介していくことに大きな意義を感じたんです」


オープンするにあたり、最も神経をすり減らしたのがハード作りだった。
「とにかく工事に時間がかかりました。国民性もあるのでしょうが、何事ものんびりしていて完成時期が全く見えない。


内装でいえば、例えば調光器の設置にして日本からわざわざパーツを持っていって業者に見せ、そこから手配を頼まなくてはいけませんでした。
何をするにしろひと手間もふた手間もかかるんです」

「施工業者とのやりとりがとにかく大変だった」という内装の作り込み。黒を基調にしたシックな店が完成した。

「店内の造りは写真映えするように、店内に滝を設けて水の流れを取り入れたり、カウンターに地元の名産である大理石を使ったり、ダナンらしさを表現しました。


ツーリストのお客さまも多いので、ベトナムならではのフレッシュなフルーツや大理石を糸口に、ダナンの良さをアピールできればと思っています」


ソフト面でいえば、氷やお酒の手配に苦労した。
日本のようになんでも手に入るわけではないので、お酒ならインフュージョンするなど、手に入るもので工夫を凝らしている。


「ベトナムは電化製品がイマイチなので、氷の質が安定せず試行錯誤しましたね。
精肉業者に頼みこんで冷凍庫を使わせてもらったりしたのですが(笑)、結局は自分のところで温度管理をしながら作っています。
それでもダイヤモンドカットや丸氷でお出しするだけでも喜んでもらえるので、苦労する甲斐はあるのですが」

パッションフルーツ、マンゴー、ドラゴンフルーツなど、南国らしいトロピカルフルーツをふんだんに使い、目にも鮮やかなカクテルを提案する。

そして何よりも重要になるのが、スタッフの教育だ。


「彼らの考えるサービスと日本のバーのサービスには、大きな開きがあった」と清崎さん。
オーセンティックバーで望まれるサービスの根本を示さなくてはならなかった。


「彼らは根が真面目で手先が器用なので丸氷もすぐにできるようになりましたし、気配りという点でも素晴らしい成長が見られます。
月に一度くらいのペースで通っていますが、そういう進歩を間近にできるところが海外展開の面白さでしょうか」


実際、ビーチサイドにあるバーでは若いバーテンダーがミクソロジーを始めていたり、リゾートホテルのバーに勤めている子がコンペに挑戦するようになったり。
ダナンのバーテンダーたちに「カクテルで勝負していこう」という気概を感じるという。


後編では海外出店における実践的なアドバイスをご紹介しよう。


後編につづく。

SHOP INFORMATION

Bar LIBRE DaNang
25 Quang Trung, Da Nang
TEL:0120 325 7732
URL:https://www.facebook.com/barlibredanang/

SPECIAL FEATURE特別取材