日本のクラフトジンの夜明け
「季の美 京都ドライジン」!
<前編>

PICK UPピックアップ

日本のクラフトジンの夜明け
「季の美 京都ドライジン」!
<前編>

#Pick up

アレックス・デービスさん&元木陽一さん by「京都蒸溜所」

2016年10月14日、ついに日本初のジン専門蒸溜所が手がけたクラフトジン「季の美 京都ドライジン」がリリースされた。そこで、造り手であるアレックス・デービスさんと元木陽一さんを直撃!

文:Drink Planet編集部

冒頭写真/左がアレックス・デービスさん、右が元木陽一さん。上/京都蒸溜所外観。

京都市南区吉祥院。

JR京都駅から南へ車で15~20分ほどいった周辺は、いわゆる京都らしい雰囲気とは違って、倉庫や町工場、一般の住宅などが広がるエリアだ。

「季の美 京都ドライジン」を生む京都蒸溜所はそんなエリアの一角にある。

壁に掲げられたロゴマークがなければ、ここが蒸溜所だとは誰もわからないだろう。

(まるでスピークイージー!)

「京都に引っ越し、京都に骨を埋める覚悟」と話してくれたディスティラーの元木陽一さん。

「実際に、もともとは倉庫だったんですよ(笑)」

そう説明してくれたのは、同蒸溜所のディスティラー、元木陽一さん。

ヘッドディスティラーである英国人のアレックス・デービスさんと二人で、この蒸溜所のほとんどすべてを取り仕切っている人物だ。

Drink Planetの読者はご存じの方が多いかもしれないが、元木さんは銀座のバーテンダー出身。

スコットランドのアラン蒸溜所で2年間ウイスキーの製造に携わり、その後、酒類インポーターの株式会社ウィスク・イーでイベントディレクターとしてクラフトスピリッツやクラフトビールの普及に尽力してきた。

「長年、洋酒業界に携ってきたなかで、もう一度製造をやりたい、という想いが自分のなかにありました。しかもウイスキーではなく、盛り上がりを見せはじめたクラフトジンをやってみたい。ちょうどそんなことを考えているタイミングで京都蒸溜所の話が持ち上がったんです」

こうして元木さんは、2015年12月に晴れて、京都蒸溜所のディスティラーに就任した。

ラボルームで作業中のヘッドディスティラーのアレックス・デービスさん。

一方、ヘッドディスティラーのデービスさんは、英国生まれの英国育ち。

名門ノッティンガム大学で生化学を、エディンバラのヘリオット・ワット大学で醸造・蒸溜学を修めた後、チェイス蒸溜所でディスティラーを務めた。

その後、ヘッドディスティラーとして、2014年に開業したばかりのコッツウォルズ蒸溜所に移ると、新鋭クラフトジンの代表格ともいえる「コッツウォルズ ジン」を生み出した。

(ちなみに「コッツウォルズ ジン」は、World Gin AwardでBest London Dry Ginを、San Francisco World Spirits CompetitionではGold Medalを受賞!)

ウィスク・イーが「コッツウォルズ ジン」の日本でのインポーターを務めていた縁から、今回、京都蒸溜所のヘッドディスティラーとして招聘された。

そう、デービスさんは20代後半にもかかわらず、蒸溜業界で注目を集める気鋭のディスティラーなのだ。

「新しい挑戦はいつもワクワクしますね。京都という街もすっかり気に入っています。歴史があって、ミステリーがあって、自然もたっぷりあって、おいしいバーやレストランも豊富。おいしい店が多過ぎて、私の人生史上、京都に来てからが一番食べているくらいです(笑)」とデービスさん。

若きディスティラーはここ京都で、忙しくも充実した時を過ごしているようだ。

唐紙の文様をスクリーンプリントし、日本の四季を表現した「季の美」のボトル。

さて、日本でクラフトジンの蒸溜所を起ち上げるにあたり、なぜ京都という場所を選んだのだろうか?

この疑問には、ウィスク・イーのCEOであり、京都蒸溜所の代表でもあるデービッド・クロールさんが答えてくれた。

理由は大きく3つあるという。

「ひとつは個人的な理由です。私のワガママといってもいいかもしれません(笑)。それは私が京都を好きだからです。1985年に初めて京都を訪れて以来、京都という街にずっと魅了されてきました。ですから、新しくジンの蒸溜所を起ち上げるなら、単純に京都でやってみたかったのです」

「2つ目は文化的な理由です。京都はアルティザン(職人)の街であり、クラフトマンシップへの理解がある街です。我々が手がける少量生産のクラフトジンには、京都のような街がふさわしいと考えました」

「3つ目は実用性、ビジネス的な理由です。『季の美』の原料となる柚子や玉露といったボタニカル、あるいは伏見の水、さらにはボトルパッケージングに使用した唐紙など、京都には我々のジンに欠かせないファクターが多く存在していました」

かくして選ばれた場所が、前述した南区吉祥院なのだが、本当はもっと京都の街なかに蒸溜所を建てたかったそうだ。

しかしながら京都は木造建築の多い世界遺産の街。

いくら少量生産といえども、さすがに危険物を取り扱う蒸溜所の認可は降りなかったという。

左が代表のデービッド・クロールさん、右が品質設計担当の大西正巳さん。

現在、京都蒸溜所において「季の美」の製造を手がけるのは、アレックス・デービスさんと元木陽一さんの二人きり。

たった二人で年間9万本の製造を目論んでいる(2016年は3万本を予定)。

開発に当たっては、日本を代表する蒸溜所でマネージャーなどを務めた洋酒研究家の大西正巳さんが品質の設計開発から参画した。

もちろん、デービッド・クロールCEOや各分野の専門家からの意見も積極的に取り入れたという。

ヘッドディスティラーのデービスさんは、「季の美」のスタイルについてこう話してくれた。

「我々が目指したのは、京都の香りと味わいを体現するジンです!」

後編では、実際にどんなつくり方をしているのかに迫っていこう。

後編につづく。



SHOP INFORMATION

京都蒸溜所
 
URL:https://kyotodistillery.jp/

SPECIAL FEATURE特別取材